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Web3のトレンド、最新の波を知るためには? シバタナオキ×コムギ×オバラ (対談書き起こし・前編)

オバラさん(以下、敬称略):9時から「Web3のトレンド、最新の波を知るためには?」ということで、シバタナオキさんとコムギさんの3名でおしゃべりをしていきたいと思っています。皆さん、聞いてくださっている方、ありがとうございます。というわけで、今日はノリで集まっていただいてありがとうございます。

コムギさん(以下、敬称略):子どもの日にね。

オバラ:子どもの日に子どものように未来を語ろうということで。

コムギ:間違いない。

オバラ:はい。しかも5月4日は「May the Force be with you」ですので、フォースの力を信じて子どものように未来を語るには良い日なのかなということで、ありがとうございます。シバタさんは、ベイエリア、サンフランシスコは今、何時ですか?

シバタ:今、朝の5時です。

オバラ:ありがとうございます、本当にもう。

シバタ:すみません。

オバラ:全然、全然。最近ね、もうご多分に漏れず、インターネットが昔から大好きな人たちはWeb3に興奮していて、シバタさんが國光さんと行ったWeb3の対談が本当に素晴らしかったので、「僕ともやりませんか」というお声掛けに乗っていただいてありがとうございます。

シバタ:いえいえ。こちらこそありがとうございます。

オバラ:そして、コムギさんも無理やりいつも来ていただいちゃって。

コムギ:(笑)いえ、僕は非常に楽しみにしていました。ありがとうございます。


なぜ今web3がトレンドなのか?

オバラ:というわけで、始めていきたいわけですけれども、さっき言ったように、Twitterスペースの方々、Twitterスペースの上に貼ってある#Web3DBのハッシュタグでツイートしていただければ、僕のほうで質問を適宜拾っていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。というわけで、最近、シバタさん的にはなぜWeb3が来ているんですか?

シバタ:いや、Web3が来ているというよりも、もともとこれはCryptoや暗号通貨があったじゃないですか。

オバラ:そうですよね。

シバタ:僕も結構、投資として暗号通貨を買ったり以前もしたりしていて、かなりいろいろな俗説があり、特に数年前にICOがあったときに怪しいものという感じになったじゃないですか。

オバラ:なりましたね。

シバタ:はい。そのタイミングでやはり結構アメリカの人たちは危ないなという見方でしたが、最近変わってきているなというか、やはりシリコンバレーのベンチャーキャピタルはWeb3という言葉を使ってかなり、コムギさんの言葉を借りると、乗り遅れていた人たちが、何て言うんですかね。

コムギ:キャッチアップ。

シバタ:キャッチアップというか、遅れてきた分、新しいところにガンガン投資をするということをやり始めていて、何なのかなっていうのを見るようになったというのが大きいですね。

そうこうしているうちに、通貨だけではなくて、最近はDAOといったプロジェクトや働き方のところで新しいものが出てきているじゃないですか。そういうのはすごく面白いなと思って見ていますという感じですかね。

オバラ:そうですよね。だから、正直やはり僕もそうですし、Joiさんを始めいろいろな人も去年の夏ぐらいまでは正直どちらだろうと、もともとブロックチェーンの下側にある技術だったり、スマートコントラクトだったり、Web3自体は長期的に見れば必ずインターネットを変えていく素晴らしいプロトコルですけれども、とは言えプロトコルだからうまくいくのに時間がかかるよねという感覚でした。

それがちょうどコロナで、僕らにリモートやその先にあるメタバースといったものが5年~6年前倒しで起こったように、去年ぐらいから急激に、シバタさんがおっしゃるように、シリコンバレー、ベイエリアの方々が多くの資金を投入するようになって加速しているといった感覚ですよね。

シバタ:そうですね。

オバラ:コムギさん的にはいつぐらいから、どういう感覚でWeb3をやられているんですか。

コムギ:もともとまず大前提として、私が本の編集者をしていたときに、人生を変えた人が2人いると思っていて、その1人が先ほどお名前が挙がったJoiさん、伊藤穰一さんと、もう1人は尾原和啓さんという人なんですね。この2人からの影響が大きくて、まず働き方といったものをどこでも働けるとか、本当に自分としてはどうするか、そういうことを教えていただいたのが尾原さんです。

