Q. 急進する不動産DX、今後の成長戦略の3つの方向性とは?
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ヒント:今後の成長戦略は、各社の強みに関連しています。
この記事はゆべしさんとの共同制作です。
コロナの影響もあり、多くの業界で急速にDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいます。それは、アナログな業界と言われる不動産業界も例外ではありません。
不動産業界は金融業界と同じく規制産業のため、不動産を購入する際は、紙やハンコを用いた非常に煩雑な手続きが未だに行われています。しかし、最近では規制緩和の動きが進み、デジタル化やオンライン化が期待されるようになりました。
また、不動産業界の市場規模は非常に大きく、不動産中古売買市場は16.9兆円と言われており、そのような巨大市場をターゲットとする「不動産DX」は非常に注目されています。
今回は、そんな注目の不動産DXの主要プレーヤーに焦点を当て、記事の前半では、不動産業界の市場動向や決算内容を整理して各社の成長要因を分析し、後半では、今後の各社の成長戦略を見ていきます。
不動産マーケットのデジタル化の余地
株式会社ツクルバ 2021年7月期第3四半期決算説明資料(2021年6月14日)
株式会社Speee 2021年9月期第2四半期決算説明資料(2021年5月14日)
株式会社GA Technologies 2021年10月期第2四半期決算説明資料(2021年6月14日)
SRE Holdings株式会社 2021年3月期決算説明資料(2021年5月14日)
まずは不動産業界の動向を整理します。中古不動産売買のベースとなる住宅ストック数(建築されている既存の住宅)は毎年増加傾向で、それに伴い中古住宅の流通量も年々増加しています。
また、総務省の統計によると、国内の世帯数は右肩上がりで増加しています。不動産業界にとって、世帯数と住宅数の増加は、追い風と言えるでしょう。
次に、デジタル化の状況ですが、不動産業界は他の業界と比較して、デジタル成熟度やEC化率は共に低く、相対的にデジタル化が遅れていることが分かります。
一方で、不動産取引のオンライン化は進んでおり、賃貸領域では2022年5月までにデジタル改革関連法が施行される予定のため、不動産業界のデジタル化の加速が期待されます。
不動産DXに取り組む代表企業
ここで、不動産業界のDXに取り組んでいる上場企業と、展開する主要事業・サービスを簡単に見ていきましょう。
・リクルート(SUUMO)
・ツクルバ
・GA Technologies
・Speee
・SRE Holdings
リクルートのSUUMOは、日本全国の賃貸や売買、リフォーム等の不動産情報を提供する総合情報サイトで、利用経験がある方も多いでしょう。
ツクルバは、2011年創業で、リノベーション物件のマーケットプレイス「カウカモ」を運営する東証マザーズ上場企業です。
GA Technologiesは、2013年創業で、不動産テック総合ブランド「RENOSY」の運営を中心に、toCやtoB向けに多くの不動産テックサービスを運営する東証マザーズ上場企業です。
Speeeは、2007年創業で、デジタルマーケティングと不動産メディア事業を中心に展開しており、不動産一括査定サイト「イエウール」を運営するJASDAQ上場企業です。
SRE Holdingsは、2014年創業で、AI事業及び不動産事業を展開する東証一部上場企業です。当初はソニー不動産という名前だったことから分かるように、ソニーのグループ会社です。
次章からは、不動産DX各社の決算内容を比較し、各社の成長要因を紐解いていきます。
不動産DX各社の決算
上図は各社の売上と成長率をまとめたもので、SUUMOとSpeee、SRE Holdingsは2021年1-3月、ツクルバとGA Technologiesは2021年2-4月の決算情報を引用し、Speeeは不動産DX事業のみを抜粋しています。
まず、売上から見ていきます。SUUMOは328億円、GA Technologiesは248億円と極めて大きく、売上成長率(YoY)は、SRE Holdingsが+166.1%、Speeeが+69.1%、GA Technologiesが+68.0%と、急成長していることが分かります。
