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「ソフトバンクがスプリントの経営権をT-mobileに譲渡」は買収交渉の先制パンチだと思う

先日こんなnoteを書きました。

今日、ロイターから「ソフトバンクがスプリント経営権譲渡か Tモバイルに」という報道がありました。

ソフトバンクグループが傘下の米携帯電話4位スプリントの経営権を、ドイツテレコム傘下の米携帯3位TモバイルUSに譲渡することを検討していると分かった。ロイター通信が17日、関係者の話として報じた。スプリントとTモバイルの合併につなげる狙いという。

以前より、この2社は何らかの形で「合併」することに対しては、ポジティブでしたが、FCCの承認が得られそうになかったために断念してきた経緯があるというのは、ご存知の方も多いかと思います。

これまでの経緯としては、あくまで「ソフトバンクがT-mobileを買収して、スプリントとT-mobileを合併させる」というシナリオでした。

他方、今回の話は、同じく合併させるとしても、ソフトバンクがスプリント(の経営権)をT-mobileに譲渡する、という話で、「2社を経営統合する」という点は同じですが、今回の噂はT-mobileが合併後の主導権を握るという点で異なります。


今回の報道を深読みすると...

あくまで個人的な推測の域を出ませんので、そういう前提で読んでいただきたいのですが、今回の報道は、(恐らく)ソフトバンク陣営(あるいは、ソフトバンク側の投資銀行)から出された、買収を有利に進めるための「リーク」である可能性が高いと思います。

つまり、ソフトバンクとしては、スプリントを売る気なんぞない、むしろT-mobileを買いたいのだけど、その買収を実行するために、少しでも有利なポジショニングを取りたい、ということなのではないかと。

繰り返しますが、あくまで個人の主観ですが、以下、そう思う3つの理由を書いておきます。


理由1: T-mobileが「売りたくない」と言い出している 

日経の記事の元ソースである、REUTERSの記事(英語)を見ると、もう少し深い背景がちゃんと書いてあります。

Deutsche Telekom Chief Executive Tim Hoettges has said in recent months that the German company is no longer willing to part with T-Mobile, prompting SoftBank to explore a new strategy towards a potential combination, the people said. Deutsche Telekom owns about 65 percent of T-Mobile.

T-mobileの親会社(65%を保有)であるドイツテレコムのCEOは、もうT-mobileの売却する意思がないと発言している。

本当に売りたくないと思っているのか、売値を釣り上げたいのか分かりませんが、T-mobileの過半数以上を保有する株主が「売りたくない」と態度を豹変させています。

With the advent of 5G, Deutsche Telekom may receive offers for T-Mobile from other U.S. companies, such as DISH Network Corp (DISH.O) and Comcast Corp (CMCSA.O).

5Gネットワークの時代になると、T-mobileはDISH(衛星通信)やComcast(ケーブルテレビ)など他社からの買収提案も期待できる。

この記述を読むと、T-mobile陣営としては、スプリント以外にも交渉の余地を残しておくほうが、少なくても売却金額が大きくなることは間違いなさそうです。


理由2: 「経営権譲渡」など表現が曖昧すぎる

日経の記事では、

ソフトバンクグループが傘下の米携帯電話4位スプリントの経営権を、ドイツテレコム傘下の米携帯3位TモバイルUSに譲渡することを検討していると分かった。

「経営権譲渡」というのは非常に曖昧な書き方です。事業売却なのか、会社ごとの売却なのか、いろいろなパターンがあり得ますが、そういった形には一切踏み込まずに、曖昧に表現されています。


理由3: 報道のタイミングがグレーすぎる

ロイターによると、米連邦通信委員会(FCC)が電波の周波数帯の入札中は競合会社間の接触を禁じているため、ソフトバンクはまだドイツテレコムと交渉を始めていないという。

接触できない期間に、こうした不意打ちをしている、というのもすごく不自然です。もし友好的に話し合いが出来ているなら、こんなタイミングでこんな情報が漏れることはないでしょう。

従って、スプリント側とT-mobile側が友好的に話し合いが出来ていない可能性が高いと推測できます。

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孫社長の性格を考えても、アメリカ市場という世界最大の市場での主導権争いをそんなに簡単に諦めるとは思えませんので、少なくてもソフトバンク側がスプリントを売る、という可能性は非常に低いと考えられます。

以上を鑑みるに、今回の報道は、ソフトバンク側からの、

・市場環境を鑑みるに、T-mobileとスプリントは(それ以外の会社とくっつくよりは、この2社を)何らかの形で「合併」させた方が良いですよね。

・ドイツテレコムがT-mobile株を売却する意図がないのであれば、ソフトバンクがスプリントを売却することも検討できますよ。

・なので、「合併」に向けて4月になったらちゃんと話し合いましょうね。

というメッセージだと考えるのが一番しっくりくる気がします。

要は、デートさえもしたくないと言い出した相手に、結婚の交渉のテーブルに付かせるための(やや荒っぽい)交渉戦術なんじゃないかという話です。


まだまだどうなるか先が読めませんが、引き続き本件には注目していきたいと思います。


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