インターネットの神髄のようなものをひたすら教えを請いていたんですけれども、「インターネットの次に来るテクノロジーって何だ」というのをたぶん尾原さんとずっと本をつくりながら考えていたような気がしていて、そこで出会ったのがJoiさんの本をつくったときに出会ったブロックチェーンという技術だと思っています。

ブロックチェーンという技術を見た瞬間に「これは世界を変えるな」といったことを感じたという、それは1つ、尾原さんがいつも言っている「ネットワークエフェクト」というのに通じる、ブロックチェーンの持っているこのエフェクトの限りなさと言ったら変ですが、本当にすごいなと思ったというところで、もともとは通貨として使われるという前提でビットコインができたというところがあったと思います。もともと通貨自体がネットワークですので、そのネットワークが入れ替わるってこれほど大きな社会的なインパクトはないなと思って、もうこちらしかないと思ってこちらの世界に来ているというようなところです。

オバラさんがご存じの通り、暗号資産メディアが日本に来るときにも僕が編集長をやりまして、その後、今はVCでWeb3リサーチャーをしているというのが流れですので、最初から最後まで、こちらの世界が絶対何か大きな変革を起こすということは一度も疑ったことはないというところです。

オバラ:そうですよね。だから、時間間隔の差はあれ、自律分散型としてインターネットが再編されてくるという話でしたので、やはり自律分散の過程の中で1つ1つの要素というものがダイナミックにスマートコントラクトでプログラミングされながら自律制御で動いていきますよということだったり、そこの制御というところの1つのファクターとしてトークンがあったり、トークンをも含めながら組織全体の意思決定としてガバナンスというものをどう捉え直していくかといった流れがあります。

でも、このタイトルにあるように、さすがに変化の幅が速過ぎて、なかなか見えにくくもなっているのかなと思います。コムギさん的にはどうですか。ずっと前に立ち上げ編集長もしていたわけじゃないですか。

コムギ:(笑)一応、具体的にいろいろなデータがあって面白い。最近だとX-to-Earnが来ているといった感じですよね。Play-to-Earnだけではなかった。STEPNというのはなるほどねという感じで結構流行っていて面白いです。

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基本的に原理的なところはあまり変わってないと思います。つまり、トークノミクスの仕組み自体は別に変わっていない。Axie InfinityのPlay-to-Earnを置き換えた部分は、STEPNではMove-to-Earnだったりするので、それで同時にいろいろなものが立ち上がっているところです。別に仕組みそのものは構造的に見れば変わってないと思うので、そんなにブレないじゃないですけれども。それが適用できるか、トークノミクスが回るかどうかという話だけだったりするので、意外といろいろな情報はありますが、立ち戻って原理的なところで見ると、そんなに惑わされない感じはするかなというのがリサーチャー目線で思うことですかね、

オバラ:シバタさんは、その辺どうですか? この変化の速さのところを、シバタさんはどう捉えていらっしゃいますか。

シバタ:はい。変化のところは、アメリカから見ていて思うのは、やはりアメリカがこうしてWeb3に本格侵入してくると、アメリカの海外戦略そのものにも見えるんですよ。

オバラ:そうですね。

シバタ:特に新興国などのまだ法整備やインフラがしっかりしていないところに、主に金融系ですね、DeFi系のサービスでガガガっといってレンダリングをしたりするわけですね。この間、國光さんとも話しましたが、そういうWeb3系のサービスというのはかなり厳密にアメリカからは利用できなくなっていたりするんですよ。どういうことかと言うと、アメリカや先進国の法律でいくと違法ですが、新興国でまだ法律がない、あるいは緩いところでは合法だから、そういうところの人に向けてサービスを提供してしまって、そのマーケットが異常に大きいので、それで法整備ができる前にインフラができてしまうといったことが結構ありまして、特に金融系のサービスだと起こっていたりします。

