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しばQ: 海外の不動産テックの事例について教えてください。

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Q: 海外の不動産テックの事例について教えてください。

ご質問させていただきます。
日本の不動産テックがなかなか日の目を見ない中、Zillow(ジロウ)を代表とする不動産テックがどのように成長しているのか、取引慣行の違う日本がお手本にできる部分はどういった点なのかを知りたいです。


A: アメリカではZillowが売上$847M(約847億円)前年同期比+25%以上で成長しています。

ご質問ありがとうございます。

これまで、このnoteでは不動産関係をあまり取り上げたことがなかったので、今回改めて不動産テックに関してアメリカの状況を整理してみたいと思います。

アメリカの中でもオンラインの不動産関連で最大と言われているZillowに関して詳しく決算を読み込んでいきたいと思います。
*Zillow Group Investor Presentation Second Quarter 2017


Zillowは2006年にマイクロソフト出身の二人が立ち上げた、不動産の売り手と買い手、あるいは貸し手と借り手をつなぐ「マーケットプレイス」のサービスです。日本で言うところのリクルートが提供しているSUUMOに近いかもしれません。2014年にシェアを競っていた「Trulia」というサービスをM&Aし、最大規模のサービスとなりました。
ちなみにこの二人の創業者は、旅行サイトのExpediaの創業者でもあるそうです。


図の左側に登場するのが、売り手、買い手、借主、家主などのコンシューマー(消費者)です。右側がビジネスを提供する側で、不動産エージェント、住宅ローン会社、資産管理会社、住宅関連サービス会社です。

Zillowはこれらのコンシューマーとビジネスをつなぐ1億1,000万もの不動産に関してのデータベースを有しており、うち7,000万件の不動産データがユーザーによって更新されているという、とても強力な「引力」を持つマーケットプレイスになっています。物件のデータベースの中には販売予定がないものまで含まれていて、「Make me move」という機能では、「これ位の値段以上をつけてくれるなら引っ越しを考えても良いよ」いうような情報まであります。
提供されているデータの中には、航空写真や家の中の3D写真などの詳しい物件情報に加え、物件のこれまでの取引価格の推移や、その地域が値上がり傾向にあるのか、値下がり傾向にあるのかという情報も可視化されています。
さらに「Zetimate」と名付けられたZillow独自の査定(estimate)機能があり、日本では不動産屋に見積もりを依頼しないとわからない物件の査定がオンライン上でできることで、より価格の透明性が高まったことが、ユーザーの利用を促進しています。

2016年の1年間の売上は$847M(約847億円)、EBITDAは$145M(約145億円)となっていて、グラフからわかるように右肩上がりで急成長しており、売上の拡大に伴い「不動産テック」と呼ばれるオンラインサービスは、日増しにその存在感を増しています。

月間のユニークユーザー数は1億6,660万人となっており、四半期当たりの訪問回数は15億回を超えています。
このように明らかな右肩上がりのトレンドである不動産テック業界ですが、その中でも代表的なZillowの3つのターゲット市場とそれぞれの市場環境やビジネスモデルについて詳しく見ていきたいと思います。


日米の不動産の売買・賃貸に関する慣習の違い

Zillowのターゲット市場を説明する前にアメリカと日本の不動産業界の違いを少し説明した方がいいかもしれません。

アメリカでは不動産を売買する場合、通常、売り手も買い手も不動産エージェントをつけます。

売り手が家を売ると決めると、まず不動産エージェントと契約をします。契約した不動産エージェントは物件情報を不動産雑誌や新聞広告、あればオンラインをサービスに登録してオープンハウスを開催します。物件を買いたい人はオープンハウスの情報を探して実際に物件を見に行きます。物件を気に入れば買い手側の不動産エージェントと売り手の不動産エージェントの間で入札が行われ、売買が成立するという流れになっています。日本は買い手によって値下げ交渉が行われるのが通常ですが、アメリカでは買い手がつくと、売り手のエージェントが「もっと高く売れそうなので、その値段では売らない!もっと高くする!」という値上げの交渉が通常となっています。

売買の際のやり方は日本と比較的近いかもしれませんが、交渉の仕方は正反対です。

一方で、アメリカで不動産を貸し借りする場合、不動産屋のようなエージェントが介入する場合は非常に稀です。不動産を貸したい人が昔であれば新聞広告、最近であればCraigslistやZillowのようなサービスに不動産の情報を投稿して週末にオープンハウスを開催します。
不動産を借りたい人はオープンハウスの情報を見つけて、実際に訪問し、そこで貸し手と借り手が交渉するというスタイルです。

賃貸に関しては日本と大きく異なり、日本で言うところの不動産屋さんのような人が介在するケースがかなり稀だということです。

不動産に関する慣習というのは国ごとによって多少異なる部分があります。日本とアメリカでも不動産に関する取引の仕方が異なる場合もあるので、アメリカの事例を持って直接日本に適用するのは難しい部分もあるかと思いますが、「不動産業界そのものがオンラインに寄って行く」というトレンドに関しては共通する部分も多いかと多いと思いますので参考になれば幸いです。


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・ターゲット市場ごとの特徴とZillowのビジネスモデル
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