Q. 外資系PEファンドがユーザベースをTOB。70%超のプレミアムがついた理由とは?
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この記事はゆべしさんとの共同制作です。
2022年11月9日、米国投資ファンドグループが、経済メディア『NewsPicks』などを運営する株式会社ユーザベースの完全子会社化を目的に、TOB(Take Over Bid:株式公開買付)することを発表し、大きな話題となりました。
ユーザベースは、『NewsPicks』や市場データや業界レポートを提供する『SPEEDA』等の様々なサービスを展開しており、ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)が100億円を超える国内有数のSaaS・メディア企業の1つで、読者の皆様も良くご存知でしょう。
国内有数の上場企業のTOBだけでも話題性は十分なのですが、ポイントは「TOB発表前日のユーザベースの終値から、70%超のプレミアムをつけて買付が行われること」です。
ここまで大きなプレミアムがつくTOBはかなり少ないので、本日は、なぜこのTOBに70%超のプレミアムがついたのか?を考察していきます。
TOBの概要
今回のTOBの買付主体は、米国最大級の投資ファンドの1つで世界中で投資を実行しているカーライル・グループ傘下のTHE SHAPERです。
ファンドには様々な種類がありますが、基本的には機関投資家などから資金を募り、買収した企業の経営に関与して企業価値を高めた後、その企業の株式を売却することで利益を得ています。
つまり、買収時の金額が高いと、その企業の株式を売却することで得られる利益が相対的に小さくなってしまうのですが、今回の買付金額はTOB発表前日の株価終値である859円から74.6%のプレミアムをつけた1,500円で行われます。
裏を返せば、カーライル・グループは70%超のプレミアムをつけてもなお、大きなリターンを得ることができると確信しているからTOBに踏み切ったことになります。
ユーザベースとは?
株式会社ユーザベース 2022年12月期 第3四半期決算説明会
ここから、ユーザーベースについて見ていきます。ユーザベースは2008年4月に創業され、2016年10月に当時の東証マザーズ(現:東証グロース)市場に上場しました。
事業内容は、(1)SaaS事業と(2)NewsPicks事業の2つで、いずれも経済情報を活用したサービスを運営しています。
ユーザベースの直近の業績
2022年7-9月の四半期連結売上は44.7億円(YoY+18%)で、全体売上の7割以上がSaaS事業の売上で構成されています。
事業別に見ると、SaaS事業は32.4億円(YoY+29%)、NewsPicks事業は12.4億円(YoY▲2%)で、SaaS事業は着実に成長しているものの、NewsPicks事業は2021年12月期以降、ほぼ横ばいで推移しています。
次に、2022年7-9月のSaaS事業のARRは117.6億円(YoY+29%)でした。製品別ではSPEEDA → FORCAS → AD/NP → INITIALの順で大きく、いずれも右肩上がりに成長しています。
SaaS事業のKPIである顧客社数と顧客単価も同様に右肩上がりに成長しており、2022年7-9月時点で顧客社数は2,645社でYoY+15.5%、顧客単価は42.5万円でYoY+12%でした。
次にNewsPicks事業の2022年7-9月の四半期売上は12.4億円でYoY▲2%でした。
内訳を見ると、有料課金事業はほぼ横ばいで推移しており、四半期売上は6.1億円。広告事業は時期によって大きく変動しているものの前年比では微増で5.7億円。その他事業が1.7億円から0.6億円に減収となったことで、全体としてマイナス成長となりました。
ここまで、カーライル・グループによるTOBの概要と、ユーザベースの事業と業績を見てきました。この決算内容を踏まえて、次章からはユーザベースのTOBに70%超のプレミアムがついた理由を考察していきます。
この記事は、SaaSビジネスに従事されている方や、M&Aに関心がある方におすすめの内容となっています。
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