LINEモバイルはどの程度儲かるのか(1) MVNOの1ユーザーあたりの売上いえますか?
先週、LINEが今年の夏にもMVNO事業に参入する、というニュースが出ました。主なポイントは、以下の通りです。
・月額500円から
・LINEのサービス(メッセンジャー、通話、音楽)はデータ通信量にカウントせず
・Facebook、Twitterに関しても通信料を無料にする予定
そこで今週は2回に分けて、MVNOビジネスを見てみたいと思います。今日は1回目で「MVNOの1ユーザーあたりの売上(ARPU)」に関してです。
MVNOとは?
MVNOとは「Mobile Virtual Network Operator」、日本語では「仮想移動体サービス事業者」のことで、携帯電話回線などの無線通信基盤を他の通信事業者から借り受けて提供する企業のことを言います。
この図が分かりやすいかと思いますが、左側が通信キャリア(NTTドコモ、KDDI/au、ソフトバンク)で、彼らが持つ通信インフラを、右側のエンドユーザーに「又貸し」するのがMVNOです。
MVNO回線はなぜ遅くなる(なりうる)のか
MVNO回線は、携帯キャリア(主にNTTドコモ)の回線を又貸しする、と上述しましたが、実際には、携帯キャリアと直接契約する場合と、MVNOと契約する場合で回線スピードが異なる場合が多々あります。
例えばこの例では、NTTドコモでは下り31.3Mbps出ているところが、b-mobileでは下り9.1Mbpsしか出ない、ということが起こりえます。
なぜこんなことが起こりえるのかというと、MVNOは、
・携帯キャリアから回線を借りる際は、回線の太さ単位で借りて、
・エンドユーザーには、総通信量で販売する
からです。
分かりにくいので、高速道路の例で説明します。
例えば、NTTドコモが自ら200レーンある高速道路を作りました。15レーンを自ら使い、残りの5レーンをb-mobileに貸すとします。
この場合、b-mobileは借りる5レーンに対して使用料を払うのですが、この際、「1レーンあたりいくら」という形で払います。車がどれだけ走ろうとも、何レーンを借り上げるかで費用が決まります。
他方、b-mobileがユーザーに販売する際は、(月あたりに)レーンを通過する車の総数(=月間の合計データ量)で販売します。つまり、車(データ)が増えれば増えるほど、レーンが混雑して渋滞(=通信が遅くなる)します。
MVNO事業者としては、帯域(レーン)を丸ごと借りているので、24時間を通してトラフィックが一定であれば一番嬉しいのですが、日本は時差もありませんし、普通の人は朝起きて夜になると寝るので、通信トラフィックが1日を通して一定になることはありません。
この図が1日あたりの通信量のイメージ図です。朝の通勤・通学時間帯に山があり、ランチの時間にも大きな山があり、帰宅後の時間にも再度山があります。
つまり、MVNO事業者としては、携帯キャリアと同等のサービスを提供しようとすると、この「山の一番高いところ」に相当する通信帯域(レーン数)を借りないといけません。(そうすると当然コストが上がります。)
逆に悪い言い方をすれば、短期的に利益を最大化しようとするには、なるべく細い回線を借りて、そこにたくさんのユーザーを押し込む、ということになります。
MVNO事業の1ユーザーあたりの売上(ARPU)
MVNO事業を展開している上場企業でセグメント開示がされているのは、日本通信(b-mobile)とIIJくらいしか見つからなかったのでこの2つを見てみます。
はじめに日本通信ですが、データプランのみのARPUは1,106円。
音声通信込みのARPUは1,234円です。
IIJmioの個人回線に限ると、2015年Q3で、68.5万ユーザーで30.3億円の売上なので、ARPUは1,474円です。(こちらは、データのみ、音声付き混ざってると思われます。)
従って、簡単に整理すると、MVNOのARPUは1,000-1,500円/月くらいと覚えておけば良いでしょう。
ちなみに、3大携帯キャリアのARPUは、割引適用前で約5,500円/月、割引適用後で約4,500円/月なので、MVNOのARPUは携帯キャリアの3分の1〜5分の1くらい、ということが分かります。
実際に、MVNOの場合は端末代が別途かかり、携帯キャリアのような端末割引がないので単純比較は難しいですが、MVNOの方が、携帯キャリアよりも3000-4000円/月くらい安いという計算になりますね。
(サンプル数が少ないので、実際のMVNOの平均ARPUはもう少し高いかなぁという気もしますが、個人的な感想としては思ったよりも随分低いなぁという印象です。現時点でのMVNOの主な用途は、携帯キャリアとの契約を完全に置換えるというよりは、二台持ちのケースやあまりデータを使わない人などが多いのかもしれませんね。「携帯キャリアよりも3000-4000円/月くらい安い」というのは、楽天モバイルの売り文句を見る限り、大きくずれていることはなさそうです。)
Lineモバイルの売上規模の推計
さてようやく本題ですが、LINEモバイルのMVNO事業の売上はどの程度になるか、推計してみます。日本でのLINEユーザー数は4000万人として計算します。
LINEユーザーのうち、1%がLINEモバイルに加入したとして、ARPUが1500円/月だとすると、グロス売上が6億円/月(72億円/年)という計算です。
以下、同じように計算すると、こんなイメージになります。
MVNOユーザー数 => グロス売上
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1%(40万ユーザー) => 6億円/月(72億円/年)
5%(200万ユーザー) => 30億円/月(360億円/年)
10%(400万ユーザー) => 60億円/月(720億円/年)
2015年9月時点でのMVNO契約の総数は405.8万回線(YoY+76.1%)なので、当面の予想としては、LINEユーザーの5%がLINEモバイルを利用開始するという見込みが楽観的なラインかと思います。
LINEの2015年の年間売上は、1207億円とのことなので、仮に5%のユーザー(200万ユーザー)がLINEモバイルを使い始める(=360億円/年の売上貢献をする)とすると割と大きいぞ、という気もします。
が、そんなに甘くないのがMVNOビジネスです。何がそんなに甘くないのか、というのを次回乞うご期待!
追記: 「LINEモバイルは儲かるのか(2) MVNOの1契約あたりの粗利は●円!」も出ましたので、是非ご覧ください。
参考までに、過去の「携帯キャリアのビジネスモデル」関連の記事をまだご覧になっていない方は是非ご覧ください。
・携帯キャリアの1ユーザーあたりの売上・利益いえますか?
・あなたにピッタリの携帯キャリアは? キャリアの差別化戦略を読み取る
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