Q. 世界最大のIDaaS企業Oktaの驚異的な成長を支える売上継続率(NRR)は?
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ヒント:OktaのNRR(売上継続率)は他SaaS企業と比較して高水準です。
この記事はゆべしさんとの共同制作です。
本日は、アメリカのIDaaS(Identity as a Service:アイダースまたはアイディーアース)企業のOkta(オクタ)に注目して、事業展開や決算情報を整理し、NRRと営業・マーケティング戦略を見ていきます。
IDaaSとは、様々なクラウドサービスのIDやパスワードを一元管理できるサービスの総称で、ユーザーはIDaaSを利用することで、連携しているクラウドサービスをシングルサインオンや顔認証などで安全に利用でき、ID・パスワードの煩雑な管理の必要がなくなります。
SaaSを代表に、数多くのクラウドサービスが普及し、転職や雇用形態の多様化による人材の流動性が高まった昨今、多くの企業で、IDやパスワードの管理、セキュリティ対策等が求められ、その解決策としてIDaaSが注目されるようになりました。
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、「IDaaSの市場規模は、2019年時点で世界で25億ドル(約2,500億円)と推計され、2024年までに65億ドル(約6,500億円)にまで拡大する」と予測されています。
この記事では、そんな注目のIDaaSの中でも最大手の企業であるOktaに注目して、高いNRRを実現できる理由も解説しているので、是非最後までご覧ください。
この記事では、1ドル=100円($1 = 100円)として、日本円も併せて記載しています。
アイデンティティプラットフォーム(IDaaS)Oktaとは?
Okta Investor Presentation Q3 FY22(2021年12月1日)
Oktaは2009年に、Salesforce出身のトッド・マッキノン氏とフレデリック・ケレスト氏によって、米国で設立されたSaaS企業です。
創業からIDaaS領域で事業展開を続け、2015年に12億ドルの評価額で資金調達したことでユニコーン企業となり、2017年にアメリカのNASDAQに上場しました。2020年には日本法人「Okta Japan株式会社」を設立し、日本での事業展開にも注力しています。
Oktaの事業内容としては、B向けにクラウドサービスの認証ソリューション「Workforce Identity」を提供しています。Workfoce Identityは、シングルサインオン(1回のユーザ認証で、複数のクラウドサービスの利用ができる機能)やID管理、多要素認証等の機能を持つOktaの主力事業です。
Workforce Identityを利用している従業員は、上図のように安全かつワンストップでクラウドサービスを利用でき、Workforce Identityの管理者は、新入社員や退職者の対応を一元管理できます。
また、Oktaはその他にも、BtoBtoC(企業の個人ユーザー向け)のサービスとして、会員登録やログイン方法などの会員管理の機能を提供する「Customer Identity」も提供しています。
Customer Identityを契約した企業は、FacebookやGoogle等のログイン情報を使用したソーシャル認証機能等を自社サービスに実装でき、会員管理機能の開発工数の削減と、最新のセキュリティレベルの高い会員管理機能を簡単に利用できるメリットがあります。
2021年8-10月期の決算
Oktaの2021年8-10月(FY22Q3)の3ヶ月間の売上は$351M(約351億円)で、2021年5月に買収したAuth0の売上が加わりYoY+61%、Auth0の売上を除いてもYoY+40%と、急成長しています。
また、売上構成比を見ると、サブスクリプション(継続課金)による売上が全体の96%を占めており、YoY+63%で急成長していることから、収益面の安定性が非常に高いことが分かります。
GAAPベースの営業損失:2021年度第3四半期のGAAPベースの営業損失が5,200万ドル(総売上高の24%)であったのに対し、GAAPベースの営業損失は1億9,900万ドル(総売上高の57%)となりました。
引用:【抄訳】Okta、好調な第3四半期決算を発表
次に、2021年8-10月(FY22Q3)の3ヶ月間の営業利益は$▲199M(約▲199億円)の赤字です。Oktaは以前から赤字が続いており、今四半期は特に積極投資を行ったことで、前四半期(FY21Q3)の$▲52M(約▲52億円)と比較して、赤字幅が拡大しました。
一方で、ストックオプションやのれん償却費等のコストを調整したNon-GAAP(公正妥当な会計ルールに則らない会計基準)ベースの営業利益率は▲2.7%(営業利益は▲$9.5M(約9.5億円))であることから、Non-GAAPベースでの収支はほぼトントンとなります。
GAAP(Generally accepted accounting principles)とは、企業が財務諸表を報告する際の会計基準です。GAAPは一般的な会計基準であるため、汎用性が高いというメリットがありますが、必ずしも企業・事業の特性を的確に表せないというデメリットがあります。
そこで、自社の事業の実態を投資家等に適正に理解してもらうために、Non-GAAP(一般的な会計基準に則らない)ベースで決算情報を発表する企業があります。
また、2021年8-10月時点の顧客数は14,000社でYoY+49%です。特に、ACV(Annual Contract Value:年間契約額)が$100K(約1,000万円)以上の顧客数は2,825社でYoY+59%と、全体の顧客数の20%超を占めており、急速に増加しています。
次に、SaaS企業の健全性を示す「40%ルール」を見ると、2021年8-10月は60%であり、2年前から余裕を持ってクリアしていることが分かります。
40%ルールとは、大まかに言うと「SaaS企業は高い売上成長率があれば営業利益率は多少低くても事業として健全である一方、売上成長率が停滞した場合は高い営業利益率を求められる」という健全性を図る指標で、数式では【売上成長率 + 営業利益率 ≧ 40%】となります。
Oktaの場合は、「直近12ヶ月間の売上成長率」と、「Non-GAAPでフリーキャッシュフローベースの利益率」を合計して、40%ルールに当てはめています。
ここまで、Oktaの企業概要や事業展開、2021年8-10月の売上や営業利益、顧客数などの決算情報に加え、SaaSの40%ルールを見てきました。
記事の後半では、OktaのNRR(売上継続率)を確認し、Oktaが掲げている営業・マーケティング戦略と、高いNRRを実現している理由について見ていきます。詳細は後述しますが、OktaはSaaS企業の基本とも言える営業・マーケティング戦略を着実に実行して結果を出しています。
そのため、この記事はIDaaSに興味のある方に加えて、SaaSビジネスに従事する方、企業の成長戦略に関心がある方におすすめの内容となっています。
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