孫正義氏が買収しそこねたT-mobileが凄い理由

note、3本目です。今日はアメリカの携帯電話業界を見てみましょう。

ソフトバンクがSprintを買収した後、T-mobileを買収してSprintと統合しようとしていた、というのはニュースでご覧になった方も多いかと思います。この背景にあるのは...

これです。アメリカの携帯キャリアは大きいものが4つありますが、Verizon(赤)とAT&T(青)が2強で、T-mobile(緑)とSprint(グレー)が2強の半分くらいずつしかシェアがありません。孫さんはこの2つをくっつけて「3強」状態にしかったのですね。(残念ながらその夢は、今の時点では叶いませんが。)

さて、このグラフを見て分かるように、T-mobile(緑)は万年最下位状態でしたが、ここ最近、急激にシェアを伸ばして、Sprintを抜いて3位になりました。


最近の各キャリアの純増数

このグラフは、所謂「純増契約者数」です。これを見ると、T-mobile(緑)はシェア1位のVerizonを抜きかねない勢いです。


T-mobile成長の理由

T-mobile成長の理由は、この人を抜きにして語れません。

この人はT-mobileのCEO John J. Legereです。見た目通り(と言っては失礼ですが)狂っています。

このCEOが次々と発表してきた、Un-Carrierという施策が大ヒットしています。「Un-Carrier」というのは「(古臭い)携帯電話会社らしからぬことをしよう」というようなニュアンスで、これまでの携帯電話のタブーを次々とくつがしていく施策です。


10個のUn-Carrier施策を一挙全公開

T-mobileは、Un-Carrierという名のもとに、複数の施策を次々と発表してきました。よく見ていただければ分かるように、どれも「ユーザー視点」で便利になるなぁというものばかりです。

携帯電話産業は、無線免許が必要な規制産業で、ふとするとどこかの国みたいに、料金もサービスもユーザーが蔑ろにされがちですが、これらの施策はどれもユーザー視点で、本当に凄いなぁと感心します。

では一つずつ見てきましょう。

Un-Carrier 1.0: 最初のUn-Carrierは、携帯電話契約の2年縛りを止める、というアナウンスでした。電話本体はリースされ、2年以内に解約する場合は、ユーザーが、1) 電話を返却する, 2) リース期間の残額を払って買い取る、という選択が出来ます。

Un-Carrier 2.0: 次のUn-Carrierは、JUMPプログラムでした。これは、ユーザーが毎月少しだけ余分に払うと、2年以内であってもに新機種に機種交換できる、という内容です。

Un-Carrier 3.0: 3.0では、海外でも追加料金なしに、音声通話・SMS・データが使える、という内容。

Un-Carrier 4.0: このあたりから更に過激になってきます。4.0では、他のキャリアからの乗り換え機種変更(MNP)の場合、古いキャリアで発生する途中解約違約金(Early Termination Fees)をT-mobileが全額負担します、という内容です。

Un-Carrier 5.0: Voice over LTE(VoLTE)が提供されました。アメリカの携帯の音声通話は本当に音が悪いので、VoLTEで音質がかなり良くなります。

Un-Carrier 6.0: 主要な音楽ストリーミングサービスの分はデータ利用量としてカウントしない、という内容です。アメリカでは、運転中にスマホで音楽ストリーミングを流す人が多く、これがデータ利用量を圧迫しがちでしたが、T-mobileユーザーは、データ利用量を気にせずに、音楽をストリーミングで聞けるようになりました。

Un-Carrier 7.0: Wifi Calling(Wifiの電波を使って電話ができる)を提供。これでビルの中で電波が悪い状態でもWifiさえ繋がっていれば、電話ができるようになりました。VoLTEと同様、音質が良くなるという効果もあります。

Un-Carrier 8.0: 未使用分のデータ通信量を翌月に自動的に振り替える、ということが可能に。

Un-Carrier 9.0: 法人向けに、「通話・SMSは無制限、データは1回線あたり1GB/月」という非常にシンプルなプランを発表。

Un-Carrier X: 極めつけがこれです。(3GB以上のデータプランを契約しているユーザーは、Netflix等の主要サービスからの)ビデオストリーミングもデータ使用量にカウントしない、と発表。しかも、ビデオのクオリティはDVDクオリティ(480p以上)。さらに、ほとんどのプランで、料金据え置きでデータ通信量を2倍にする、という発表もなされました。

いかがでしたでしょうか。どれもユーザー目線での施策で、T-mobileがシェアを増やしているのが良くわかると思います。日本のキャリアの方にも参考にして欲しいくらいです。

これらの施策でどのくらいT-mobileのシェアが増えたのか、というと..

それまでの下降線が一気に上に向き始めました。スマホ大国アメリカにおいて、2.5年で契約者数を1.5倍にしている、というのは本当に凄いことです。

日本のキャリアだけでなく、日本で本気でMVNOで勝ちたいと思っている会社さんはこれに似た施策をすれば、シェア増えると思いますよ。本当に...


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コメント3件

これらの施策が財務的に見ても合理的なのか、ユーザーを増やすための手段でしかないのか(ユーザー数があるラインを超えるまでは赤字になる施策なのか)に興味があります!
Un-Carrier 7.0: Wifi Calling(Wifiの電波を使って電波ができる)を提供。
-> 電波ではなく電話ですねw
ご存じの上で敢えて書かれていないのかわかりませんが、T-mobileがこれらの施策を「行わねばならなかった理由」として「絶望的に厳しいカバレッジ事情」があります。

郊外ではほぼ「使えない」との声が多いほどに。

Sprintでさえそこをツッコまれるのでクリアワイヤの2.5GHz帯の基地局増強をハイスピードで実施しているのですが、T-mobileは自社網を急ピッチで整備している報を耳にしません。
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