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コロナ禍のAmazonの決算で最も成長率が高かったのは、あの意外なセグメント!?

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私のYouTubeチャンネルでは、決算読み解き実況中継をしています。おかげさまでYouTubeの方も多くの方にご覧いただいているのですが、特に忙しいビジネスパーソンの方たちから「YouTube動画の内容を知りたいが、動画を見る時間が無い」というお声を多数いただいています。

この記事では、上の動画の内容をスクリーンショット付きで文字起こししてあります。動画を見る時間はないけれど、内容を短時間でおさらいしたいという方に最適です。


Amazonの重要指標FCFから見る今回の決算の印象は?

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ーー(Risa)皆さんこんにちは、Risaです。言わずと知れたAmazonの創設者ジェフベソス氏退任のニュースが話題になりましたが、今回はそんなAmazonの2020年第4四半期決算を見ていこうと思います。

ーー以前、このチャンネルでも2019年第4四半期分を取り上げているので、その時のシバタさんの予想の答え合わせもしながら見ていこうと思います。シバタさんよろしくお願いいたします。

(シバタナオキ)よろしくお願いします。答え合わせは怖いですが、頑張ります。

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ーー10月-12月期(Q4)の売上高は、前年同期比+44%の約$125.6B(約12兆5,600億円)となり、Amazonより一足先に発表していたAppleの同期決算の$111.4B(約11兆1,400億円)をさらに上回る大幅な増収となりました。

ーー決算を見るときに、どうしても売上高や営業利益率をまず見てしまうのですが、Amazonの重要指標はFCF(フリーキャッシュフロー)だと思うので、FCFから見る今回の印象を教えてください。

四半期単位で売上が前年同期比+44%、為替の影響を除いても+42%ということで、コロナで追い風があったとは思いますが、この規模でこれだけ伸びているのはすごいなというのが一番の印象です。

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Amazonはいつも決算資料の一番最初にFCFを載せています。TTMというのが、Trailing Twelve Monthの略称で、過去1年間のFCFを指します。TTMが$31B(約3兆1,000億円)ということで、前年同期比+20%増えています。

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次のスライドを見てみると、FCFからFinance LeasesやFinancing Obligationsを除いたものが出ています。約$20B(約2兆円)ということで、過去12カ月間で2兆円のFCFが創出されています。前年同期比+26%です。

売上が+44%伸びているのに、FCFは+26%ということで、その分投資をしているのだと思います。スライドの下部にも大きく書いてありますが、この会社の場合、Long-Term Goalは利益を出すことではなく、とにかくFCFを最適化することだと明言しています。

過去10年くらいずっと、FCFのスライドが一番最初に出てくるということで、揺るぎない目標です。FCFが2兆円もあり、しかも+26%も伸びているということなので、本当に怪物という感じがします。

Amazonに関しては、やはりFCFをしっかり見ていくことが大事だと思います。


Amazonはどうやって効率良くキャッシュを生み出している?

ーーAmazonはAWSやKindleのように、EC以外にも様々なサービスを提供することによって、いわゆる営業利益率の向上を図っていると思います。一方、未だにAppleなどの他のテック系企業と比べると、営業利益率が少し低めのような印象です。

ーーECというオペレーションに費用がかかるビジネスを主体としていく中で、Amazonはどうやって効率良くキャッシュを生み出しているのでしょうか。

まずAmazonは利益を最大化しようとは全くしておらず、キャッシュフローを最大化しようとしています。キャッシュフローを最大化する場合、やり方はいくつかあります。

1つは、利益率の高いビジネスをすることです。例えばAWSや広告などは、利益が高いビジネスをやってキャッシュフローを最大化しようとしています。

ただ、ECのビジネスに関しては全く逆の考え方でやっています。Cash Conversion Cycleの図を見てみましょう。

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これは2016年のデータで古いのですが、当時AmazonのNet Income(純利益)は1%しかありませんでした。利益を出してキャッシュフローを最大化しようとしているのではなく、むしろ他のECやリテールよりも安く物を売ろうとしているため、当然利益率は下がります。

