Q.SaaS企業のPSRに最も影響を与えるKPI、高PSR企業の3つの共通点は?
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ヒント:
A. SaaS企業のPSRに最も影響を与えるのは、●●●●●。
また、高PSR企業の3つの共通点は、
1:●●●●率が高い
2:●●パフォーマンスが高い
3:●●●●予想の●●●●●●が高い
この記事は沼幹太さんとの共同制作です。
株の割高/割安を判断する指標として、PER、PBRなど様々な指標がありますが、急成長企業の評価をする際によく用いられる指標として、PSRがあります。
*PSRとは?
PSR(Price to Sales Ratio) = 時価総額/売上、または株価/1株あたり売上で算出。
売上に対して時価総額(株価)を比較することで、企業の株が割高か割安かを判断する1つの基準となる。
急成長企業を判断する際にPSRが用いられるのは、スタートアップなどの急成長企業においては利益よりも売上、または売上成長率が重要視されるためです。
中でもSaaS企業は、先にマーケットを獲得し解約を防ぐことで継続的に利益を積み上げるビジネスなので、早期は特に定額収入であるMRRやARR、及びそれらの成長率が重視される傾向にあり、SaaS企業を比較する上でPSRは注目されています。
そこで今回の記事では、SaaS企業のPSRと各指標の関係性について理解を深めるべく、SaaSのPSRの数値に最も影響を与える要素とは何か、また高いPSRを記録するSaaS企業に共通する3つの特徴について、国内・海外SaaS企業の各社KPIを参考にしつつ考察していきます。
国内SaaS企業のPSR
それでは早速、国内主要SaaS企業14社のPSRの比較を見ていきましょう。
※14社は、注目度の高い企業として独自にピックアップしています。
※PSR算出時に使用した時価総額は、該当四半期の決算発表日当日時点での株価を参考に算出しています。
直近四半期の決算では、フリー、ラクスがPSR30倍、マネーフォワードがPSR20倍を超える高倍率を記録しています。
一方で下位の企業はPSR5倍程度と、上位企業とは大きな開きが見られます。
PSRが高い企業TOP3
これら14社のうち、こちらが高いPSRを記録しているフリー、ラクス、マネーフォワードのPSRの四半期ごとの推移になります。
一般的にPSRは20倍を超えると割高と言われますが、フリーは、直近4四半期連続で30倍を上回っており、一時は60倍を超えるかなり高い倍率を記録していました。
また、ラクス、マネーフォワードも直近の決算ではPSR20倍を超えており、高い市場評価を受けている事がわかります。
フリーのPSR 四半期推移
FY21Q3(2020年9月末) 46.35倍
FY21Q4(2020年12月末) 61.71倍
FY21Q1(2021年3月末) 33.18倍
FY21Q2(2021年6月末) 35.86倍
また、こちらは国内主要SaaS企業の時価総額の比較になります。
こちらを見るとPSRの高いラクス、フリー、マネーフォワードなどの企業が、そのまま時価総額が高い企業となっていることがわかります。
PSRと主な指標の相関関係
ではここからは、SaaSの主要KPI(ARR YoY, ARR, 解約率、ACV、ARPA、NRR)とPSRの関係性の強さについて、相関係数を用いて比較していきましょう。
*相関係数の利用方法
相関係数とは、2種類のデータの(直線的な)関係性の強さを −1から +1 の間の値で表した数になります。
プラスの値 :PSRが大きいとき、比較する指標は大きい方がよい
マイナスの値:PSRが大きいとき、比較する指標は小さい方がよい
引用:「相関係数」を正しく理解しよう | データサイエンス情報局
基本的にはプラスの値が大きい方が、相関が高いと判断しますが、解約率は低い方がよいため、マイナスの値が大きいかどうかで判断します。
(絶対値で判断)相関係数は0.4~0.7だと比較的高い相関、0.2~0.4だと比較的低い相関、0.2以下は相関が低いと言われています。
まず、PSRと最も相関係数が高いのは0.654のARR成長率(ARR YoY)という結果になりました。
先述したようにSaaSビジネスは、先にマーケットを獲得し解約を防ぐことで継続的に利益を積み上げるビジネスモデルなので、顧客獲得の成長に伴うARRの成長が求められます。
また、類似する指標として「売上成長率」もありますが、こちらはフローの売上も含まれるため、SaaSのストック収益が順調に積み上がっているかを評価する指標としては、ARR成長率の方が優れていると見ることもできるでしょう。
