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成城石井が上場へ!2,000億円超の想定時価総額は妥当なのか?

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ヒント:PER ●●xで同業種より高いと感じられるが、●●を見込めば妥当。

この記事はhikoさん(企画・リサーチ担当)とMihoさん(ライティング担当)との共同制作です。

首都圏を中心に全国で170店舗(2022年3月末時点の直営店舗数)を展開する株式会社成城石井が上場を計画しているというニュースが流れました。

想定時価総額は2,000億円超とも報道されており、新規の上場としては屈指の規模感です。

スーパーマーケット業界が縮小傾向にある中で、それに反して成長を続ける成城石井の成功要因はどこにあるのでしょうか?

これまで親会社が何度も変わるなかで着実に成長を続けている成城石井について、これまでの歴史、業績推移と注目の上場時の時価総額を詳しく説明していきます。


スーパー戦国時代での成城石井の上場

近年、小売流通業界は再編の動きが加速しています。業績好調のイオン株式会社はM&Aを繰り返していたり、株式会社関西スーパーマーケットがイズミヤ、阪急オアシスを傘下に持つエイチ・ツー・オー リテイリング株式会社と経営統合したりという状況です。

2020年以降はコロナウイルスによる在宅需要の増加で、各社のスーパーマーケット事業は好調でした。しかしスーパーマーケット業界の市場規模は1997年の少子社会の到来をピークに、縮小しています。

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上図がスーパーマーケット業界の市場規模の推移です。

日本の人口は2008年をピークに減少傾向に転じていますが、少子化がこのまま進めば減少には歯止めがかかりません。すると、食品需要は減少することは確実であり、今後さらにスーパーマーケット市場は縮小すると考えられます。小売流通業界の再編の動きは、このような背景のもとにあると考えられています。

そんな中、成城石井の親会社である株式会社ローソンが成城石井の上場を計画していると日経新聞が報じました。ちなみにローソンは「上場も含めて、企業価値向上に向けて様々な検討を行っておりますが、現時点で決定した事実はございません。」と発表しています。

前述のとおり、スーパーマーケット市場は縮小し、飽和状態の中で、成城石井はどう発展し、ローソンはどう支えたのかを見ていきたいと思います。


成城石井とはどんなスーパーか

まずは成城石井について、特徴をまとめてみましょう。

①商社機能を自社で持つ

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まず一つめの大きな特徴として、成城石井は世界中から魅力的な商品を探し出す商社機能を自社で持っていることが挙げられます。上図ではワインは95%以上が自社輸入であると記載されています。

自社輸入や仕入れが実現すれば流通事業者に支払う手数料は削減できるため、高い利益率を実現できる可能性があります。実際に他のスーパーマーケットと比較した利益率は後ほど説明します。

店舗運営をしていることで、日々どのような商材が顧客に人気かというデータが集まっています。このデータを見ながら、商品戦略を考えて、自社で商品を世界中から探すことができる強みは大きいでしょう。


②多様な店舗形態での展開

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二つめの特徴として、多様な店舗形態での展開に成功しているという点があります。路面店、駅ビル、デパ地下、ショッピングセンターテナント、オフィスビル、コンビニ跡地など、あらゆる形態の店舗を持っています。

売り場面積が10坪程度でついで買い需要を満たすような小さな店舗から200坪程度の大型店まで様々です。これは他スーパーマーケットにはない特長といえるでしょう。

すでに直営店のみでも170店舗、FCを含めると195店舗あるので、これらの店舗で採れたデータをもとに収益性の高い店舗展開をしています。さらに、毎年平均10店舗程度の出店を進めています。

また成城石井の強みである商社機能を活かして、世界各国のワインやおつまみを提供するワインバーも運営しています。


③高い商品開発力

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成城石井の店舗を思い出してみると、生鮮食品はもちろんのこと、惣菜の印象が強いです。商品を企画・開発・製造するセントラルキッチンで、調達してきた食材や素材をもとに惣菜、デザート、パンなどを開発しています。

成城石井の人気のあるオリジナル商品はたくさんありますが、特に2016年2月にリリースされたdesica(デシカ)はメディアでも話題になりました。

グローサラント(グローサリー×レストランの造語)にも力を入れています。グローサラントは、スーパーマーケット等で調達した食材をその場で調理し、提供するサービスです。2017年9月に初店舗となるSEIJO ISHII STYLE DELI&CAFEが東京都調布市にオープンしました。

自宅でも再現できるようにレシピカードを用意して、売り場にある食材の使い方を提案しています。

ちなみにグローサラントの業態はアメリカでは普及しており、ホールフーズやウェグマンズでも取り入れられていますが、その実態は様々で、イートインと変わらないようなものもあるようです。


成城石井の買収の歴史

成城石井の歴史は1927年に創業され、1976年にスーパーマーケット事業を始めたところに遡ります。1996年には前述の成城石井の強みとなるセントラルキッチンの稼働を開始しました。

駅ビルへの出店も開始し、他社のスーパーマーケットとは一線を画した戦略で注目を集めました。しかし、成城石井は何度も親会社が変わるという買収の歴史がありました。

創業家が2004年に株式会社レインズインターナショナルに株式持分の2/3を65億円(=評価額は約97億円)で売却したことが一度目の買収でした。レインズインターナショナルは焼肉の牛角のチェーン展開で急成長していた会社で、シーフードレストランのレッド・ロブスターやコンビニのam/pmの買収も行っており、当時、多角化を進めていました。

レインズインターナショナル傘下の成城石井は駅ビルへを中心に店舗出店を進めましたが、思うように業績が伸びなかったことに加えてリーマンショックによる景気後退もあり、二度目の買収がなされることになります。

2011年に成城石井は丸の内キャピタルに420億円で買収されました。丸の内キャピタルは三菱商事と三菱UFJフィナンシャル・グループが設立した​​投資ファンドで、同社が設立する新会社に事業譲渡がなされるというものでした。

この時、他の商社も買い手候補としては名前が挙がりましたが、入札に参加したのは投資ファンド2社(CVCキャピタル・パートナーズ、ベイン・キャピタル)で、激しい交渉の末に丸の内キャピタルが買収しました。

その後、2014年に丸の内キャピタルが成城石井を売却する方針を小売各社へ表明しました。イオン、三越伊勢丹ホールディングス、ローソンの3社が手を挙げましたが、最終的にローソンが550億円で成城石井を買収しました。

そして、2022年4月12日にローソンが成城石井の上場を計画しているという記事が日本経済新聞で報じられました。
     
ここまで、スーパーマーケット市場の状況、成城石井の特徴や歴史について見てきました。

記事の後半では、成城石井の売上や営業利益などの財務実績の推移、時価総額2,000億円の妥当性、ローソン傘下で成長した理由について説明しています。

この記事は、小売流通業界に関心のある方、成城石井に関心がある方に最適な内容になっています。


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・Q. 成城石井が上場へ!2,000億円超の想定時価総額は妥当なのか?の答え
・直近決算での売上と成長率
・直近の決算での利益と営業利益率
・2,000億円の時価総額は適切か
・ローソン傘下で成長した理由
・まとめ

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