Q. 家事代行のCaSyが新規上場!35%と高いテイクレートを実現できている理由とは?
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ヒント:スキルシェアのマッチングプラットフォームを展開する「クラウドワークス」や「ランサーズ」、「ビザスク」、「ココナラ」と比較すると、CaSyのテイクレートはビザスクの次に高いです。
この記事はゆべしさんとの共同制作です。
2022年1月19日に、家事代行サービスのマッチングプラットフォームを展開するCaSy(カジー)の東証マザーズ上場が承認されました。上場日は2月22日を予定しています。
家事代行サービスとは、専門のスタッフが利用者の自宅に訪問して、掃除や洗濯、料理、買い物等の家事を代行するサービスのことです。
家事代行サービスは、富裕層向けのサービスという印象を持つ方も多いと思いますが、CaSyはITを活用することで、市場平均の約半額という価格で、気軽に家事代行サービスを利用できるようにしています。
そんなCaSyの特徴の1つは「35%の高いテイクレート(取引手数料率)」です。マッチングプラットフォームにおいて、このような高いテイクレートを実現できる理由は何なのか、CaSyの事業内容や財務情報を整理しながら、その理由を考察しました。
CaSyの会社概要
株式会社CaSy 新規上場申請のための有価証券報告書(2022年1月19日)
CaSyは2014年1月に設立された企業で、家事代行を依頼するユーザーと、キャストと呼ばれる家事を代行するスタッフをマッチングする、「家事代行サービスのマッチングプラットフォーム」を展開しています。
詳細は後述しますが、CaSyのユーザー数やキャスト数は多いものの、2021年12月末時点の従業員数はわずか23名と少なく、少数精鋭で事業運営していることが伺えます。
CaSyの提供する家事代行サービスのDXとは?
CaSyはITを活用することで、キャストが行う家事代行の業務以外は全てオンラインで対応し、ユーザーとキャストのマッチングの最適化を進めるなど、DX化に注力しています。
【CaSyのDX化の取り組み例】
(1) キャストとユーザーのマッチングシステム構築による工数削減(→運営最小化)
(2) 評価の仕組みのデジタル化・一元化による品質改善、利便性向上
(3) 本人確認APIサービス「TRUSTDOCK」と連携することで、オンボーディングプロセスをデジタルで効率化
CaSyはこのようなDX化により、業務を効率化し、間接業務に関わる工数を削減したことに加え、サービス品質の改善を進めたことで、高い価格競争力とサービスの使い勝手の良さを強みとして成長しています。
CaSyの売上推移
上図は、CaSyの年間の売上と経常損失、売上の前年同期比成長率の推移をグラフ化したものです。
2021年11月期の年間売上は11.65億円(YoY+20.7%)で、右肩上がりに拡大しています。一方で、売上成長率(上図折れ線)は下降傾向のため、売上の成長速度が鈍化しています。これは、売上規模の拡大に伴う鈍化に加えて、コロナ禍でキャストとの接触を避けたいというユーザーの意向も一部あるでしょう。
また、オペレーションの効率化を目的としたシステム開発やマーケティング等の先行投資により、経常利益は赤字が続いています。
2021年11月期は前年の2020年11月期と比較して、売上が増加したことに加え、販管費を削減したことで、赤字幅が大幅に縮小して▲600万円の赤字で着地しました。
ストック型のビジネスモデルを構築
上図はCaSyの掃除代行の料金プランです。こちらを見ると、スポットよりも定期プランをメインに打ち出している事が分かります。
一般的に、マッチングプラットフォームは取引に応じた手数料収益が中心ですが、CaSyはスポットでのマッチングに加えて、定期的に利用するユーザーを増やす戦略をとっており、「ストック型のビジネスモデル」を構築している点が非常にユニークです。
そのため、主要KPIとしてSaaSでよく用いられる継続的な売上を示すARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)を開示しており、2021年のARRは約11億円で右肩上がりに成長しています。
また、CaSyはARRに加えて月次解約率も開示しており、毎年3%前後で推移しています。CaSyは、個人向けだけでなく、法人向けの家事代行サービスも展開しており、この解約率はBtoBとBtoCが開示されていないため、比較が難しいところです。
以下の記事によると、BtoBのSaaS企業の平均解約率は5.0%のため、一見するとCaSyの解約率は低く抑えられていますが、マネーフォワードやSansanなどの企業は解約率を1%未満に抑えていることを踏まえると、一概にCaSyの解約率が低いとは言えません。
【参考】
Subscription churn rate industry benchmarks – Recurly research
株式会社マネーフォワード 2021年11月期通期決算説明資料(2022年1月14日)
Sansan株式会社 2022年5月期第2四半期決算説明資料(2022年1月13日)
一方で、BtoCのサブスクリプションサービスの平均解約率は7.1%であることから、BtoCのサブスクリプションサービスと比較すると、CaSyの解約率は低く抑えられていると言えるでしょう。
CaSyの定期プランのユーザー属性は開示されていませんが、CaSyのユーザーの大半が個人のため、定期プランのユーザーも個人が中心である可能性が高く、BtoCのサブスクリプションサービスの平均解約率との比較が、より実態に近いと思われます。
CaSyのその他の主要KPI
ARRや月次解約率に続いて、CaSyの主要なKPIはユーザー数とキャスト数です。2021年11月末時点のユーザー数は約13万人で、直近3年間のCAGR(年平均成長率)は+31.3%と右肩上がりに増加しています。
また、ユーザー数と同様にキャスト数も右肩上がりに増加しており、2021年11月末で約9,000人(直近3年間のCAGR+42.4%)となっています。
約13万人のユーザーのうち、定期プランを利用しているユーザー数は2021年11月末で約5,500人(直近3年間のCAGR+33.5%)で、全体の約4.2%と割合としては低いものの、右肩上がりに増加しています。
また、2021年のARRが約11億円のため、月間に直したMRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)は、単純計算で11億円 ÷ 12ヶ月 ≒ 0.92億円、定期ユーザー1人あたりの月額利用料は0.92億円 ÷ 5,500人 ≒ 1.67万円と計算できます。
ここまで、CaSyの事業内容や財務情報、KPIを整理しました。記事の後半では、スキルシェアのマッチングプラットフォームを提供するクラウドワークスやランサーズ、ビザスク、ココナラと比較し、CaSyの特徴の1つである「35%の高いテイクレート」を、どのように実現しているのか考察します。
この記事は、プラットフォームビジネスに従事している方や、事業戦略に関心がある方にお勧めの内容となっています。
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