オバラ:そうですね。

シバタ:そういうのはかなり面白いというか、強烈だなと思って見ています。

オバラ:そうですね。だから、アメリカのほうのコインリストで見ると見えないんだけれども、実は世界ではもう動いてしまっていますといった話は結構ありますもんね。

シバタ:そうですね。ありますね。そういう話が1つと、あとはやはりDAOというか、いわゆるWeb3のプロジェクトは世界中どこにいても、極端な話、匿名でも参加できて優秀なエンジニアがたくさん集まっている世界がありますよね。本当に自律分散型で、ある意味、今までの大企業の在り方とは真逆の組織運営がされていて、しかもものすごく効率が良くてすごいスピードで進んでいく世界があって、すごく厳しい世界だとも思うんですよね。

一方で、完全実力主義ですし、過去の履歴書はあまり関係なかったりしますよね。本当に今自分ができる実力でしか評価されないところもあります。そういう世界がこれからどのぐらい社会にちゃんと入ってくるのかというのは、個人的にはすごく興味がありますよね。

オバラ:そうですよね。まさにコムギさんも偽名経済、そしてWeb3だけにおけるプレゼンシャルオファー、信用の持ち方というところを再構築していっていらっしゃるわけですもんね。

コムギ:はい。おっしゃる通りですね。結構、そうですね、シバタさんの前回の國光さんとの対談は聞いておりまして、やはり国家との向き合い方のところはすごく面白く聞いていたところはありました。

もともとWeb3をやりたい人たちは、国家からどういうふうに脱しようかということを考えている人たちです。例えば、以前いたのは米国ニューヨーク発のWebメディアでしたが、そこにいた人がWeb3のプロジェクトに参加しているんですけれども、結構、世界各国を転々としていて、それこそ國光さんが話していたように、やれ今、シンガポールだ、ポルトガルだってどんどん移動しながらプロジェクトを進めている感じです。それは結局、税金との向き合い方ではないですけれども、Cryptoを持っているというところの向き合い方だったりすると思うんですね。ですので、あまり国自体をそもそも信じている人が少ないという感じは思いますかね。

オバラ:そうですね。だから、そもそもDAOの良いところは、雇用契約ではなく、Bounty Boardと呼ばれるような、実際、仕事をしたらこれだけの報酬を提供するよというやり取りの仕方だったり、もちろんDAOによっては固定給を発生させているDAOもたくさんあるので、そこも含めていわゆるC-Corp、通常人が会社の運営の雇用契約にとらわれない、もう仕事ベースでどこの国にいても動けます。

そもそもがWeb3のベースというのはIDからウォレットに自分たちの中心が移るから、ウォレットがあればそこにお金のやり取りを含めたトランザクションというものが確実に発生し得るので、国をまたいだものになるし、会社の再構築、株式会社の再定義といったことにもどんどんなっていくと思います。

コムギ:もう本当におっしゃる通りです。結構NFTを買われる方々は円換算であまり見ていないですよね。これは0.1ethからとか、Ethereumで物事を換算し始めていると、これは日本だけの話ではなくて、たぶんグローバルにそうなっていることでして。

オバラ:むしろグローバルのほうがそうではないですか。

コムギ:はい、そうです。

オバラ:最近は、だってこの国は放っておくと円の価値はどんどん落ちていきますから。

コムギ:そうそう。そうなんですよ。

オバラ:最近はEthereumのほうがボラティリティが低いんですよね。

コムギ:いや、本当にそれは面白いと思います。そういう意味では結構もうグローバル通貨は誕生しているじゃないですか。

オバラ:はい。

コムギ:国関係なく、その通貨の単位でみんな計算しているということ自体が、かつてFacebook、メタが夢見たデジタル通貨「Libra」の世界観そのものがもう実現してしまっているんじゃないかというところが一つ。あと、オバラさんがおっしゃっているところで一番大事だなと思ったのは、雇用契約や業務委託といったものがスマートコントラクト、プログラムでほぼ制御できるというところです。

