見出し画像

Q. APIで電話を操作できるCPaaS。米Twilioよりも中国Agoraの方が、顧客獲得費用の回収期間が4倍も短いのはなぜ?

新着記事を(無料で)LINEへお届けします。以下のリンクからご登録ください。
LINE: https://line.me/R/ti/p/%40pap3801g
注: 現在、Facebookメッセンジャーでのお届けができなくなっています。お手数ですがLINEへのご登録をお願いします。

A. AgoraのARPUが●倍も高くなっていることが、短い投資回収期間の要因。
CACはTwilioの方が●倍も低いが、AgoraのARPUがそれを凌駕するレベルで高いため、顧客獲得費用の回収期間はAgoraの方が4倍短くなります。具体的な数字は後半で紹介します。

この記事はYusuke Gotoさんとの共同制作です。Twitterでマーケティングや決算分析についての発信もされています。

今日は、6月末に米ナスダックに上場した、中国のCPaaSであるAgoraとアメリカのTwilioの決算書を比較していきたいと思います。

まず、AgoraとTwilioのビジネスの概要から整理していましょう。


CPaaSビジネスについて

まず初めに、両社のビジネスであるCPaaSについて簡単に説明していきます。

CPaaSとは「Communication Platform as a Service」の略で、「通話・記録・ライブ配信などの通信機能をAPIで接続するクラウドサービス」を意味しています。

例えばオンライン予約サイトでレストラン予約をした際に、予約システム側がAPIを使って予約確認メールを配信する。アプリのパスワードを忘れた際に初期化するときに、登録した電話番号に本人確認のコードが配信されるなど、通信機能をAPIで接続するなかでもそのようなものを指します。

企業間や顧客との間で、多様なチャネルを通じてコミュニケーションを取る必要性が増していることに加えて、コロナの影響でニーズが高まっている領域であると言えるでしょう。


CPaaSの市場規模推移予測

では、具体的に市場規模はどのように推移していくのでしょうか?

Form F-1 Agora, Inc

画像1

Agoraが提出したForm F-1(≒上場目論見書)によると、CPaaSの全世界における市場規模は、2018年の約3,300億円から2023年には約1.7兆円にまで成長すると予測されています。

引用元となる原文自体は、2019年10月に出ている資料になるため、コロナの影響でこれ以上に伸びが大きく、早くなっていく可能性もあるかもしれません。


両社の基本的な決算概要

次に、両社の基本的な決算状況をまとめていきます。

TWILIO ANNOUNCES FIRST QUARTER 2020 RESULTS

Twilio 2019 Annual Report and Proxy Statement

画像2

Agoraは、売上高が約35.6億円でYoY+166%、営業利益が約3.3億円で、黒字となっています。営業利益率は約9.2%で、後述するTwilioと比べても高くなっています。

Twilioは、売上高が約364.9億円と、Agoraの10倍程度の規模感となっています。規模が大きいこともあり、YoY+56.5%と高い数値となっているものの、Agoraと比較すると見劣りする状況です。営業利益はNon-GAAPベースで約6.1億円と、売上の規模感からすると少ない印象で、営業利益率は約1.7%と非常に低い状況です。

Agoraの営業利益率は、なぜTwilioの5倍となっているのでしょうか?それについては、次の項目でご説明します。


Agoraの営業利益率が、Twilioの5倍になっているのはなぜ?

両社の営業利益率の違いを理解するために、コスト構造の中でも売上原価に注目してみましょう。

画像3

Agoraの売上原価率が約32%なのに対して、Twilioは約46.9%となっています。後述するアクティブ顧客数が、TwilioはAgoraの10倍以上となっており、システムの維持費等にコストがかかっているのではないでしょうか。

営業利益率の差分である7.5%以上の差が開いていることから、大きな要因の一つであると言えそうです。

ここまで、AgoraとTwilioの決算概要をベースに、Agoraの売上の伸びの早さや、両社のコスト構造の違いの一部についてご説明してきました。

記事後半では、売上を構成する「顧客数」「顧客あたりの売上(ARPU)」や、売上と費用の関係である「CAC(顧客獲得コスト)」を明らかにした上で「Payback Period」を求め、定量的なファクトをベースに、Agoraのセールス・マーケティング活動の特徴について、説明していきます。

ぜひ、記事後半もご覧ください。

この記事は、CPaaSサービスのユニットエコノミクスに興味がある方、セールス・マーケティング業務に携わっている方、AgoraとTwilioの違いに興味がある方に最適な内容になっています。

----------------------------

ここから先は、有料コンテンツになります。このノート単品を500円、あるいは、月額1000円のマガジンをご購入ください。有料マガジンは、1ヶ月あたり4本程度の有料ノートが追加される予定です。

マガジンは初月無料です。月末までに解約すれば費用はかかりません。購読開始した月以降の有料記事が読めるため、月末に購読開始しても不利にはなりません。有料版をご購入いただくと、以下のコンテンツをご覧いただけます。

・両社のアクティブ顧客数はどの程度伸びている?
・AgoraのARPUは、Twilioの●倍?
・AgoraのARPUが、Twilioの●倍となっているのはなぜ?
・AgoraのCAC(顧客獲得費用)は、Twilioの●倍?
・Payback Periodの比較から見える、Agoraのセールス・マーケティング活動の特徴とは?
・まとめ

----------------------------

ここから先は

2,488字 / 5画像

¥ 500

ツイッターで決算に関する情報を発信しています。ぜひフォローしてください!