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「コツコツ型」のM&Aで着実に成長する2社: じげんとメタップス

ネット業界でM&Aと言えば「成長」を買う、というケースを想定される方が多いのではないかと思います。

過去のソフトバンクや楽天のM&Aの事例を見ても、買収時のスタートアップの売上や利益に比べて非常に高い価格で買収しているケースが多々あります。

ライブドアショック以前のライブドア社も同じようなM&Aを非常に多く行っていた印象がありますし、昨今なにかと話題のキュレーションメディアのMERY、iemoをDeNAが2014年に買収した金額は2社で50億円と言われており、明らかに「成長」に対して大きなプレミアムを払ったと言えるでしょう。

上場企業の中でも特に「成長」を期待されている会社は、成長率を維持するために「今はまだ小さいけれどもこれから明らかに伸びそうな会社」に対して大きなプレミアムを払う傾向にあります。

こうしたM&Aとは対照的に、ある意味非常に地味な「コツコツ型」のM&Aをして成長を続けている会社があります。

ここでは共にマザーズに上場している、株式会社じげんと株式会社メタップスの2社を取り上げます。

この2社が全く同じというわけではありませんが、共通する部分も多いと思うので、参考になる方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。まずそれぞれの事例を取り上げ、その後2社の共通項を探ってみたいと思います。


じげんによる「株式会社三光アド」買収

株式会社じげんはライフイベント領域(求人/住まい/結婚/車など)を中心に、その領域毎に特化したサイトを多数運営している会社です。2016年3月期の売上高は50.3億円、営業利益は16億円、総資産は88.4億円です。

じげんによる「株式会社三光アド」買収を見てみます。(2016/12/16発表)

三光アドは、新聞の折り込み求人広告を扱う会社のようです。

折り込み広告の発行部数が300万部もあり、東海地方では市場シェアが1位とのことです。

さらに興味深いのが、2016年7月決算の貸借対照表の総資産12.5億円のうち9.5億円が現預金と非常にキャッシュリッチな会社であるという点です。

一方で、売上と利益の成長率はそこまで高くないということも言えます。

買収金額に関してですが、EBITDAが約5.6億円の会社を21億円で買収できていることになります。

つまり倍率は4倍以下であり、「成長」を買う買収と比べれば非常に「割安」なM&Aと言えるでしょう。


メタップスによる「ビカム株式会社」の買収

次に株式会社メタップスは、データ分析を軸に決済プラットフォーム、マーケティング支援、Webサービスを提供している会社です。2016年8月期の売上高は88.8億円、営業利益は▲3.1億円、総資産は169億円です。

メタップスによる「ビカム株式会社」の買収を見てみます。(2016/6/28発表)

ビカムはショッピング検索エンジンを作っている会社です。

ビカムの2015年12月期の売上高は10億円程度、営業利益は7,600万円です。

売上高の推移は、ほぼフラットかマイナス成長です。

売上高10億円で営業利益が7,600万円の会社を3.2億円で買収したことになります。こちらも成長率が高いとは言えない会社であったため、売上営業利益に対して買収金額が比較的小さい形になっています。


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・じげんのM&A戦略
・メタップスのM&A戦略
・2社に共通する戦略と「コツコツ型」M&Aのメリット・デメリット

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(表紙画像: http://www.in-pharmatechnologist.com/Regulatory-Safety/Survey-M-A-drivers-inhibitors-in-2016)

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