Q. mixiと中国bilibiliに見る、SNS・ゲームの次の巨大ビジネスとは?
A. 動画事業です。二社ともSNSからゲーム会社へ転身しています。そして共に、花形ゲームタイトルへの収益一極依存から脱出するために、収益源の多角化を進めています。
現時点で収益化できているのは、bilibiliの手がけている動画事業です。
この記事はKimmyさんとの共同制作です。Kimmyさんは中国語に堪能なので、中国語で書かれた記事やリサーチデータから、まだあまり日本で知られていないワクワクするビジネスをご紹介くださいます。
今回は、皆さんの頭の中で「SNS」の印象が強い日本のmixiと、「中国版ニコニコ動画」という印象が強い中国のbilibiliについて取り上げます。bilibiliは、事業をピボットしながら月間利用者数が日本の人口を超える1.28億人に成長している、中国の若者に人気のサービスを提供している会社です。
簡単に両社のサービスの変遷と業績トレンドを比較し、共通点と相違点を見ていきます。
そして、SNS、ゲームの次に両社が注力している次の一手について考察していきます。
共通点:SNSから出発し、ゲーム企業へ転身
(1)mixiの場合
mixiは、2004年に誕生したコミュニケーション・サービス企業です。日本では老舗と言えるSNSに、「日記」や「足あと」など独自の機能を盛り込むことで、開始3年でユーザー数は1,000万人を突破しました。
今ではすっかり変わってしまいましたが、この頃は、mixi、モバゲー、GREEが日本のSNSの三強でした。
しかし、2000年代後半からFacebookやTwitterなど海外のソーシャルメディアが続々と日本に上陸し、ソーシャルメディアの競争環境が激化したことでその勢いが鈍化していきました。
そこで、新たな収益源を求めたmixiは、モバイルゲーム業界へ進出しました。その結果、2013年9月にリリースした『モンスターストライク』を爆発的にヒットさせ、収益が劇的に改善します。
現在、mixiの事業セグメントは、ゲームを提供するエンターテインメント事業と、SNSや家族アルバムを提供するライフスタイル事業の2つがあります。下図から分かるように、mixiの売上の97%はゲームによるものなので、ここでは分かりやすく、エンターテインメント事業ではなく「ゲーム事業」と呼びます。
では、ここまで見てきたサービスの変遷が、実際にmixiの業績にどう反映されているのか見てみましょう。
棒グラフが年間売上高(右側の2020年1Qと2Qは四半期の数値)、折れ線グラフがゲーム事業の売上高全体に占める比率を表しています。
2013年9月のモンスターストライクのリリースをきっかけに、売上高が2016年3月までは爆発的に伸びています。また、ゲーム事業の売上高比が圧倒的に多く、2014年3月以降は90%以上をキープしています。直近の2020年第2四半期決算(2019年11月8日発表)を見ても、売上261億円のうち97%がゲーム事業となっており、完全にゲーム企業へ転身していることが分かります。
(2)bilibiliの場合
bilibiliは、2009年に中国で誕生したエンターテインメント・コンテンツ企業です。動画系SNSでユーザーのコメントが画面上に流れる仕様から、日本では「中国版ニコニコ動画」という印象が強いと思います。二次元キャラクターのコンテンツを主要としたため、「オタク専用動画サイト」として中国で一躍有名になりました。
最近ではゲームやアニメ以外の動画コンテンツを増やしてきたことで、中国の若者(特に1990年代後半から2000年生まれのZ世代)を中心に、現在MAU(Monthly Active User=月間利用者数)が1.28億人にのぼります。(中国人口の9.2%)。
bilibili 2019年第3四半期 決算資料(2019/11/18)
bilibiliを初めて知るという方もいると思うので、まず直近の決算を見てから、事業セグメントを説明します。
bilibili 2019年第3四半期 決算資料(2019/11/18)
直近Qの2019年7月〜9月の第3四半期の売上高は、前年同期の約11億元から+72%の約18.6億元(約298億円)に成長していますが、営業利益は▲約4.2億元(▲約64.8億円)と赤字は前四半期より拡大しています。
bilibiliの事業セグメントは、図の左側の色分けされた棒グラフのように、以下の4つに分かれています。
1. ゲーム事業 (Mobile games:青色)
2. 動画サイト事業(Live broadcasting and VAS:緑色)
3. 広告事業(Advertising:黄色)
4. ECおよびその他事業(E-commerce and Others:ピンク)
事業間のつながりを考えると、動画サイト上で広告を流し、2次元キャラクターに関連した商品などを販売しているため、ざっくりと「ゲーム事業」と「動画サイト事業+α」の2つにまとめて考えることもできます。
bilibiliは2014年にゲーム事業部を設立しましたが、その背景はmixiと類似しています。大量の顧客基盤を持つ中国BAT(Baidu, Alibaba, Tencent)が次々と動画サイト事業に参入したことにより、動画サイト業界の競争が激化したため、次の収益の柱を作る必要があったのです。
ゲーム事業でのマネタイズを追求した末、『Fate/Grand Order』(日本で制作され、2019年6月時点で日本国内で1,700万ダウンロード)の中国での独占配信ライセンスを手に入れ、2016年9月にリリースしたところ見事にヒットしました。bilibiliの業績にどう影響したかは、以下の図をご覧ください。
bilibili 2018年3月 SEC登録届出書(FORM F-1)
青色の棒グラフが年間売上高(青色の背景部分の2019年1Q~3Qは四半期の数値)、折れ線グラフがゲーム事業の売上高全体に占める比率を表しています。
『Fate/Grand Order』をリリースした翌年の2017年12月には、売上高は前年同期の約4.7倍の約370億円に増加し、売上の83.4%をゲーム事業が占めるまでに事業規模を拡大し、売上も爆発的に伸びました。
(3)mixiとbilibiliの業績トレンドの比較
ここで、2社のグラフを合わせて業績トレンドを比較してみましょう。するとこれまで見てきた共通点のほかに、相違点も見えてきます。
一つ目は、2社の売上高推移の傾向が異なっています。推移の前半を見ると、花形ゲームタイトルの誕生により売上が伸びている事は共通しています。しかし推移の後半を見ると、mixiは減収トレンドが目立つ一方で、bilibiliは増収トレンドが続いていることが分かります。
二つ目は、2社のゲーム事業売上高比の推移の傾向が異なっています。mixiはゲーム事業への高依存な状況(直近の売上比97%)が続いているにもかかわらず、bilibiliはゲーム事業の売上比が年々減少し、直近では売上比50%まで落ちてきています。
この二つのトレンドの違いは、「1つの花形ゲームタイトルに依存する高収益体制から脱出できているか」の違いが根底にあります。
両社ともSNSからゲームへの転換で大成功してきたわけですが、後半では、ゲームの次のビジネス展開に関して、mixiとbilibiliの相違点を明らかにしていきたいと思います。
この記事は、ゲーム事業を担当されている方、ソーシャルゲームの次に何が来るのかに関心がある方、モンストのファンの方に最適な内容になっています。
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・相違点:収益源の多角化が成功しているか
・(1)mixiの戦略:●●事業への進出
・(2)bilibiliの戦略:●●での付加価値創出
・まとめ
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