これはNFTもそうですよね。所有している、していないところについては別に法的な根拠がないにもかかわらず、スマートコントラクトというか、プログラムがそれを保証してくれます。これはビットコインも全部そうなんですけれども、結局、法律に代わってプログラムというものが社会のアーキテクチャーを動かしているということ自体がやはり面白いというところだと思っています。ほとんど国を信用する必要がなく、プログラムを信用していればいい、ブロックチェーンの技術を信用しているというような人たちが誕生していること自体が、全体として起こっていることが面白いという感じですかね。

オバラ:はい。シバタさん、西海岸のほうではどうですか。


web3的な働き方とは?

シバタ:そうですね。アメリカに住んでいる立場としては、国を信用していないというのはもちろんなくはないですが、やはり最後、税金のところでアメリカはたぶんかなり厳密にCrypto系の資産や取引を捕捉しようとしているので、そこに関してはもう逃げられないというか。いくら匿名だとはいえ、たぶん僕もそうですけれども、Crypto系のトランザクションや収益についてはかなり正確に税務署、IRSに対して報告をしていますし、せざるを得ないと思っています。ですので、国がどうこうというのはアメリカにいる身としてはあまり感じないですね。最近、面白い話がいくつか出てきていて、世の中は今、フルリモートになっていますよね。

オバラ:はい。

シバタ:この間聞いたのは、会社名を出していいか分からないんですけれども、たぶん有名な会社だからいいと思いますが、ある人がMicrosoftとFacebook、両方ともフルタイムという前提でフルリモートで従業員をしていますと。

オバラ:なるほどね。(笑)

シバタ:要するに、work from homeだからできてしまうわけですよ。どちらかの仕事が今のところ超楽だから10時間ぐらい仕事をすれば良くて、もう一方の仕事は普通に40時間/週働かないときついぐらいの仕事らしいです。だから、週に50~55時間ぐらい働くと、2社分の給料がもらえると。

オバラ:給料をもらえるという話ですよね。

シバタ:はい。確か、エンジニアで合わせて800Kぐらいだと言っていました。

オバラ:なるほどね。

シバタ:800Kですので、今の為替だと1億円超えますからね。

オバラ:もう1億円超えてしまいますもんね。

シバタ:はい。それぐらいの給料をもらっていて、フルリモートですから、要はミーティングさえぶつからなかったら分からないという、そういうことが起こっているわけですよ。でも、こういうことはたぶんWeb3の世界だと、みんな当たり前にしていますよね。

オバラ:(笑)している。そうだと思います。

シバタ:そういう話がやはりありますので、どういうふうにこれからみんな、特に仕事ができるほうの人たちが働くのかなというのが個人的に興味があります。それから、今、円安になっているじゃないですか。僕は日本にいないからあまり分からないですけれども、円安になってくると、基本的に外資系の人のほうが圧倒的に給料が上がるわけです。

オバラ:そうですね。

シバタ:あるいは円以外で稼げる人のほうが強いわけですよね。

オバラ:はい。

シバタ:日本人から見たときに、例えばアメリカやシンガポールの会社で働いて、そちらの基準で給料をもらうのと、Web3のプロジェクトに入って、先ほどおっしゃっていたようにEthereumでもらうのと、どちらがより現実的に可能なのかなというのは少し興味がありますけれども。

コムギ:そうですよね。


web3プロジェクトへの参加方法と注意点

オバラ:しかも、なんとなく皆さん、Web3と言うと、Solidityといった複雑なWeb3言語を使う技術者だけの話ですよねというふうに勘違いしがちなんですけれども、実は、例えばRabbitHoleなど、Web3上での仕事のダッシュボードといったところを見にいっていただくと分かるんですけれども、結構やはりWeb3ってそこに集ってくれる人の熱量が大事だから、やはり分かりやすい解説記事を書きましょうとか、オンボーディング、Web3のコミュニティに入っていくためのナビゲーションをしましょうとか、結構実は人間力や記事力といったものを必要とするようなタスクも多いです。

