Q. 新規上場予定のクラウド会計freeeの顧客獲得コスト・回収期間は?
A.
課金ユーザー獲得コスト(CAC)は約11万円。
回収期間は約37ヶ月。
今日は、12月7日に東証マザーズへの上場を発表した、会計や人事労務ソフトサービスを展開しているfreeeのSaaSビジネスとしての詳細を見ていきたいと思います。
2019年6月期の1年間で見ると、売上は約45億円、経常損失は約28.5億円となっています。
2019年7月から9月の四半期で見ると、売上は約15億円、経常損失は約4.9億円となっており、まだ赤字が続いている状態です。
2018年6月期の年間売上が24億円でしたので、1年間で売上は約2倍に増えていることになります。赤字幅が前年同期の約34億円から約28億円へと減少してきていることもプラスの材料かもしれません。
株主名簿: SaaSスタートアップは希薄化しやすいと言うけれど...
SaaSビジネスは一般的に大量の資金調達が必要で、株式の希薄化(資金調達のために新たな株主から資金を調達することで発行株式数が増加し、1株の価値や権利が低下すること)が起こりやすいビジネスではありますが、freeeの場合はどうなっているのかを見てきたいと思います。
この株主名簿を見ると、上位にベンチャーキャピタルがたくさん並んでいることがお分かりいただけるかと思います。創業者社長の佐々木氏の持分は25%弱にとどまっています。
発行済の株式数合計の約1,370万株に対して、創業者や従業員が保有する普通株式が600万株なので約45%程度が創業者と従業員、残りの約55%にあたるA〜Eの優先株式をベンチャーキャピタルなどの外部投資家が保有していると考えて間違いないでしょう。
個人的な印象ですが、これまで多額の資金調達をしている割には希薄化が抑えられていて、普通株の割合が相当大きいなあというのが正直な感想です。
創業社長の持分は前述の通り25%と少ないように見えるかもしれませんが、その分他の取締役や従業員などにしっかりと株式が付与されているとも言えるのではないでしょうか。
中小企業向けSaaSという巨大な市場
freeeが提供しているのは中小企業向けの会計ソフトと人事労務ソフトで、市場規模は1.1兆円もあります。
加えてこの図の下部に記載されている通り、日本は今後生産年齢人口の減少と最低賃金の上昇など、マクロ環境の追い風が吹いていることもプラスなのではないでしょうか。
これからは各種ソフトウェアを上手に利用することで、各社共に間接的な人件費の削減を積極的に行っていくことは自明です。
さらに日本は特に先進国の中でもクラウド化の進展が遅いとされています。そういった意味でも成長ポテンシャルがまだまだ大きいといえるのが、この中小企業向けのSaaS市場だと言えるでしょう。
ユニークな企業価値
決算の詳細に入る前に、上場目論見書の中で非常にユニークな記述を見かけたので紹介しておきたいと思います。
企業文化という項目の中で「マジ価値2原則」、「マジ価値指針」と呼ばれる項目があり、とてもfreeeらしいユニークな項目だと思いました。
さて前置きが長くなりましたが、以下ではfreeeのSaaSビジネスとしての詳細を詳しく見ていきたいと思います。
この記事は、SaaSビジネスを担当されている方、継続課金に興味がある方、ベンチャーキャピタルでSaaSビジネスの評価をされている方、中小企業向けにサービスを提供されている方に最適な内容になっています。
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・KPI#1: ARR(年換算継続課金売上)
・KPI#2: 課金ユーザー数
・KPI#3: ARPU(1顧客あたりの売上)
・KPI#4: 解約率・ネットレベニューリテンションレート(NRR, Net Dollar Retention(NDR)とも言います。)
・KPI#5: マージン率
・KPI#6: 顧客獲得コスト(CAC)・回収期間
・KPIまとめ
・freeeの今後の展開を占う上で見逃せない●●
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