Q. PayPayの100億円キャンペーン、顧客獲得コストはいくら?
Q. PayPayの100億円キャンペーン、顧客獲得コストはいくら?
A. 顧客一人当たり約2,500円。Fintechサービスとしては極めて低いレベル。
今日の記事では、PayPayの2018年12月に行われた「100億円をユーザーに還元する第1弾キャンペーン」を振り返ってみたいと思います。
QRコード決済という全く新しい決済手段を普及させるために、ソフトバンクとヤフーがタッグを組んでインパクトの大きいキャンペーンを展開しました。あまりにも早くキャンペーンが終了したので、テレビなどでも大きく取り上げられたのでPRの効果は大きかったと思いますが、キャンペーンの結果はどうだったのでしょうか。
ヤフーの2018年10月-12月期の決算資料から振り返ってみたいと思います。
ヤフー株式会社 2018年度第3四半期決算 プレゼンテーション資料
(余談)
今回の記事とは関係ありませんが、ヤフーの決算資料はこれまで「四半期ごと」の数字を公開していたのに対し、今回から四半期の「累計」の数字のみスライドに入るようになっており、非常に分かりにくく読みにくい決算資料になってしまっています。
「累計」の数字を開示するのが悪いというわけではありませんが、「四半期ごと」の数字を決算資料スライドからわざわざ外すようなことをするのは、スピードが早いインターネット業界ではあまりよろしくないことだと個人的には思っております。
アメリカの上場企業の決算を見ればわかりますが、会社ごとに異なる会計年度に基づいた「累計」の数字だけを開示している企業というのは、ほぼありません。
四半期単体での数字を読みやすく開示する方が、投資家に親切だと思います。
(余談ここまで)
PayPayの第一弾キャンペーンの結果
まずはキャンペーンの概要ですが、PayPayのアプリを使って携帯で支払うことで毎回必ず20%還元され、40分の1の確率で全額キャッシュバックされると言う驚きのキャンペーンでした。
約4ヶ月のキャンペーン期間を設けていたにも関わらず、たったの10日間で100億円の予算が消化され、2018年12月13日でキャンペーンは終了となりました。
100億円という数字のインパクトが相当強かったからか、以下で議論する顧客獲得コスト以外にもブランド認知という点で大きな改善が見られ、PayPay独自の調査によると、「名称の認知」に関しては競合他社を追い抜き、さらに「サービスの理解」に関しても競合他社よりも圧倒的に高くなったという結果が出ています。
実際に第1弾のキャンペーンによって、どの程度のユーザーが獲得できたのかという数字がこのグラフになります。なんとこれだけの短期間で400万人ものユーザーを獲得していることが分かります。
単純計算すると、100億円のキャンペーンで400万人のユーザーを獲得しているわけですから、1ユーザあたりの獲得コストは2,500円という計算になります。
PayPayをFintechのサービスとして考えると、この2,500円という顧客獲得コストは非常に小さいと言えます。
顧客獲得コストが小さいだけではなく、今回のキャンペーンの性質上、400万人のうち、かなりの割合のユーザーが実際にPayPayを利用して支払いをしたと考えられますので、ゴースト会員を獲得したのではなく、実際にサービスを利用してくれた会員を獲得したという点でも非常に意味があるのではないでしょうか。
さらに上で述べたように、サービスの認知や理解にもつながっているということもあり、100億円という非常に大きなお金を使ったマーケティングではありましたが、ここ数年間の日本のインターネットにおけるマーケティングにおいては最も成功した事例の一つだと言えるでしょう。
個人的には、どこかのMBAでケーススタディに入れて欲しいレベルの大成功だと思います。
さて、このキャンペーン結果の「2,500円という顧客獲得コストは、Fintechサービスとしては低い」ということを書きましたが、他のFintechサービスと比べてどの程度低いのか?ということを他社の顧客獲得コストと比較して、詳しく見てみたいと思います。
この記事は、Fintech系のサービスを担当されている方、顧客獲得型のマーケティングに従事されている方に役立つ内容になっています。
サービスごとにどのような顧客獲得コストになっているのか、ということを肌感覚として覚えておくことはマーケティング担当者としては必須だと言えるでしょう。
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・楽天カードの想定顧客獲得コスト
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・PayPay、楽天カード、ヤフーカードの比較
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