ですから、実はそちらのベースでしてしまえば全然貢献できるものだし、ましてや、Play-to-Earnのようにゲームをすること自体が場の価値に貢献するということで貢献するやり方もあれば、正直、Axie Infinityはアンインテンショナル・ポンジ・スキームですのであまり挙げたくはないのですが、Play-to-Earnをする人たちに対して最初のスカラーシップのようなかたちで最初にペットを買うためのお金を提供しますよというような貢献の仕方もありますし、そういったものが国をまたぎながら動くわけですからね。

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コムギ:すごく良いテーマだと思いました。シバタさんがおっしゃった超実力主義のような側面は議論になるなと思っているところで、結局、DAOへのContribute-to-Earnだとしたら、Earnできるのはガバナンストークンをもらえるのは一部の優秀な人たちだけではないかという考えがある。その一方で、オバラさんがおっしゃったようにX-to-Earnの考え方というのは、Playしているだけ、MoveしているだけでEarnできると。この仕組みは結構、相反する在り方だと思っているんですよ。

あるプロフェッショナルが集まるDAOがあったとしたら、そこはもう超絶超優秀な、それこそ旧GAFAを超えるような少数精鋭によって成り立つ、ものすごいDAOができている。一方でX-to-Earn経済圏のようなものが両立するという、そんな世界観が広がっていて、これはどちらに転ぶんだろうなってすごい今考えているところですね。まさにシバタさんとオバラさんがおっしゃったところがちょうどリサーチャー的にも熱いなと思っているところですね。

オバラ:シバタさん、その辺2階層化についてはどうですか。

シバタ:そうですね。これは、スタートアップでストックオプションをどういうふうに配るかという話にかなり近いと思うんですよ。貢献度の大きさに応じてトークンをもらうべきだという話だと思いますし、ユーザーとして参加してX-to-Earnをするという話はもちろん十分あると思いますが、DAOに参加をして、そこできちんとガバナンストークンというか、ガバナンスのボートがあってもなくてもいいと思いますが、トークンとして報酬をもらうという働き方がどのぐらい普及するのかというのは個人的にはすごく見たいと思いますし、自分でももっとしてみたいと思います。難しいところではあると思いますが、ただ、すごく面白いというか、いろいろなことが起こり得るんじゃないかなと僕は思います。

オバラ:個人的に一番気を付けないといけないのは、やはり、先ほどアンインテンショナル・ポンジ・スキームという言い方をしましたけれども、運営する側が意図をしているしていないにかかわらず、新しいユーザーが入り込み続けないと場の価値が高まらないという構造になっているX-to-Earnは、最終的にはユーザーの増加が止まった瞬間に最初に逃げ出した人が勝つというものになって、最後は配給原資がなくなってポンジ・スキームのように「実質詐欺じゃない?」というふうに言われてしまうリスクがあります。もちろん、Axie Infinityは1人1人が複数の卵を持ち続けたいと思うようにゲームとして設計はされているんだけれども、やはりそこがまだ稚拙だったから、ユーザーの増加が止まった途端に逆回転をし始めて、今やピーク時の1/3以下、1/4ぐらいですか。

コムギ:でも、そこはユーザーの人は信じている可能性がありますよね。

オバラ:はい。結局、STEPNも今、Walk-to-Earnと言っていますが、あれも結局、配給原資は今のところユーザーが増え続けているところですので、あれもアンインテンショナル・ポンジ・スキームになりかねないので。

コムギ:そういうところをどう解決できるかというところを、たぶん今、本当にそこのプロジェクトをしている人たちは考えている段階だと思います。

オバラ:そうです。だから、本来的には中にいる人たちが耕し続けて、中にいる人たちの中でやはり新しい経済圏が生まれ続けて、新規流入による価値の増大以外よりも中にいる人たちの中の活動によって価値が生み続けられるということが上がると持続的なものになるので。それがゲームにおいては、例えば分かりやすい話では、僕らはお金を払っているわけでもお金をもらっているわけでもなくても、ロトの剣と言われると何か燃えるものがあって、ロトの剣を持ち続けるためにアイコンにお金を払い続けるという人たちもいるわけです。

