Q.落合陽一氏のピクシーダストテクノロジーズがNASDAQ上場、大学の技術を社会実装するスキームとは?
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この記事はhikoさん(企画・リサーチ担当)との共同制作です。
落合陽一氏が代表取締役を勤めるPixie Dust Technologies(ピクシーダストテクノロジーズ)が、NASDAQに上場します。
ピクシーダストテクノロジーズは、大学の技術を社会の課題やニーズと結びつけ、ビジネスによる価値創造を行い社会実装する事業を展開しています。
今回は、ピクシーダストテクノロジーズの会社概要や事業内容、業績などを見ていきながら、大学の技術を社会実装するビジネスのスキームがどのようなものなのか、紐解いていきます。
PIXIE DUST TECHNOLOGIES, INC. F-1
ピクシーダストテクノロジーズの会社概要
ピクシーダストテクノロジーズは、アクセンチュア出身の村上泰一郎氏と、前述した筑波大学准教授の落合陽一氏が代表取締役を務めています。
落合陽一氏はメディアに多数出演しておりご存じの方も多いと思いますが、メディアアーティストという肩書で活動されており、筑波大学デジタルネイチャー開発研究センターのセンター長も務めています。
ピクシーダストテクノロジーズでは、落合氏の大学での研究開発とも深く関わる音波と光波を用いた独自の波動技術を核とし、メカノバイオロジー(細胞の内外で発生する力が、細胞や組織の活動にどのように影響するかを研究する学問)とメタマテリアル(自然界の物質には無い振る舞いをする人工物質)を組み合わせることで、革新的な商品やサービスの実用化を目指している企業です。
設立は2017年5月で、同年9月に産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発型ベンチャー支援事に採択され0.7億円を調達し、2018年6月には日本政府のスタートアップ支援プログラムにおいて対象企業に選定されました。さらに2018年8月には科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラムに採択され1.4億円を調達するなど、国からも注目され支援を積極的に受けています。
ピクシーダストテクノロジーズの事業内容と商品
ピクシーダストテクノロジーズは、パーソナルケア&ダイバーシティ分野とワークスペース&デジタルトランスフォーメーション分野の2つの分野で事業開発をしています。
それぞれの分野で開発された商品を見ていきましょう。
・パーソナルケア&ダイバーシティ分野
パーソナルケア&ダイバーシティ分野の中から3つの商品を取り上げます。
1つ目は、2022年11月にリリースされた超音波スカルプケアデバイス「SonoRepro(ソノリプロ)」です。
空中を伝わる超音波を利用し、非接触で皮膚を刺激する「非接触振動圧刺激」という技術が用いられており、1日1分の利用で頭皮のケアを行うことができます。
2つ目は、2023年3月にリリースされた「VUEVO」です。
独自開発のワイヤレスマイクと専用アプリケーションを用いて、聴覚障害や聞こえにくさがある方と聴者をつなぐサービスです。
聴覚障害のある方だけでなく、会議など複数人の会話内容を直管的に理解することができ、テキストで会議内容の再確認ができるなど、ビジネスシーンでも有効活用することができます。
3つ目は、2023年4月にリリースされた「kikippa」です。
テレビなどの音声に独自のアルゴリズムによる40Hz変調を施した「ガンマ波サウンド」を出力するスピーカーで、快適かつ自然な聴きやすさを実現しています。
ガンマ波とは脳波の一種で、アルツハイマーの改善や集中力の向上などの効果があると言われており、kikippaを利用することで、健康促進や健康寿命の長期化に役立つと考えられます。
・ワークスペース&デジタルトランスフォーメーション分野
次に、ワークスペース&デジタルトランスフォーメーション分野の商品を1つ見ていきましょう。
2022年7月にリリースされた「iwasemi」は、音響メタマテリアル技術に独自の吸音設計技術を応用することによって開発された吸音材です。
高い吸音率と薄型化を両立させており、素材と加工の自由度が高いことから、工事現場の騒音対策や、防音機能が必要な建材、鉄道や自動車などの騒音対策など、社会のあらゆるシーンでの実用化が考えられます。
ピクシーダストテクノロジーズの業績
次に、ピクシーダストテクノロジーズの業績を見ていきましょう。
売上は2022年の決算で6.4億円、YoY(前年比)+24%である一方、営業損失が11億円、YoY-46%となっており、赤字が増加しています。
赤字の最大の要因は、売上を超える額の研究開発費用をかけていることです。2021年は対売上比117%、2022年は同109%を投下しています。また、人件費や新商品の広告宣伝費用、専門家との契約の増加もコストの増加に影響しています。
売上の大半は受託研究売上となっており、2022年4月30日に終了した事業年度において、3社の顧客が総収入の約54.3%を占めています。
今後も受託研究が主な収益源になる見通しですが、自社製品を増やすことで収益の拡大を目指しています。実際、2022年4-10月の6カ月の製品売上は37百万円(前年同期0円)で、全体の売上の23%を構成しています。同期間の受託研究収益は1.22億円、YoY-32%と、コロナ関連サービスの需要の減少が響いていますが、製品売上の増加によって全体売上の減少を一部カバーしています。
ここまで記事の前半では、ピクシーダストテクノロジーズの企業概要、事業概要と商品、業績について見ていきました。
記事の後半では、大学の技術を社会実装するためのスキームを深掘りし、トレンド化しつつある日本のスタートアップのNASDAQ上場についても解説していきます。
この記事は、産学連携のビジネスに携わっている方や興味がある方、NASDAQ上場が加速する背景について知りたい方、落合陽一氏が手がけるビジネスに興味関心がある方に最適な内容になっています。
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