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Q.国産プロジェクト管理ツールを作るヌーラボが上場。SaaSとして圧倒的に優れている指標とは?

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ヒント:●●なしのビジネスモデルによって成長してきたことがある指標に表れています

この記事はhikoさん(企画・リサーチ担当)と masmさん(ライティング担当)との共同制作です。

2022年5月24日、プロジェクト管理ツールの「Backlog」などのチームのコラボレーションを促進するサービスを展開している株式会社ヌーラボが、東京証券取引所のグロース市場に上場承認されました。2022年6月28日に上場予定です。

ヌーラボは2004年に設立した老舗スタートアップとも言われている企業です。上場に際して提出された目論見書を読み込んでみると、ヌーラボは他のSaaS企業と比べてど非常にユニークな点があることがわかりました。

今回の記事では、ヌーラボの事業概要や業績を紹介したのち、圧倒的に優れている指標を分析し、サービスの強みや成長可能性について考察していきます。

株式会社ヌーラボ 新株式発行並びに株式売出届出目論見書


会社概要

まず、ヌーラボの会社概要を確認していきます。

ヌーラボは2004年3月に福岡で設立された企業で、「無(Null)の状態から有を作り出す研究所(Lab)のような会社でありたい」というのが社名の由来です。2006年にリリースされたプロジェクト管理ツールの「Backlog」を皮切りに、作図共有ツールの「Cacoo」、チャットツールの「Typetalk」などのSaaSを開発し、グローバルでマーケティング、開発を展開しています。

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2022年4月30日現在の従業員数は146人で、日本法人の他、2012年にNulab Singapore Pte.Ltd.(シンガポール)、2014年にNulab USA, Inc(アメリカニューヨーク州)、そして2018年にNulab Netherlands B.V.(オランダ国アムステルダム州)を設立しました。この4拠点を設けているのは、世界中にシームレスにサービスを届けるために時差をなくすことを考えたそうです。

ヌーラボのプロダクトは、リリース当初から海外展開することを見越して英語対応で作られており、SNSなどの口コミで海外を含めて評判が広がり、サービスが普及していきました。

後に紹介する「Cacco」というオンライン作図ツールのユーザーは、2018年時点で90%を海外のユーザーが占めており、それほどヌーラボのサービスはグローバルに広まっています。


事業概要

次に、ヌーラボが提供しているサービスを紹介します。

ヌーラボは以下の4つのSaaSを展開しています。

1.Backlog:プロジェクト管理(2005年リリース)
チームで協力しながら作業を進めるためのコラボレーション型プロジェクト管理ツール。
大規模なソフトウェア開発、デジタルマーケティングキャンペーンの管理に加え、営業・総務などの一般的な業務のタスク管理などにも採用されています。

2.Cacoo:作図共有(2009年リリース)
様々なアイデアを図で描くことにより言葉を超えて共有することができるビジュアルコラボレーションツール。ワイヤーフレーム、フローチャート、組織図など、豊富なテンプレートや図形が用意されています。

3.Typetalk:ビジネスチャット(2014年リリース)
多くの人と同時に円滑なコミュニケーションを行うことができるビジネスチャットツール
「Backlog」との連携性が高いことが特徴です。

4.Nulab Pass:情報セキュリティ(2020年リリース)
IDの管理を容易にし、組織の情報セキュリティ・ガバナンスを高めるツール。不正なアクセスを防ぐために推奨されている「SAML認定方式によるシングルサインオン」を提供しています。

ヌーラボは、4~6年間隔で新たなサービスを開発してリリースするサイクルで成長してきました。

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ヌーラボのサービスラインラップを複合的に使用することで、サービスの開発から管理、マーケティングを通して、エンジニアからデザイナー、セールスから広報まで共通したプラットフォーム上でコミュニケーションを取れるようになっており、チームのコラボレーションを促進するサービスの提供が行われています。


ヌーラボの業績

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次に、業績について見ていきましょう。

まず売上の推移ですが、直近の2021年3月期の通期売上は19.39億円、YoY+22.3%となっており、売上成長率で見ると2018年3月期のYoY+175.8%という驚異的な成長をピークに、YoY+20%〜+30%台に減少傾向です。
しかし、毎期着実に売上成長はしており、直近5年のCAGRは58.7%となっています。

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一方で経常利益は、2021年3月期が▲27百万円、売上高経常利益率は▲1.4%となっており、直近4期連続で経常利益がマイナスになっていました。しかし、直近の2022年3月期第3四半期売上高は17.1億円、経常利益は1.1億円と、四半期で黒字を達成しました。

4期連続経常赤字で上場することに違和感を感じるかもしれませんが、SaaS企業において、赤字上場は珍しいことではありません。

過去の赤字上場の例を見てみると、売上高経常利益率が、マネーフォワードは▲57.6%、チームスピリットは▲12.6%、Sansanは▲42.1%でした。

赤字上場が可能になる理由は、SaaSは事業の特性上、開発やマーケティングに先行投資をして赤字になったとしてもその後の収益の回収が予測しやすいからです。
ただし、上場のためにはそのグロース戦略を投資家に説明して理解してもらう必要があります。

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2021年3月期のサービス別の売上高を確認していきます。

2021年3月期サービス別売上
サービス    売上高    YoY  構成比
=======================================
Backlog   1,820.3百万円  +22.4%  93.9%
Cacoo    103.1百万円  +16.1%   5.3%
Typetalk    15.0百万円  +48.4%   0.8%
Nulabpass   0.2百万円   -    -

ヌーラボのサービス別売上を見ると、Backlogが売上の大半(93.9%)を占めています。


同業SaaSとの比較によるヌーラボの規模感

続いて、SaaSサービスを提供する他社との比較を元に、ヌーラボの規模感を確認していきます。

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上のグラフは、『KPIデータベース』を元にSaaS企業のARR(年間経常収益)を比較したものです。

『KPIデータベース』は、日米のネット企業の業績・各種KPIをまとめて提供しているサービスです。法人向けのサービスとなりますが、興味のある方は、以下の記事をご覧ください。

ヌーラボの2022年3月におけるARRは25億円、YoY+16.6%となっており、規模としてはチームスピリット(27.2億円)とスマレジ(24.3億円)の間に位置しています。

上記比較企業の中では比較的下位になりますが、新規上場企業の規模としては大きい部類に入ります。

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次に、他のSaaS企業と時価総額の比較をしてみると、ヌーラボの想定公募時価総額は137億円でありこの時価総額が上場時につくとすると、Chatworkの146.2億円に次ぐ額です。

この額は、ARRで同水準のスマレジの時価総額192.6億円より約30%小さく、チームスピリットの66.8億円の2倍大きい時価総額となっています。

ここまで、2022年5月に上場承認を得たヌーラボの企業概要、事業概要、業績、他のSaaS企業との比較を見てきました。

記事の後半では、ヌーラボが求められる市場環境と成長戦略の根拠となる数値を確認していき、他のSaaS企業と一線を画すヌーラボの特異性に迫っていきます。

この記事は、SaaSビジネスに関わっている方、成長企業の要因について知りたい方、ヌーラボの特異性に興味がある方に最適な内容になっています。


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・Q.国産プロジェクト管理ツールを作るヌーラボが上場。SaaSとして圧倒的に優れている指標とは?の答え
・サービスの強み
・赤字上場が出来る背景
・まとめ

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