コムギ:おっしゃる通りですね。そこはすごい大事だなと思うところです。ロトの剣はやはり自分自身が保有しているということだけでは物足りなくて、Twitterのアイコン、プロフィールピクチャーをNFTにする人たちがこれだけたくさんいるということと同じで、ロトの剣ってやはりどこかで、ゲームの中なのか、それとももっとソーシャルな場なのか、そこで自慢し合いたいということがあるわけですね。

そのため、そこのソーシャル的な仕組みが用意されていない、間に合っていないところ、もちろんSTEPNの運営も、SocialFiというのをホワイトペーパーで書いていて、そこについてはこういうふうにしていきますというのは書いてあるのですが、その開発が追いつかないほど一気にミームになって、トレンドが一気に来てしまって、Axie Infinityの次はSTEPNだということになって焼き畑っぽくなってしまっているというのが現状ということですよね。

オバラ:そうなんですよね。だから、その辺が少し個人的には、Web3のトレンドが速過ぎることによる弊害というところが結構そろそろ表に出ている感覚でもあるんですけれども。

コムギ:そうですね。やはり複数のX-to-Earnプロジェクトがあったほうが、そこら辺が分散的に機能するだろうというところです。結局、一気に人口増加するのは、日本に移民がたくさん入ってきたら経済が壊れるという議論と同じような感じですよね。そこの人口をどのようにゆっくりと進めるのかじゃないですけれども、今は一人っ子政策で少し抑制しなければいけない等、いろいろなことを考えなければいけないところが、たぶん普通の株式会社とまったく違う世界が広がっている感じというのがすごく僕にとっては面白いという感じですね。

オバラ:そうですね。だから、今、一人っ子政策のようなことを奇しくもおっしゃられましたけれども、例えばEthereumはマクロで流れる通貨の量を減少させるということをアルゴリズムの中でしているから価値のコントロールが効きますという話だったり、ビットコインに関しては採掘競争環境激化を前提としながらマイニングの難易度をコントロールすることによって、結果的として経済帯域の中に流れる通貨の流通量をコントロールすることによって価値をしっかり上げ続けるということがマーケットデザインとして仕組まれているわけですよね。

それが今、Web3、DAOになってくると、通貨としてのデザインというよりかは、そこに結局、歩くことが楽しいというふうに靴をコレクタブルしたいのか、Axie Infinityであれば卵からモンスターをかえして、その中でモンスターをいくつも保持したいのかという、やはりコレクタブルにしていくための価値の源泉といったところが経済におけるベースになってしまっているので、そうするとそこのコントロールを含めてNFT側からのぼっていく場合はまだまだ発展途上であると同時に、いろいろな社会実験が行なわれていっているので、そこから見えるものも多いのかなとは思います。

でも、どちらかと言うとシバタさんは、今はNFT的な話が多かったのですが、Web3もいろいろ今、シバタさんがまとめてくださっていますけれども、どういう軸で見ていくケースが多いですか。


web2以前の世界とweb3がどのように融合していくのか?

シバタ:NFTの話がありつつ、やはりこれは個人的な好みなのかもしれませんが、DAOのところ、DAOももちろんNFTに絡んでくるものはたくさんあると思いますが、新しい特徴的な組織、働き方、サービスのようなところや、あとはDeFi系ですよね、金融系のところで、これはただ、どちらかと言うと先ほど申し上げたように、海外向けというか、先進国向けではなくて発展途上国向けのものが多いのですが、でも、その中でもいくつか面白いものがあるのかなというところを見ていたりしますね。

NFTそのものはもちろんすごく面白いと思うんですけれども、やはりDAOとしてどういうDAOがこれからいくのかなと、ほかにもWeb3と今のほかの既存のWeb2の世界の中間点になるようなプロジェクトはもっとないのかなと思ったりしながら見ています。

オバラ:中間点?

