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「とうきょう」という街

むかしむかし、小さな島国のまんなかに、小さいけどとても栄えた街がありました。

その街は、世界最大級の平野に、世界最大級の人口、世界最大級の経済規模を有する、それはそれは豊かな街でした。

あまりにも素晴らしい街であったため、国中からあらゆる才能を全て吸収し、経済的にも人口的にも拡大するばかりでした。

全く資源を持たない街であるにも関わらず、世界一の食事や可愛いオナゴに惹かれて、多くの人が国外からも訪れる街になりました。

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この街も昔から栄えていたわけではありません。長きに渡って腐敗した政治のせいで、一時は、大きな借金があったこともありました。

この街を成長する街に変えたのは、間違いなくあの殿様のおかげでした。その名は「爺」。

「爺」は殿様になる前は、腕の立つもの書きで、溢れんばかりの才能のおかげか、民衆からの圧倒的な支持を得て、殿様になりました。

「爺」には多くの短所もありました。城に仕事に来ない日も多々ある。外遊で豪遊。となり町の人々を「三国人」と罵ったりする。自前の両替所を作ろうとして大失敗する。数えればきりがありません。

「爺」はこれらのマイナス要素を遥かに超える、リーダーシップを発揮しました。借金は完済され、毎年、街への貢物が増え、街はうるおい続けました。

そんな「爺」にも一つだけ悩みがありました。跡取りがパッとしなかった。自分の息子たちは、この街の殿様になれる器ではないことを自らよく分かっていたのでしょう。晩年、大きなミスをしました。

遠く離れた別の街の「若殿」と出会い、彼に惹かれていきました。「爺」はこの「若殿」こそ、自らの息子たちよりも遥かに優秀な自分の後継者だと勝手に認定。そこから「爺」の迷走が始まりました。

自らが育てた街の殿の座を「秘書」に譲り、自らは「若殿」への支援こそが生きがいだ、と言わんばかりのおせっかいに終始します。「若殿」は最初の頃こそ「爺」の好意を受け入れようと必死でしたが、所詮は赤の他人。最後は、物別れに終わりました。

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「秘書」は、「爺」が後継者認定したことで、民衆からの支持を得て、この街の殿様になりました。

「秘書」も以前は腕のたつもの書きで、城を統治する人物としての才能は「爺」にも勝るものがありました。「秘書」が殿様であった時代、「爺」の政策を引き継ぎ、この街は更なる発展を続けます。

「爺」や「秘書」が殿様だった時代、この街は「世界運動会」の開催地に立候補しました。この街で「世界運動会」が開催されたのは40年以上前で、その時に建設された道路や運動施設が古くなっていたこともあり、「爺」や「秘書」はこれらを新しくするチャンスが欲しいと思ったのでしょう。

「爺」の時代に一度失敗したこの「世界運動会」誘致ですが、「秘書」の尽力もあり、二度目の挑戦で見事誘致を確定させます。8年後の「世界運動会」に向けて、道路や運動施設の最新化を行なうという明確なロードマップが描かれました。

盤石に見えた「秘書」ですが、小さなミスかが命取りになりました。「秘書」は、祭りの際に、不必要な借金を個人でしてしまったのです。その一部をやくざに渡してしまったという疑惑をかけられ、これらの事実を隠し続けたことで、民衆からの支持を失い、殿様の地位から引きずり降ろされました。

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この街は、迷走する「爺」と失脚した「秘書」という2人の殿様を失いました。次に民衆に選ばれたのは「女好き」でした。

「女好き」は文字通り、女好き。結婚3回、子供たくさんですが、学者あがりで、殿様としての資質は十分にあるとみなされていました。それに、何より大きかったのは「裏ボス」の支持を得ていたことでした。

「女好き」はプライドが高いのか、贅沢をするのが大好きでした。外遊の際も、普通の馬車で行けばいいものを、特上の馬車で、お連れの人を必要以上に連れて外遊していました。

「世界運動会」の開催とそこに至るまでのロードマップは既に決まっているため、平常運転していれば、この街は安定的に成長し続けられることがほぼ確定していました。そんな追い風の中でしたが、民衆は「女好き」の身に余る贅沢を批判し、ついに殿様から引きずり降ろすという公開処刑を行いました。

それはそれは醜い公開処刑でした。

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この街は、迷走した「爺」、失脚した「秘書」、公開処刑された「女好き」という3人の才能を短期間に失いました。次の殿様になる人を探しています。

殿様を選ぶには、祭りを開催する必要があり、とても大きなお金が必要です。

民衆は「女好き」を公開処刑したものの、誰を殿様にすべきか全くアイディアがありません。

「世界運動会」の開催とそこに至るまでのロードマップは既に決まっているため、誰が殿様になっても特段やることはありません。平常運転を続け、4年後の「世界運動会」を滞り無く開催させるのが一番大きな仕事です。一番大事な要素は写真写りが良いことくらいでしょうか。

民衆は、自ら選んだ殿様を自ら公開処刑してしまったことを後悔しているようにも見えます。自らの意思でそうしたにも関わらず。

あまりにも順調に成長しているこの街では、民衆が平和ボケをしているようにも見えます。祭りにどれだけお金がかかろうとも、資金が豊富なこの街の民衆は全く気にしている様子もありません。

この街は非常に巨大であるために、短期間の祭りで名を馳せ、殿様になるには、能力だけではなく、知名度が必要です。能力がある候補者たちは、特にやることがない上に、気まぐれな民衆に公開処刑される危険を恐れて、誰も手を上げません。

以前「二番じゃだめなんですか?」と叫んだ「短髪鬼」が良いのでは?という案もありましたが、彼女は自ら辞退。

一時期「爺」が入れ込んだ「若殿」は、あまりにもやることがない今のこの街の殿様に興味がなさそうです。

もう一人の女性「女帝」が有力だとされています。「裏ボス」と仲が悪いのが懸念点ではありますが、彼女が殿様になる可能性は十分あるでしょう。実現すれば初の女性の殿です。

誰が殿様になっても、「世界運動会」が無事に開催されて、この街がずっと栄え続けますように。


※この物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは 一切関係ありません。 

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