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遂にソフトバンク・スプリントがT-mobileを買収できるようになりそうな件

色々な大統領令を発令して、世間を騒がしているトランプ政権ですが、通信業界にも大きなインパクトがある人事が発令されています。

本件は、日本の通信業界、特にソフトバンクにも大きな影響があると思われますが、日本ではあまり報道されていないようなので、少し詳しく見たいと思います。


米国連邦通信委員会(FCC)のトップが変更へ

今回のトランプ政権での人事発令は、米国連邦通信委員会(FCC)のトップを変更する、というものです。

アメリカでは政権が変わるたび、正確には政権与党が変わるたびに、FCCのトップが変更されるというのは珍しいことではありません。共和党政権になれば共和党の人がFCCのトップになり、民主党政権になれば民主党の人がFCCのトップになる、ということです。

FCCというのは、日本で言うところの総務省の中でも、通信放送に該当する規制を管轄する組織です。

FCCには5人のコミッショナーがいます。それぞれのコミッショナーは大統領によって選定されて、議会によって承認され、任期は5年です。

大統領はFCCのチェアマン(会長)を任命することができます。

5人のコミッショナーのうち、3人までは同じ政党に所属することができます。つまり共和党政権になった場合は、5人のうち3人が共和党のメンバーで占められるということになります。


新チェアマン: Ajit Pai(アジト・パイ)

今回新たにチェアマンとして選ばれたのはアジト・パイ氏です。


(一般論としての)民主党政権 vs 共和党政権

日本の感覚からすると分かりにくいのですが、アメリカでは、民主党政権党と共和党政権では規制に対する考え方が大きく異なります。

共和党政権の場合、できるだけ政府は規制を緩くして、市場メカニズムに任せられる部分は市場メカニズムに任せる、という所謂「小さな政府」を目指します。

一方で民主党政権の場合、逆にマイノリティや弱者を守るために「大きな政府」になりがちで、規制も厳しくなります。


以前ソフトバンクがT-mobileを買収しようとした際は...

ソフトバンクは、スプリント買収した直後にT-mobileを買収し、二社を統合させることでアメリカの二大キャリアであるVerizonとAT&Tに対抗しようと試みたことがありました。

ところは当時は民主党政権だったため、この統合計画はFCCによって認可されないであろうと読み、断念したという経緯があります。


孫社長のトランプ大統領訪問で潮目が変わった(かもしれない)

覚えている方も多いと思いますが、トランプ大統領が当選した直後に、孫社長がトランプ大統領を電撃訪問しました。

そこで孫社長は、アメリカに非常に大きな雇用を生み出す、という約束をして、メディアの前で笑顔で写真撮影に応じたわけですが、当然T-mobileの買収をしたい、という思いも強くあったことと思われます。

今回新しくチェアマンに選ばれたアジト氏は、共和党が標榜する「小さな政府」という政策を推し進めると言われています。

実際に、民主党政権時代に成立できなかったいくつかの大型買収に対する介入を弱め、売り手と買い手が合意できるのであれば買収を認める、という寛容な姿勢を見せています。


またT-mobileも、統合に前向きな姿勢を見せ始めています。

T-mobileのCEOからは、以下のような発言が出ています。

T-Mobile CEO says Sprint merger is ‘potential outcome’ under Trump

T-Mobile CEO: Sprint merger isn't off table

T-mobileからすれば、買収価格で折り合いがつくのであれば買収は不可能ではない、ということのようです。


マーケットからは悲観論も

一方でマーケットからは悲観的な見方も出ています。

Investors Need To Cool It on Sprint-T-Mobile Speculation, Analysts Say

The problem is that since initial rumors of a deal in 2013, T-Mobile has been gaining in value, while Sprint remains somewhat troubled and over-leveraged, according to analyst Craig Moffett at MoffettNathanson Research.

どういうことかというと、ソフトバンクがスプリント買収して以降、T-mobileは業績を大幅に改善してきているにも関わらず、スプリントの業績がT-mobileに比べて遅れているという指摘です。

つまり、T-mobileを買収するための資金を、ソフトバンク・スプリントが本当に捻出できるのか、という点がネックになるという分析です。


ソフトバンクが今T-mobileを買収するとしたらいくら必要なのか?

スプリントの株価は、ソフトバンクが買収した時点から下がったり上がったりしています。

一方でT-mobileの株価は、当時から比べて右肩上で上がり続けています。

執筆時点でのT-mobileの時価総額は、$51.44b(約5兆1,440億円)となっています

仮に20%のプレミアムをつけてT-mobileを買収すると、$60b(約6兆円)準備する必要があります。40%のプレミアムを付ける場合は$70b(約7兆円)となります。

ARM社の買収に3兆円超を費やしたソフトバンクですが、これだけの金額をどのように調達できるのか、不透明な部分もあります。しかしもし仮に資金調達さえできれば、現在のアメリカの通信業界の規制的には、ソフトバンクに非常に追い風になっている、ということだけは言えるでしょう。



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