シバタ:はい。何となくやはりWeb3の世界って、あまりにもWeb2の世界と離れ過ぎていて、例えば普通の人がEthereumで報酬をもらっても困るわけじゃないですか。

オバラ:はいはい。

シバタ:この間また別の会社で問題になっていたんですけれども、その会社はWeb3の会社で、いろいろなほかのWeb3のサービスを使うときに結構サービス料をトークンで払っているらしいんですよ。ある会社にはトークンAで払い、次の別の会社にはトークンBで払いという感じで払っていると、トークンの値段ってものすごい変わるじゃないですか。

オバラ:そうですね。

シバタ:そうすると、会社のバランスシートが乱れてしまう。どこかのトークンが例えば100倍になった瞬間に自分の会社が破産する、要は払えなくなってしまうわけですね。そういうことが起こったりしていて、そういう世界ってあまり、僕ら、多くの人にとっては現実的ではありませんよね。

オバラ:はい。

シバタ:ですので、その辺についてもう少し多くの人がWeb3っぽい世界に入れるようにするには何かいい方法はないのかなと思ったりして見ています。今のところは良い答えはないのですが。

オバラ:そうですよね。だから、やはり結構いろいろなDAOが、ドルのようにある程度ステーブルな通貨とペグをしたものをレピュテーショントークン的なかたちで使って、ガバナンストークンは配り過ぎると、広め過ぎるとやはり統治が面倒くさくなるので、それとは別でしていたりするケースが結構出てきたり、いろいろなのを見ていますよね。そういう中で、逆に言えば基軸通貨としてのEthereumやビットコインというものは逆に価値が増すのかなというところはありますよね。

シバタ:はい、そうですね。

オバラ:そういう中間系っていろいろありそうですよね。

シバタ:中間系はいろいろあると思うんですよね。

オバラ:この辺はどうですか、コムギさん。

コムギ:そうですね。結構むずかしいなと思って聞いていたのですが、Axie Infinityにしても開発する会社、ディベロッパーはSky Mavisという別の株式会社ですけれども、そちらは大きな意味でAxie Infinityという経済圏の一プレイヤーなわけですよね。この全体の経済圏としてはたぶんDAOというふうに呼ばれているような、それこそプレイヤーもいれば、何々もいればという感じだと思いますが、株式会社としてどうあるべきか、そこのたぶん配当を受けるじゃないですけれども、ガバナンストークンのこのパーセンテージを受けるというかたちにしているという意味で言うと、株式会社でDAOを運営するというのは無理ゲーなのかなというのを見ていて思う感じですね。

たぶんそこ自体が中央集権的にデザインされているということ自体が問題ではないのかなということを今聞いていて思ってしまうので、Web2とWeb3の間というのは仕組み、考え方、価値観がだいぶ違いますので、在り方として、株式会社としてはディベロッパーという立場でこのDAOの一プレイヤーとして入るというのが今のところ最適解なのかなと思います。言っていること、全然違います?

オバラ:いえいえ。結局、今の話を聞いていて、分けていかなければいけないのが、サービスDAOとプロダクトDAO、ソーシャルDAO、インベストDAO等の混在があって、やはりプロダクトDAOって本質的に開発をし続けるということをDAOそのものに分散させながら行っていきます。そうすると、やはりそこでのお金のやり取りというものを何らかのトークンに依存するとそのトークンのボラティリティ、変動性の高さで振り回されるということが生まれるのに対して、今のAxie Infinityの話だと、どちらかと言うと開発そのものは別にDAO的にしていなくて、むしろ単純につくられたものの上での場の価値を高めていくことを含めてPlay-to-ContributeというものとPlay-to-Earnというものの境界線がなめらかになっていくというような考え方でしているときのインセンティブ体制で、誰かがつくってくれた開発されたものの上で設計されたインセンティブの中で動いていく人たちの構造と、そもそもプラットフォームそのものを開発し続けるためのインセンティブの構造って少し違うので。

