なぜZOZOSUITの技術提供元との契約は「買収」ではなく「コールオプション」なのか?
ZOZOTOWNを提供するスタートトゥデイ社が非常に興味深いサービスを開始しました。その名も「ZOZOSUIT」です。
ZOZOSUITとは、多くのセンサーを内蔵したボディスーツのようなものをユーザーが着用して、自分の体のサイズを正確に測定することができるというものです。
まだビデオをご覧になっていない方はこちらをご覧ください。
そして、なんとこのZOZOSUITをユーザーに無料で配布するという発表がなされました。
すでに発表されているプライベートブランドの衣類を販売する際にこれらのデータを用いて、よりユーザーの体にフィットする服を届けることができるようになるだけではなく、既存のZOZOTOWNに出店しているファッションブランドの服もZOZOSUIT経由で取得したデータを利用することで、よりサイズ違いが起こりにくくなるという内容です。
一言で言ってしまえば、ファッション業界で誰もが欲しかった「ユーザーの正確な体のサイズ」というビッグデータを収集するための装置がZOZOSUITになります。
ファッションをオンラインで販売する際に最もネックになるのが「サイズ違い問題」だと言われており、この問題を根本から解決するために誕生したのがZOZOSUITです。
ZOZOSUITの技術提供元のStretchSense社とは
StretchSense社というのは、2012年に設立されたニュージーランドにある企業です。
ウェブサイトを見る限り、主にウェアラブルデバイス向けのセンサー技術を提供している会社に見えます。
そういった意味では今回のZOZOSUITにはぴったりな技術を有している会社と言えるでしょう。
一方でこういった新しいデバイスというものは普及させるのが非常に大変で、特にスタートアップが自ら新しいデバイスを普及させるというのは簡単なことではありません。
今回のようにスタートトゥデイのような既に巨大なユーザーベースを有している企業とパートナーシップを組み、彼らに技術を提供する形をとることで自社の技術を一気に拡大するというのは、新しいデバイスを普及させるための典型的なパターンだと言えるでしょう。
スタートトゥデイとStretchSenseの関係
今回ZOZOSUITを提供するにあたって、StretchSenseから技術提供を受けていることが発表されているだけではなく、スタートトゥデイとStretchSenseの間でコールオプションの契約が結ばれていることが開示されました。
*「StretchSenseLimited社とのコールオプション契約締結に関するお知らせ」(2017/11/22)
主要なポイントを列挙しておきます。
・スタートトゥデイは、現時点で、StretchSenseの39.9%を(既に)保有
・スタートトゥデイが残りの全株を取得できる「コールオプション」を$20M(約20億円)で取得
・コールオプションは、2018年9月30日まで有効
・コールオプションを行使してStretchSenseを100%子会社にするために必要な資金は$72M(約72億円)
そして、現時点でStretchSenseは、(約40%を保有しているにも関わらず)持分法の対象になっていません。
*株式会社スタートトゥディ 第19回株主総会招集通知(2017/6/12)
(参考)通常は20%以上50%以下の議決権(株式)を所有している会社の業績を所有比率に応じて連結決算に取り込むことができますが、企業の重要性が乏しいものについては、持分法適用会社としないことも認められています。
今日のnoteではこのコールオプションの契約内容とその背景を詳しく探ってみたいと思います。
「コールオプションとは何か?」というところから始まり、「今回なぜこのZOZOSUITにとって欠かせない技術を100%買収するのではなく、コールオプションという形にしているのか?」という点も考察したいと思います。
コールオプションを詳しく理解している方や、なぜ今回は買収ではなくコールオプションを選択しているのかをすぐにイメージできる方は今回の記事は購入する必要はありません。
今回の記事はどちらかと言うと初心者向けです。大企業における事業開発やコーポレートデベロップメントに従事している方で、今後外部のスタートアップと業務提携・資本提携をしながら新サービスを開発していく可能性があるポジションの方には必須の内容かと思います。
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