見出し画像

Q.過去最高益1.2兆円を生み出したソニーはなぜ金融事業を分離するのか?

新着記事をTwitterでお届けします。下記URLからご登録ください。
Twitter:
https://twitter.com/irnote


A. ●●を解消し、海外の機関投資家により評価されるため

この記事はhikoさん(企画・リサーチ担当)との共同制作です。

ソニーは、2022年度(2022年4月〜2023年3月)の決算を2023年4月28日に発表しました。

2022年度は新型コロナウイルスのオミクロン株による感染拡大や欧米のインフレ加速と景気悪化等のソニーにとって向かい風でしたが、2021年度の決算に続き、2022年度も通期連結売上高、連結営業利益が過去最高を記録し、良い決算になりました。

同時に、十時裕樹社長兼最高財務責任者から金融子会社ソニーフィナンシャルグループ(SFGI)の株式上場を前提としたパーシャルスピンオフ(分離・独立)の検討が発表されました。

今回の記事では、前半では2022年度のソニーの業績を中心に見ていき、後半ではパーシャルスピンオフの背景・理由を考察していきます。


2022年度のソニーの業績

上図は、ソニーの今期の業績です。

2022年度の通期連結売上高は11.52兆円、YoY+16.3%で約1.61兆円増加し、過去最高を更新しています。

通期連結営業利益は1.2兆円、YoY+0.4%と過去最高を更新しています。

次に、セグメント別業績を見てみましょう。

2022業績  通期売上  YoY成長率
=======================================
ゲーム   3.64兆円   +33.0%
ET&S     2.47兆円     +5.8%
金融    1.45兆円     -5.1%
I&SS      1.45兆円    +30.2%
音楽      1.38兆円    +23.6%
映画      1.36兆円    +10.5%

※ゲーム=ゲーム&ネットワークサービス事業
 ET&S=エンタテイメント・テクノロジー&サービス事業
 I&SS=イメージング&センシング・ソリューション事業

前年比で最も成長しており、売上構成比が高いのがゲーム&ネットワークサービス事業で、2022年度の売上は3.64兆円、YoY+33.0%と大きく成長しています。

2020年11月に発売したプレイステーション5の販売の品薄状態が解消され、引き続き売上が好調であったことや人気タイトルの「ゴッド・オブ・ウォー」の2022年11月に発売した最新版が大ヒットしたことが背景にあります。

次に成長しているのが、イメージング&センシング・ソリューション事業で2022年度の売上は、1.45兆円、YoY+30.2%で大きく伸びています。

現在のスマートフォン製品市場は、前回決算時の想定よりも若干悪化している厳しい環境ですが、モバイル機器向けのイメージセンサーの技術向上や高画質・高性能化のトレンドをソニーは牽引しており、グローバルでの市場シェアを前年度44%から51%に伸ばせたことが要因です。

金融事業は、2021年度に引き続き唯一のマイナス成長になっており、生命保険事業の運用益減少が主な要因となっています。


パーシャルスピンオフ制度により、金融事業の子会社の分離・上場案を検討

写真:日本経済新聞

ソニーは、2023年5月18日に開催した2023年度経営方針説明会で、金融子会社ソニーフィナンシャルグループ(SFGI)の株式上場を前提としたパーシャルスピンオフを2-3年後に実行することを念頭に置いて、検討を開始したことを明らかにしました。

パーシャルスピンオフ制度とは、大企業発スタートアップの創出や企業価値向上に向けた事業再編を促進するため、元親会社に一部(20%未満)の持ち分を残し、スピンオフ(分離・独立)できる仕組みです。

ソニーは、今回の金融子会社ソニーフィナンシャルグループのパーシャルスピンオフの狙いを「金融事業の持続的成長に資するため、本スピンオフ実行後も、同事業が商号を含むソニーブランドの活用と、ソニーグループ各社とのシナジー創出を継続できること」と発表しており、さらなる成長に向けて、より多くの投資が必要と判断したと考えられます。

社長兼最高財務責任者である十時氏は、経営方針説明会でパーシャルスピンオフの検討を決めた理由について、半導体やエンタテインメント関連事業を中心に「さらに中長期的な成長、拡大を志向していくにはこれまでとは違う次元の投資が必要になってくる」とコメントしています。

また十時氏は、以下のコメントもしています。

ソニーグループ全体のキャピタルアロケーションという観点でみると、拡大していくエンタテインメント事業、イメージセンサー事業などへの投資との両立は容易ではない。こうした課題に対処し、金融事業のさらなる成長を実現するために、新たに認められたパーシャルスピンオフを活用することにした。

このことから、ソニーは、金融事業の顧客基盤の拡大に必要なITシステム投資、M&A投資などの成長投資を実現するために、パーシャルスピンオフすることで株式市場への再上場による投資資金調達をしたいという背景があったと考えられます。

ここまでは、2022年度のソニーの業績と金融子会社ソニーフィナンシャルグループのパーシャルスピンオフの発表について見てきました。記事の後半では、金融事業を分離する理由について考察していきます。

この記事は、企業の経営戦略に携わる方や興味がある方はもちろん、企業の多角化経営に関心がある方に最適な内容になっています。


ここから先は、有料コンテンツになります。このノート単品を500円、あるいは、初月無料の有料マガジンをご購入ください。

有料マガジンは、無料期間終了後、月額1,000円となりますが、1ヶ月あたり4〜8本程度の有料ノートが追加されるため、月に2本以上の記事を読む場合には、マガジン購読がお得です。

月末までに解約すれば費用はかかりませんので、お気軽に試してみてください。

有料版をご購入いただくと、以下のコンテンツをご覧いただけます。

・過去最高益1.2兆円を生み出したソニーはなぜ金融業を分離するのか?の答え
・金融事業を分離する理由#1 ソニーにおける金融事業の役割の変化
・金融事業を分離する理由#2 コングロマリットの解消
・スピンオフをして時価総額が増加した事例
・まとめ


ここから先は

3,865字 / 10画像

¥ 500

ツイッターで決算に関する情報を発信しています。ぜひフォローしてください!