シバタ:確かに、それはそうですね。

コムギ:プラットフォームというのは何を指していますか。

オバラ:だから、例えばプロダクトDAOで言えばIndex Coopなんて分かりやすいですけれども、要は自分たちのDAOそのもののものをディベロップしているわけじゃないですか。

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コムギ:はい。

オバラ:そのディベロップしている人たちがDAOのメンバーになって、その開発するための給料をトークンでお支払いしますというケースですよね。それに対してAxie Infinityは、どちらかと言うと、もうゲームの開発は中央集権で行っています。

コムギ:オーケーです。Index Coopが例だということが分かれば理解できました。なるほど。そうですね。既存の法律の枠組みに適用すれば、当然たぶんフリクションはあるし、制度は整っていないし、いろいろたぶん問題があるんだろうなというのはすごく分かる感じがしますね。実際はその通りだなという感想になってしまいますね。

オバラ:だから、わりと最近はプロダクトの開発そのものを自律分散にしていったところってやはりいろいろな歪みが出てきてしまって、ある程度固定給で払いますよという事例もたくさん出てきています。ないしは、もう完全に開発は中央集権で行って、マーケットプレイスなのか、ゲームなのか、開発されたものの上で動く方々に対してインセンティブというものをPlay-to-Earnだったり、場合によってはコミュニティの中に巻き込んでくれたことに対して報酬を払いますというバウンティボードだったり、そういうもののほうが伸びているのかなという気もします。

コムギ:そうですね。トークノミクスの設計の1年目って、最初は中央集権的に行っていたのを徐々にDAOに参加していきますよというようなトークノミクス設計の仕方というのがわりと主流と言えば主流ですもんね。

オバラ:そうそう。

コムギ:そうなんですよね。結局、本当に開発するとなると分散的にすることの限界が当然あったりするので、ずっと開発し続けないといけないものと、そもそも開発して1回プログラムを置いてしまえば回るようなDeFiのような仕組みと少し違うところがあるよなというのは、おっしゃる通りかなと思います。

オバラ:そうですよね。

シバタ:そうですね。たぶんDAOのメンバーに支払う報酬というのも結構いろいろな課題があると思っていて、僕らが普段ニュースで見るようなDAOやNFTのプロジェクトはだいたい成功しているものですので、どれだけ値段が上がりましたというニュースを見ますよね。でも、その陰にはたぶんそれの100倍ぐらいたくさんのまったくうまくいかないDAOのプロジェクトというのがあると思います。

例えば、その人たちが「自分たちのコインで報酬を払います」と言っても、コインの価値がつかないので、あるいはものすごく安いので、「いや、そうではなくて報酬は法定通貨でください」という話になる場合って結構あると思うんですよね。ですので、やはりコインで報酬を払うというのは、ストックオプション的な考え方なのかなという気はしています。現実的にDAOのメンバーが生活していかなければいけないことを考えると、やはりベース給料は法定通貨であった上にトークンでアップサイドが乗るという報酬設計のほうが現実的かなとは個人的には思いますね。

コムギ:なるほど。そうですね。Web3のプロジェクトで働いている方々っていろいろな方々がいるような気がしますね。結構、本当にパーパスドリブンで、このプロジェクトが別に儲かろうが儲かるまいが最後までやり抜くぞというタイプもあれば、当然それはプロフェッショナルとしてきちんと対価は欲しいというタイプもあればという感じだと思うので、結構この目的が何なのかということによってもだいぶグラデーションがあるなという感じはしなくはないですかね。うーん、難しい。


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前編は以上となります。後編では、以下のテーマを紹介します。乞うご期待!

・web2以前の世界とweb3が既に融合している分野とは?
・メタバースでのゲーム開発、プラットフォームに依存すべきか否か?
・web3プロジェクトの資金調達状況は本当に活況そのもの
・コムギさんが感じたweb3への違和感とは?

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最後までお読みいただきありがとうございました。

web3についてもう一歩踏み込んでインプットをしたい方向けに、2022年4月より、「web3事例データベース」を開始しています。

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