Q.国内初の宇宙ベンチャー上場へ。ispaceが切り開く宇宙ビジネスの3つの方向性とは?
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この記事はhikoさん(企画・リサーチ担当)との共同制作です。
2023年4月12日に、宇宙ビジネスを展開する株式会社ispaceが東証グロース市場に上場します。宇宙ビジネスを展開する企業としては国内初の上場になります。
宇宙ビジネスとはどのようなものなのか、事業概要やビジネスモデルなどを解説しながら、ispaceが展開する3つビジネスの方向性について迫っていきます。
ispace社の概要
まずispaceの企業概要について解説していきます。
ispaceは、月面探査車(ローバー)の開発及び世界初の民間月面探索レース「Google Lunar XPRIZE」への参加を目指し、2010年に設立されました。
「Expand our planet. Expand our future.」というビジョンを掲げ、人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界を目指し、民間での月面開発の事業化に取り組んでいます。
具体的には、超小型宇宙ロボティクスを軸に月面の水資源開発を先導しており、現在は日本初の民間主導での月面着陸を目指す「Mission1」が月に向かって飛行中です。
2017年~2018年に103.5億円(シリーズA)、2020年には35億円(シリーズB)、2021年には55.6億円(シリーズC)の資金調達を実施し、金融機関からも70億円近い融資を受けており、市場からの期待の高さが伺えます。
今回の上場スキーム
次に、今回の特殊な上場スキームについて解説していきます。
ispaceは直近のラウンドでは評価額が756億円でしたが、上場時の想定時価総額は196億円であり、大幅なダウンラウンド上場となる見通しです。
また、今回のispaceの上場は、「親引け(プリンシパル・アンダーライター)」という非常に珍しいスキームを活用している点が特徴的です。
親引けとは、証券会社が株券について発行者(ispace)の指定する販売先への一部売却を約束することを言います。一般的には金融機関がその販売先となり、企業の株式を一定期間保有することで、市場価格の安定化に貢献するという役割を果たします。具体的には、親引けは以下のような役割を担います。
今回のispaceの上場では、インキュベイトファンド(25億円)、三井住友信託(5億円)、アセマネOne(5億円)、リアルテックファンド(3億円)、CYG Fund(2億円)が販売先となり、オファリングサイズ70億円に対して、親引けだけで40億円の規模になります。
売上と研究開発費用
次に、ispaceの業績を見ていきます。
なんといっても(宇宙ビジネスらしい)特徴的な点は、売上に対して研究開発費が非常に大きいことです。2023年Q3(第3四半期)の時点で売上8.2億円に対して、R&Dには81.8億円も投入しています。
結果、2023年Q3時点で97億円の純損失、5億円の債務超過状態で、現預金は43億円となっています。
現状でもR&Dには相当なお金が入っていることがわかりますが、事業が軌道に乗るまでは今後も相当なR&D費用を投入する必要があると考えられます。
上場のタイミングと資金調達
前述のように、R&Dへの資金投入は今後も必要と考えられるため、いかに資金調達を行えるかはispaceのビジネスの成功を左右する大きな要素になるでしょう。
上場した理由は、その資金調達のためであると言えますが、分解すると以下の2つが考えられます。
1つ目は、未上場市場における調達の難易度が高くなり、相対的に資金調達をしやすいIPOによる調達を考えたためです。
2つ目は、グローバルオファリングを通して海外の機関投資家から調達するためです。しかし、上場決定後にSVBが破綻したため、調達難易度は上がったと思われます。
ispaceの上場予定日は4月12日です。これは、ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R ミッション1」で設定している10段階のマイルストーンの8段階目にあたるSuccess8(着陸準備ができていることを実証するフェーズ)の手前のタイミングであり、その後、月面着陸(Success9)が4月下旬に予定されています。
無事に月面着陸が成功すれば、ispaceのビジネスにとっては非常にポジティブであり、大きく株価が跳ね上がることも期待されています。
ここまで記事の前半では、ispaceの企業概要、IPOの概要、売上と研究開発費の比率について解説していきました。
記事の後半では、ispaceの収益源は何なのか、宇宙ビジネス市場にはどのような可能性が秘められているのか、解説していきます。
この記事は、宇宙ビジネスに携わる方や、ispaceを始めとした宇宙に携わるスタートアップ企業について知りたい方、宇宙ビジネスなど開拓の余地が大きい市場に関心がある方に最適な内容になっています。
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