Q. 楽天はなぜ今、15%もの希薄化を伴う増資をしたのか?
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ヒント:公募ではなく、特定の引受先からの調達であることがポイントです。
楽天は、2021年3月12日に第三者割当増資を発表しました。
日本郵政グループ、中国ネット大手のテンセントや米小売のウォルマートなどを引受先とした約2,400億円もの資金調達により、注目を浴びました。
この発表後に、楽天の株価は上昇し、一見すると良い取り組みのように思えますが、今回の第三者割当は約15%もの希薄化を伴う増資となっています。一般に、株式の希薄化によって1株あたりの価値や権利は低下しますので、15%もの希薄化は既存株主にとってデメリットとなります。
それでも、楽天はなぜこのタイミングで15%もの希薄化を伴う増資を行ったのでしょうか。
今回は第三者割当の全体像と上記を含めた5つの疑問点についてみていきたいと思います。
今回の第三者割当増資の背景
・増資金額は約2,400億円
・14.8%の希薄化(議決権ベースでは15.5%)
・引受先は以下の通り
日本郵政株式会社:8.32%
テンセント:3.65%
ウォールマート:0.92%
有限会社三木谷興産:0.28%
有限会社スピリット:0.28%
楽天株式会社 第三者割当による新株式の発行及び自己株式の処分に関するお知らせ
まずは今回の第三者割当の全体像を見ていきましょう。
今回の第三者割当により、楽天は合計約2,400億円の資金を新たに調達することができます。株式の引受先は日本郵政、テンセントやウォルマートなど日米中3ヶ国の大手企業が中心です。
また前述の通り、この第三者割当により14.8%(議決権ベースでは15.5%)の株式希薄化となります。
発行価格(株価)は?
・発行価格は1,145円で、第三者割当増資発表前日の株価終値1,146円とほぼ同額
・直近3ヶ月間の平均終値1,056円に対し +8.4%のプレミアム
・直近6ヶ月間の平均終値1,090円に対し +5.0%のプレミアム
次に今回の第三者割当の発行価格について見ていきましょう。
募集要項を参照すると、今回の第三者割当の募集価額は1株あたり1,145円です。
この募集価額はこれまでの株価水準と比較して高いのでしょうか、それとも安いのでしょうか。
発行価格の妥当性は、第三者割当発表前日の3月11日時点での株価終値1,146円に対してほぼ同額で直近3ヶ月間および6ヶ月間では多少プレミアムがついているものの、直近株価という点ではほぼ同額となっていることから、今回引受先の企業にとって、特段有利な発行価格というわけではありません。
調達した資金の利用用途は?
続いて、今回資金調達した2,400億円もの資金は何に使うのでしょうか。
それは楽天モバイルの基地局整備費用であり、今回新たに調達する2,400億円全額を2021年12月までに投資するようです。
これまで楽天はモバイル事業に積極投資を続けており、今後見込まれる利用者の増加に対応するため、基地局整備計画を5年前倒しすることで、以下の図の通り、2021年夏には 4G人口カバー率96%を目指しています。
国内大手3キャリアの携帯料金の値下げが行われている中、優位性を確立するためにモバイル事業の積極投資を行う必要があることから、今回の第三者割当による資金調達を実施したということです。
さて、ここまで楽天の第三者割当について、資金調達額と引受先、発行価格の妥当性や資金使途について見ていきましたが、タイトルにもある「なぜ今、15%もの希薄化を伴う増資をしたのか?」など、この第三者割当にはいくつか疑問があります。
以下ではこの第三者割当増資の5つの疑問について、(私見ですが)答えていきたいと思います。
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・Q. 楽天はなぜ今、15%もの希薄化を伴う増資をしたのか?の答え
・疑問その1:なぜ日本郵政が引受先なのか?
・疑問その2:なぜテンセント・ウォールマート引受先なのか?
・疑問その3:なぜ三木谷社長の家族会社でも増資を引き受けるのか?
・疑問その4:なぜこのタイミングでの増資なのか?
・疑問その5: なぜ公募せずに特定の相手に第三者割当増資をするのか?
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