Q. Adobeによる200億ドルのFigma買収は見合うのか?
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ヒント:2021年のSalesforceによるSlackの買収時のARRマルチプルは約30倍でした。
この記事はゆべしさんとの共同制作です。
2022年9月15日、画像編集サービスのPhotoshopやIllustrator等のクリエイティブソフトウェアを提供するAdobe(アドビ)が、Web上で使用できるデザインツールを運営するFigma(フィグマ)を$20B(約2兆円)で買収する、というニュースが発表されました。
デザイン領域では、AdobeやFigmaは最も有名なデザインツールの1つといっても過言ではなく、買収金額が$20B(約2兆円)と非常に大型な買収であること等で、このニュースは大きな反響を呼びました。
本日は、Adobeによる$20B(約2兆円)でのFigmaの買収が、本当に見合っているのかについて、様々な角度から考察したいと思います。
この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。
AdobeがFigmaを$20Bで買収することを発表
まずは、AdobeによるFigmaの買収について整理しましょう。
ご存知の方も多いと思いますが、Adobeは1982年に米国で設立された企業で、1986年に米国NASDAQに上場しました。写真やイラストの制作・編集等ができるPhotoshopやIllustrator等のデザインツールを展開しています。
次に、Figmaは2012年に米国で設立された企業で、ワイヤーフレームの共同編集やアプリのUIデザイン、グラフィックデザインなどをWeb上で利用できるデザインツールFigmaを運営しています。
Adobeによる$20B(約2兆円)でのFigma買収は、2023年中を目処とされており、今後買収に向けて必要な手続きを進めていくと発表されています。
両社共にデザインという領域で事業展開しているため、買収による相乗効果(シナジー)が発揮されやすいと思いますが、果たして$20B(約2兆円)という非常に大きな金額は本当に妥当なのでしょうか?
現時点で買収の是非を判断するために、株式市場の見解やFigmaの財務数値から検証していきましょう。
発表後にAdobeの株価は直近12年間で最大の下落幅
上図は、AdobeによるFigma買収のニュース発表後のAdobeの株価の推移で、発表後の株価は大きく下落しており、直近12年間で最大の下落幅となっています。
そのため、「Adobeの株主は、この買収を悲観的に捉えている」ということが分かります。では、なぜ株主はこのニュースを悲観的に捉えたのでしょうか?
FigmaのARR、ARR成長率は?
次に、Figmaの財務数値について、公開されている範囲で整理してみましょう。
Adobe Q3 FY2022 Earnings Call Script (September 15, 2022)
Adobe Q3 FY2022 Earnings Call Scriptから主要箇所を抜粋すると、以下の通りです。
・2022年度にはARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)が$400M(約400億円)超えの見込み
・2022年に新規のARRが~$200M(約200億円)加算される見込み
・NRR(Net Revenue Retention:売上継続率)は150%超
・売上総利益率は~90%
参考:Adobe Q3 FY2022 Earnings Call Script (September 15, 2022)
このFigmaの財務数値がどれほど驚異的な水準なのか、主要SaaS企業と比較してみましょう。
上図は、主要SaaS企業とFigmaのNRR(Net Revenue Retention:既存顧客の売上継続率)の比較ですが、Figmaの150%という数値は非常に高いことが分かります。
NRRが150%というのは、既存顧客からの売上が1年間で1.5倍に成長していることを示しています。NRRには解約によって失われる売上も含まれているため、一般的に120%超でも十分に驚異的と言われる水準です。その中で、150%を記録しているのは、Figmaのプロダクト品質が高いことの証左と言えるでしょう。
ここまで、Adobeによる$20B(約2兆円)でのFigma買収の妥当性について、株式市場及びFigmaの財務数値から検証してきました。
記事の後半では、引き続き、Figmaの財務数値(ARRやARR成長率)を中心に、$20B(約2兆円)での買収が妥当なのかの検証を行います。
この記事は、SaaSビジネスに従事している方やM&Aに興味がある方、企業のKPI比較に関心がある方に最適な内容になっています。
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・Q. Adobeによる200億ドルのFigma買収は見合うのか?
・ARRマルチプルは妥当なのか?
・おまけ: AdobeのFigma買収による相乗効果
・まとめ
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