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【世界最大級のアドネットワーク】Applovinが遂に上場!同社のユニークなM&A戦略とは?

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私のYouTubeチャンネルでは、決算読み解き実況中継をしています。おかげさまでYouTubeの方も多くの方にご覧いただいているのですが、特に忙しいビジネスパーソンの方たちから「YouTube動画の内容を知りたいが、動画を見る時間が無い」というお声を多数いただいています。

この記事では、上の動画の内容をスクリーンショット付きで文字起こししてあります。動画を見る時間はないけれど、内容を短時間でおさらいしたいという方に最適です。

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ーー(Asako)皆さんこんにちは。今回は、上場が予定されているApplovinのS-1を読んでいきたいと思います。シバタさんよろしくお願いします。

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ーーまずApplovinとは、「モバイルアプリの開発者の成功を可能にすることで、モバイルアプリのエコシステムを成長させる」とミッションを掲げている会社です。

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ーービジネスモデルについては、上の画像を見ていただくと分かりやすいと思います。

ーーまず、一番下の「AXON」は機械学習型のレコメンドエンジン、その右の「App Graph」がアプリのデータを貯めているところ、そして「Infrastructure」。

ーーこうしたテクノロジーを活用することで、マーケティングツール「AppDiscovery」や、アプリ内収益の最大化を支援するツール「MAX」を、デベロッパー向けに提供しています。

ーーこれらのツールを活用し、Applovinが保有するアプリのインストール最大化や、アプリ内収益の最大化を行なっています。

ーーさらに、このアプリのファーストパーティーデータを、再び機械学習型のレコメンドエンジン「AXON」に活用していく、といったサイクルを回しています。

(シバタナオキ)補足しますと、Applovinは元々Adnetworkの会社です。Adnetworkとは、パブリッシャーと広告主のマッチングをするモデルのことです。

自分たちのネットワークにいるパブリッシャーに対して、広告主から預かった広告案件を配信するのが元々のモデルなのです。

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赤線で囲った部分が示すように、自社のグループのアプリも持っています。今は、メディアビジネスやアプリビジネスに加え、Adnetworkの広告ビジネスがあります。


今回の決算の印象は?

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ーー続いて、業績を見ていきましょう。2020年の通期の売上が$1.45B(約1,450億円)、営業利益が−$62M(約62億円)です。

ーー売上は前年同期比+46%成長の一方、営業利益は赤字となっています。売上の規模はものすごいですが、営業利益は黒字にすることもできたのではないかと思います。

ーー投資家の印象を考えると、上場時に黒字にしておいた方が良いということはないのでしょうか。足元の業績の印象はいかがですか。

売上で見ると、2018年が$483M(約483億円)で、次の年にはほぼ倍になっています。そこからさらに+50%伸びているので、規模感と成長率がすごいです。

2018年は売上が$483M(約483億円)で、営業利益が$242M(約242億円)です。つまり、営業利益が約50%も出るビジネスになっている状況でした。

その後2019年、2020年と見ていくと、営業利益が減っています。これは、グロースをするために投資をしているのです。

数字を見ていただけると分かりますが、「Sales and marketing」の部分が大きく跳ね上がっています。そのため、とにかく利益を多少短期的に減らしてでも、トップラインのグロースを行なったのです。

当然、利益は出ないよりも出る方が良いのですが、この会社の場合、2018年や2019年の数字を見ると、放っておいたら利益が出る会社だと分かります。

そこで無理やりアクセルを踏んで赤字にしている気がするので、投資家観点では、利益の心配はありません。


KPIで注目すべき数字やポイントは?

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ーーKPIを記載したのがこの画像です。KPIの中で、注目すべき数字やポイントがあれば教えてください。

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まずその前に、上の画像を見てください。これは、Applovinの売上の内訳です。2020年は$1.45B(約1,450億円)くらいの売上があります。

Adnetworkの売上を示す「Business Revenue」は、$711M(約711億円)くらいです。その下の「Consumer Revenue」は、自社で持っているゲームやアプリのコンシューマーに課金している部分を表しています。

2020年は、この2つが大体半々になっています。Adnetworkは前年同期比+19%、ゲーム事業は前年同期比+86%で伸びているのが現状です。

つまり、Business向け(Business Revenue)とConsumer向け(Consumer Revenue)の2つのビジネスモデルがあるのです。

繰り返しになりますが、Business向けはいわゆるAdnetworkの広告売上、Consumer向けは自社で持っているアプリのアプリ内課金のことです。

以上のことを踏まえて、KPIが記載された画像をもう一度見てみましょう。

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Adnetworkのビジネスでは、「Enterprise Clients」が、2020年時点で172社と書いてあります。

「Enterprise Clients」の定義は、12ヶ月間で$125K(約1,250万円)以上の売上を生み出したクライアントの数です。2020年の1社あたりの広告売上は、なんと年間$4M(約4億円)でした。

ーーものすごい数字ですね。

まず大規模広告主が172社くらいいます。彼らは年間4億円どころか、何十億円と広告に使っているようなアプリやゲームの開発者がお客さんで、これが会社の大きな特徴です。

以上が、いわゆるBusiness向けのAdnetworkのビジネスです。

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こちらの表が、Consumer向けの、自社開発アプリやゲームのビジネスです。

「Monthly Active Payers」は、1ヶ月あたりの課金ユーザー数を意味しています。これが2020年は150万人なので、1ヶ月あたり150万人が1ヶ月平均$41(約4,100円)を払っていることが読み取れます。

表を見れば分かる通り、2つとも数字が右肩上がりで伸びています。Applovinグループの急成長を支えているのは間違いありません。

月に平均$41(約4,100円)も課金する人たちがいるくらいなので、結構コアなゲームなのではないでしょうか。


競合であるUnityとの違いは?

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ーー競合との比較をしてみましょう。アプリ内広告の収益を最大化するソリューションを提供している点では、UnityがApplovinの競合の1つに当たります。

ーーUnityとのビジネスモデルの違いや、KPIから見えてくる戦略の違い、2つを比較したときの強み・弱みについて教えてください。

売上は、ApplovinがUnityよりも1.8倍大きいです。これがまず大きなポイントになります。

また、Applovinの売上は広告が半分、C向けのゲームが半分です。一方Unityは、ツールが30%、広告が60%となっていることから、提供しているサービスが少し違います。

そして最大の違いは、Applovinが自社アプリを持っていることではないでしょうか。プラットフォームに徹底するのではなく、逆に自社ドメインを持ち始めたことが、今回の急成長の鍵になったのだと思います。

ーー半分がアプリの売上から来ているので、もうゲーム会社と言っても良いかもしれませんね。

そうですね。実際Machine Zoneを買収しましたが、この買収は戦略的に見事に当たったと言えるでしょう。


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