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トヨタがコロナ禍でも利益率を高水準で維持できる理由とは?カンバン方式って何?

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私のYouTubeチャンネルでは、決算読み解き実況中継をしています。おかげさまでYouTubeの方も多くの方にご覧いただいているのですが、特に忙しいビジネスパーソンの方たちから「YouTube動画の内容を知りたいが、動画を見る時間が無い」というお声を多数いただいています。

この記事では、上の動画の内容をスクリーンショット付きで文字起こししてあります。動画を見る時間はないけれど、内容を短時間でおさらいしたいという方に最適です。


今回の決算の印象は?

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ーー(Risa)皆さんこんにちは。今回は、営業利益が5四半期ぶりに回復を見せた、トヨタ自動車の2021年度第3四半期の決算をシバタさんに解説して頂きます。

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ーートヨタ自動車の決算は、自動車販売の増加に加え、コスト削減も奏功して、営業利益は2兆円の大台を回復する見通しと発表しました。

ーー新型コロナウイルスの影響や、世界的な半導体不足により、生産や販売に大きな打撃を受ける企業も多い中、トヨタの底力を感じます。

ーーシバタさん、今回の決算の全体の印象を教えて下さい。

(シバタナオキ)上の画像の通り、今回の見通しとしては、前の年は2.4兆円くらいだったところが、2兆円くらいになりそうです。

左から順に、まず為替の影響でマイナスがありました。そして原価改善の努力。これは部品の仕入れをちゃんと絞ったということですね。

そして販売が減りました。更に、諸経費の増減・低減努力がプラスなので、経費削減をしたのでしょう。

ざっくり言うと、売上が4,750億円くらい減りそうなのです。

一方で、経費削減や原価改善をして、2,850億円分取り戻しました。為替やスワップなどの金融系の影響を除くと、−1,900億円に留まっています。

そのためものすごい経営努力をされているな、というのが一番の印象です。

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こちらは9ヶ月累計の販売台数を示したグラフです。2019年と2020年の4~12月を比べていますが、20%ほど減っているのが分かります。

日本は91.3%と、そこまで減ってはいないのですが、それ以外の地域では大きく減りました。北米は20%減、ヨーロッパはそこそこ持っている気はしますが、アジア、その他では33%ほど落ちています。

コロナの影響も当然あるので、かなりトップラインは厳しいですが、ボトムラインは経費削減などの努力でダメージを最小限に食い止めているのではないでしょうか。


トヨタがコロナ禍でも利益率を高水準で維持出来る理由

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ーートヨタの決算を見てまず驚いたのが、国内の他の企業と比べてもダントツに高い利益率です。

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ーーちなみにこちらがランキングです。追随するSUBARUと比べても、圧倒的な利益率なのが分かります。

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ーーまた、テスラの同時期決算を見ても、前期は9.2%と驚異的な数字でしたが、今期は5.4%で着地しています。

ーーコロナ禍でもトヨタが安定して高い営業利益率を出せている要因は何なのでしょうか。

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営業利益率が今回7.7%、前年同期比が8.9%で、10%に近い営業利益率が出るのは、自動車メーカーとしてはかなり高い数字です。

理由はいくつかあると思いますが、まず製造業系は大きくなると規模の経済が効いてくるので、利益率が高くなります。つまり、トヨタが世界で一番大きいので、一番利益率が高くなるのです。

そしてトヨタは結構面白い会社で、製造系が一番花形のキャリアなのです。製造系で改善できた人が偉くなる会社なんですね。

トヨタは歴史が長く、かなり興味深い仕組みが色々あります。 例えば「カンバン方式」という有名なやり方です。

これは、とにかく在庫の無駄を一切持たないという仕組みです。どういう仕組みか、ちょっと一緒に見てみましょう。

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通常、物を作るときは、上の画像のような流れです。前々工程の人が部品を作り、前工程の人に納めます。そして前工程の人がそれを組み立て、また部品にして後工程の人に渡すわけです。

このように、情報が下請けの人から上流の人に押し出されていくのが、基本的な物の流れなのです。とにかく材料があれば物を作って在庫を持つのが基本的な考え方と言えます。

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トヨタのカンバン方式はこれを真逆にしました。なぜ「カンバン」なのかというと、実際にカンバンというのを使うらしいのです。

後工程の人が、部品が足りなくなると、「この部品が無くなったので下さい」とカンバンを持って前工程の人の元へ行きます。

前工程の人はその部品を作って、カンバンの上に部品を乗せて後工程の人に持っていくらしいです。

そして前工程の人は、材料が足りなくなると自分のカンバンを持って前々工程の人の元へ行き、「これが無くなったので作って下さい」と作ってもらうそうです。

今はもちろんソフトウェアでやっていると思うのですが、昔はカンバンを使って情報をやり取りしていたのです。

つまりカンバン方式をやることで、皆が過剰に在庫を持たなくなります。要は、前工程の人は、後工程の人がカンバンを持ってきてくれないと、物を納められなくなるのです。

もちろん、短い期間の分の在庫は持っているはずです。しかし基本的に、後工程の人に1つ物を納めたら1つ作ればいいので、前工程の人は後工程の人の仕事の状況を見ながら、自分の製造計画を立てられる、というわけです。

このように、情報の流れを真逆にしたのがカンバン方式になります。 製造が花形の会社であるがゆえに、経営資源の使い方や仕組み化がすごいのです。

営業利益率が高いのも、このように無駄な在庫を持たなくしているからなのでしょう。

世界中のビジネススクールなどを見ても、トヨタが編み出した独自の製造の仕組みはケーススタディになるくらい、日本だけではなく世界中で使われています。

そのため、経営努力はボトムアップ、トップダウン両方ですが、きちんとオペレーションレベルで出来るのがトヨタの強みなのではないでしょうか。

ーー1個1個の部品の流れから作り方まで、トヨタの地道な努力が最終的に数字に表れている、ということなのですね。


トヨタが他社ブランドを製造するビジネスを行う可能性はあるのか?

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ーー車を製造することに関しては、トヨタは間違いなく世界トップクラスです。

ーー今年に入って、AppleがAppleカーを製造するために、電池や車両製造に関して、OEMに製造を打診している、とニュースがありました。

ーートヨタもこれから、自社の車両を海外のテクノロジー企業に卸す可能性は出てくるのでしょうか。

上の画像にも出ている通り、韓国のLGが、OEMでAppleのために車を作ってあげるということだと思いますが、こういったことはトヨタはやりたくないのではないでしょうか。

いくら製造技術が高くても、ブランディングとお客さんとの接点を取られてしまうので、トヨタとしては出来るだけやりたくないというのが本音でしょう。

そうは言っても、中長期的に見た場合、ソフトウェアの会社が自動車業界に入ってくると、既存の自動車メーカーは、Appleやテスラに対抗するクオリティのソフトウェアを作れないと、独自路線はどんどん厳しくなるはずです。

現時点では、今のLGのように、OEMで他社のために車を作ってあげる、とはなかなか言いにくいと思います。

しかし一方で、その機会を逃すことは、ソフトウェアの世界でいつかテスラやAppleと戦わなければいけなくなることの裏返しでもあります。その二者択一を迫られているのではないでしょうか。

ーーなるほど。ありがとうございます。


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