どうやってAmazonがECでキャッシュフローを最大化しようとしているかというのが、右の図です。まずAmazonが在庫を持ち、Amazonの倉庫に物が保管される平均の日数が35.27日です。物が倉庫に入ってから出ていくまで35日くらいかかります。

その後、お客さんから代金を回収するのに19.87日かかります。合計で大体55日かかることになります。

一方で、Amazonが、自分たちの仕入れているベンダーにお金を払うのは、在庫を持ってから82.6日後です。足し引きすると分かりますが、入金があってから27日後にお金を払っています。

普通、リテールは逆で、物を仕入れたらお金を払わなくてはいけません。在庫を長い期間持っているようなリテールビジネスというのは、普通はキャッシュフローの日数がマイナスになるんです。つまりお金を先にベンダーに払って、売れたらお客さんから回収するというモデルです。

そうすると、キャッシュアウトの方が先に起こるのですが、Amazonの場合はキャッシュインがキャッシュアウトより27日分前に起こっています。そのため、キャッシュフローがすごくプラスになるんです。

リテールなのに、キャッシュフローが物凄く良いビジネスになっています。これが、実はAmazonがECでキャッシュフローを大きく作り出しているポイントです。

彼らは利益などほとんど無くて良いと思っているはずです。利益を出さなくてもキャッシュフローが作れるというのが、このビジネスの仕組みです。

Appleも同じような仕組みで、今のCEOのティム・クックという人が昔作った仕組みなのですが、注文が来てから組み立てています。あるいは、注文が来てから発送するため、ほとんど在庫を持たない仕組みになっています。

在庫日数を計算すると、ほぼマイナスになっていると聞いたことがあります。それほど在庫を持たないようになっています。Apple Storeなどにもトラックが毎日来て、その日かその週に捌けるくらいのぎりぎりの在庫しか持っていないんです。

そういった形で、とにかくキャッシュサイクルを限りなく企業側に有利にするのに長けているのが、AmazonやAppleです。特にAmazonの場合は規模が規模なので、こういうことをしっかりとやっているという感じです。

覚えておいていただきたいのが、Amazonの場合は、入金があってから約1カ月後にベンダーに支払いをすればいいというキャッシュ構造になっていることです。これは小売としては異常なくらいです。

逆にベンダーの人達からすると納品した後に90日くらいお金を貰えないので大変ですが、日本でも昔からある手形のような仕組みに似ている感じですね。Amazonと取引すると、ベンダーの人が嫌がるのは、このキャッシュサイクルの話です。ここを一番交渉されるという話をよく聞きます。

ーー最初からうまくシステムを作って、キャッシュフローを最大化するという揺るがない目標に向かって進んでいるのですね。


Physical storesのマイナス8%は痛い数字なのか、頑張って持ちこたえた数字なのか?

ーーでは早速、2019年Q4を解説いただいた時のシバタさんの予想の答え合わせをしていこうと思います。

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ーー足元の事業を牽引しているのは、中核事業でもあるOnline storesですが、ここはシバタさんの予想通り順当な伸びを見せています。

ーーそして、一番打撃があったのが、こちらも予想通りでPhysical storesです。マイナス8%という数字になっているのですが、これが痛い数字なのか、コロナ禍にしては頑張って持ちこたえた数字なのか、どちらでしょうか。

ここは、元々そんなに伸びていたところではなくて、どちらかと言うとデリバリーやピックアップのようなサービスはOnline storesの方に計上されています。

ホールフーズ(食料雑貨チェーン店)に直接お客さんが来た場合はPhysical storesにカウントされますが、ホールフーズのオンラインデリバリーを使った場合はOnline storesにカウントされています。

そういう状況なので、コロナ禍でQ2がマイナス13%、Q3でマイナス10%、Q4がマイナス7%というのは、そんなに悪い感じではないでしょう。コロナ禍においてはかなり持ちこたえた印象です。


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・新しいプラットフォームに対抗する策は既にある?
・クラウドの伸びが期待できる中で、なぜ成長率が停滞している?
・Otherは広告が占める割合が多いと思うが、ここが予想以上に伸びた要因とは?
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