ヤフーのカードビジネスが抱える「時限爆弾」とその回避方法
以前かいた「ヤフーの「減益」は心配すべきことなのか?」の中で、
一見堅実に見えるカード事業ですが、実は、大きな「地雷」が潜んでいるのですが...これも長くなるのでニーズがあれば別記事にします。
と書きました。随分多くの方から「続き読みたい」というご要望をいただいたので書きます。
最初に申し上げておくと、今日の話は、会計の基本、特にバランスシート(貸借対照表)を読む力が(少し)必要です。バランスシートって何?という方は、特に後半が意味不明だと思いますので、まずはバランスシートの概要を理解してから、読まれることをオススメします。(バランスシート読めるのは、意外と重要なので、「そんなの勉強したことない!」という方はこれを期に勉強されることを強くオススメします。)
ちなみにワイジェイカードは、こんなイメージで、黒と赤のカードを提供しているようです。年会費は無料で、T-Pointとの連携がウリです。
(どうでもいい話ですが、ワイジェイカードって、名前分かりにくいですね。ヤフーカードとかにすればいいのに、と思うんですが、「ヤフー」の名前を入れると米ヤフーから何か言われるんでしょうか...)
急成長中のヤフーのクレジットカード事業
復習になりますが、ヤフーのクレジットカード事業の急成長っぷりを見ておきます。
クレジットカード事業は、積み上げ型のビジネスで、右肩上がりに会員数が増えています。年末時点で180万人。1年間で40万人(YoY +29%)増えています。1日に1000件強の増加というイメージですね。
楽天カードが1200万人なので、楽天カードの約15%程度の会員数という具合です。
取扱高も右肩上がりです。詳細数値がグラフからしか読めませんが、直近四半期で750億円くらいでしょうか。カード会員数がYoY+29%の増加であるにも関わらず、取扱高がYoY+62%と圧倒的に増えているのは、カード事業がショッピング事業と相性が良いことを如実にあらわしていると思います。
楽天カードは月4000億円とのことなので、取扱高ベースだと、楽天カードの6-10%程度、という具合と推測されます。
カード事業単体の売上等は開示されていませんので、売上や利益がどの程度なのかは知りようがありませんが、クレジットカード事業のビジネスモデルは割とシンプルなので、まずはビジネスモデルを簡単に。
クレジットカード事業のビジネスモデル
クレジットカード事業の稼ぎ方は大きくわけて3つあります。(実際にクレジットカード会社は、ローンをサービスとして提供していたりもしますのが、ここでは、ローン事業等を除いた純粋なクレジットカード事業のみを対象にします。)
一つ目は、店舗から徴収するショッピング手数料です。僕が1万円の買い物をすると、その1万円のX%を店舗から徴収します。実際には、Y%をカードブランド(Visa, Master, Amex, JCBなど)に支払うことになりますので、取扱高のX-Y%が粗利になります。
XとYは各会社や契約によって異なりますが、店舗に課金するパーセントXは、日本では3%〜くらいの場合が多いと思います。カードブランドへの支払いパーセントY%は取引ボリュームによって変わるのが一般的です。
例えば、僕が今日1万円の買い物をカードで支払うとするとします。店舗には、早い場合は数日以内に1万円からX%を除いた金額が振り込まれます。他方、僕のカード会社への支払いは、事前に定められた支払い期日になります。つまり、カード会社が購入者(僕)から資金を回収し、店舗に「先払い」している、そのためにX%を徴収する、というビジネスです。
二つ目は、カード利用者への所謂「分割払い」や「リボ払い」の手数料です。例えば、僕が本日5万円の買い物をしたとして、この5万円は、今月末が支払い日だとします。僕が「分割払い」や「リボ払い」を選択して、リボ払いを毎月5000円に設定していたとすると、今月末の時点で僕は45,000円分、カード会社に「借金」をしていることになります。この「借金」に対して、非常に高い金利(実質年利約15%)を取る、というのがこの「リボ払い」ビジネスです。
ワイジェイカードのウェブサイトにあるこの図が分かりやすいのので、掲載しておきます。
この「リボ払い」分は、短期とはいえ、金利が実質年利約15%と非常に高いので、凄まじく儲かります。合法的に15%の年利でお金を貸せるビジネスなのです。
三つ目は、所謂キャッシングです。クレジットカードには、多くの場合、キャッシングの枠が定められていて、その枠の範囲内で、現金が引き出せます。支払日までにその現金を支払えない場合、リボと同様に、非常に高い金利が課されます。
以上のように、クレジットカードビジネスは、カード利用者にお金を「貸す」ことで稼ぐビジネスです。
(もちろん、それに付帯するサービスが店舗側、利用者側に複数あるので、それらを除いて非常に単純化して話をしていることを予めお断りします。例えば、利用者から年会費を取ったり、店舗に月額利用料を課したり、など。)
少し余談になりますが、お金を「貸す」ビジネスである以上、貸したお金を回収できない(あるいは回収にコストがかかる)というリスクが存在します。つまり、お金を返せない人に貸したたら大変なことになる、ということですね。
ヤフーなどのネット企業の場合、クレジットカードを申し込むユーザーのことを事前に良く理解していれば、そのリスクが下げられる、と良く言われています。例えば、(ここは完全に想像の世界ですが)ヤフーショッピングで頻繁に購入するユーザーは、貸し倒れのリスクが小さいだろう、あるいは、ヤフーニュースでいつも競馬・パチンコの記事ばかり見ている人は、貸し倒れリスクが少しあるかもしれない、というように、クレジットカードの限度額を設定する前にある程度「貸し倒れリスク」が見積もれる、と思われます。
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