この観点から、投資家がARR成長率を最重要指標の1つとして企業を評価することが考えられるため、ARR成長率とPSRの相関が強いことは、自然なことと言えます。
また、SaaS事業の重要指標である解約率は、今回の期間を切り取ると意外にもPSRとの相関が比較的低いこともわかりました。
ARPA(1アカウントあたり平均売上)も相関が低いため、顧客単価が高いこととPSRは関係性が低いこともわかりました。
NRRについては、算出可能な企業が少なかったため十分なデータが取れていませんが、既存顧客の売上が成長していくかどうかを測ることができ、SaaSの安定的な成長を判断する上で重要な指標となるため、実は相関性が高いということもありうるでしょう。
ではここからは、今回の分析において最も相関が強かったARR成長率に注目して、高PSR企業を決算資料を見ていきましょう。
高PSR企業のARR
こちらは前述の国内主要SaaS企業の中でPSRが一番高かったであるフリーのARR推移を示したグラフになります。
フリーは「クラウド会計ソフト freee」「クラウド給与計算ソフト freee」などを提供する2013年創業のSaaS企業です。
フリーの2021年6月期Q4決算のARRはYoY+42.7%の112.7億円。毎年堅調な伸びを見せており、ARRのグラフの推移も非常に美しいです。
また、有料課金ユーザー企業数はYoY+30.9%、ARPUがYoY+9.0%と高いペースで伸びており、ARRに影響する各KPIが好調であることがわかります。
次に、14社中2番目にPSRが大きかったラクスです。
ラクスは経費精算システム「楽楽精算」「メールディーラー」など主に中小企業をターゲットとしたクラウド事業、IT人材派遣事業などを営む企業です。
ラクスは決算発表内でARRを開示していないため、直近の2022年3月期Q1のクラウド事業の四半期売上からARRを計算してみましょう。
クラウド事業売上とYoY
2021年4-6月 四半期売上(37.09億円)÷3×12=ARR148.36億円
2020年4-6月 四半期売上(26.89億円)÷3×12=ARR107.56億円
2021年4-6月時のARR成長率はYoY+37.9%を記録しており、こちらも高い水準で成長していることがわかります。
またラクスは、精算ツール、メール共有システム、メールマーケティングツール、販売管理ツール、電子請求書発行ツールなど、様々な領域に渡り広くクラウド事業を展開していますが、その全てのサービスがYoYで成長を遂げており、事業の好調ぶりが伺えます。
次にPSRが大きいのがマネーフォワードです。
マネーフォワードは法人の会計、給与計算、勤怠、経費精算などを効率化するバックオフィスSaaSの「Money Forward クラウド」、個人利用の家計簿・資産管理アプリ「Money Forward ME」などを運営しています。
領域が近くよく比較されがちなフリーとマネーフォワードですが、中小企業のバックオフィスに事業領域をある程度絞っているフリーと比較して、マネーフォワードは個人・法人事業ともに様々なターゲットに多角展開していることが特徴となっています。
マネーフォワードの2021年11月期Q2決算のSaaS ARR(SaaS売上のHomeドメイン、Businessドメイン、XドメインのARR合計を指す)は97億円でYoY+40.3%。売上比率が最も大きいBusinessドメインにおける法人事業(Money FowardクラウドなどのSaaS事業)の売上がYoY+50%と成長を牽引しています。
ここまでは、国内主要SaaS企業のPSRを俯瞰しSaaSの各KPIとの相関を考察し、またARR成長率が高い3社の直近の決算状況について考察してきました。
記事の後半では、PSRが高い企業の3つの共通点について、国内SaaS企業に加えて高PSRの米国SaaS企業の特徴なども踏まえつつ、解説していきます。
この記事は、SaaSビジネスへの理解を深めたい方、SaaS企業の株式評価とKPI指標の関係性に興味がある方、SaaS企業の企業分析に関心がある方に最適な内容になっています。
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・高PSR企業の共通点3●●●●予想の●●●●●●が高い
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