売上はビジネスモデルによって大きく差が出る為、営業利益も見ていきます。SUUMOは事業別の営業利益を公開していないため未記載、ツクルバは赤字のため営業利益成長率は算出していません。
GA Technologiesの営業利益は7.42億円、SRE Holdingsは6.79億円と規模が大きく、成長率はSRE Holdingsが+125.6%、GA Technologiesが+58.0%、Speeeが+26.7%です。
売上・営業利益共に、SRE Holdingsの急成長が目立ちますが、GA TechnologiesやSpeeeも大きく成長していることが分かります。
唯一、売上がマイナス成長で赤字のツクルバですが、実はGMV(流通総額)に注目すると、2021年2-4月は88.7億円で、YoY+102.3%と大幅に成長しています。
なぜ、不動産DX各社はこのような急成長ができたのでしょうか。次章からは、高い成長率を誇る不動産DX各社の成長要因を見ていきます。
ツクルバ:蓄積された会員のアクティブ化
ツクルバの成長要因は、蓄積された会員のアクティブ化です。
ツクルバの運営するカウカモは、中古住宅の売り手と買い手をマッチングするビジネスモデルで、売上はGMV(= 取引件数×取引単価)とテイクレートによって決まります。それぞれのKPIを順番に見ていきましょう。
まず、取引件数は2021年7月期2Qで166件と、過去最高を達成しました。
コロナの影響が現れ始めた2020年7月期2Qから、取引件数は伸び悩んでいたものの、会員MAUはその間も順調に増加傾向にありました。
そして、コロナの影響が比較的落ち着いてきた2021年7月期2Q頃から、これまで検討してきたユーザーが取引に移行したことで取引件数が増加してきていると考えられます。
一方、前述の通り売上は前年比でマイナス成長となっています。これは何故なのでしょうか?取引単価とテイクレートを計算してみると、その要因が見えてきます。
上図は、ツクルバの取引単価とテイクレートの推移を、GMV・取引件数・収益から算出してグラフ化したものです。
取引単価は、これまで4,000万円台が多かったところ、2021年7月期2Qで5,300万円超と、過去最高を達成しました。この単価の上昇は、サプライ不足(市場の在庫減少)が主な原因です。取引件数と取引単価が過去最高を達成したことで、GMVはYoY+102.3%と急成長しました。
一方、テイクレートは、これまでは4~6%を維持していましたが、2021年7月期2Qで3.50%と、大きく減少しています。
・テイクレート減少率(前四半期比):3.50% - 5.18% = -1.68pt
・2021年7月期3QのGMV:88.7億円
→テイクレートの減少による売上へのインパクト = 88.7億円 × -1.68pt = 約-1.5億円
このテイクレートの減少による売上へのインパクトは約-1.5億円です。仮に、前四半期のテイクレートを維持できたと仮定すると、2021年7月期3Qの売上は3.76億円+1.5億円=5.26億円(YoY+18.7%)となり、プラス成長したことになります。
このテイクレートの減少が、今後も継続するのか、一時的なものか、注視する必要がありそうです。
GA Technologies:ARPAの急拡大
GA Technologiesの成長要因は、ARPA(従業員一人あたりの売上)の急拡大です。
KPIを見ると、前四半期から新卒20名を含む33名の営業人員を増員し、オンライン化を進めたことで、成約数はYoY+61%、ARPAはYoY+63%と、大きく成長しています。
未経験人材を動員させても、これだけ驚異的な成果が出ていることから、追い風の市況感に加えて、顧客データの分析による見込み顧客への正確なアプローチ等、仕組み化や効率化がされている体制が整っていると思われます。
ここまで、不動産業界の市場動向や各社の業績、その成長要因を見てきました。記事の後半ではSpeeeとSRE Holdingsの成長要因に加えて、不動産DX各社の今後の成長戦略を見ていきます。
この記事は、不動産業界に従事している方や、DX関連のビジネスをされている方・ご興味のある方、企業の成長戦略に関心がある方に最適な内容になっています。
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