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発売前からベストセラー「小さく分けて考える」の著者が語る失敗談と仕事の本質とは?

菅原健一さんのご紹介

シバタナオキ(以下、シバタ): 皆さん、ご無沙汰していますでいいのですよね。シバタです。『決算が読めるようになるノート』はイードさんに事業譲渡をしたのですけれども、たまには私も対談などで登場してもよいとおっしゃっていただいていますので、これからも機会があれば対談シリーズをやっていきたいなと思っています。

今日は、私の友人かつ先輩の菅原健一さんにお越しいただいています。今日ご紹介する新しい本を出版されるということなので、本の内容は本を買っていただいたほうがいいと思いますけれども、本の裏側にあるストーリーなどをお話いただきたいなと思っています。
菅原さん、今日はよろしくお願いします。

菅原健一氏(以下、菅原): よろしくお願いします。

シバタ: まず、簡単に自己紹介をいただいてもよろしいですか。

菅原: はい。菅原健一と言います。今はMoonshotという会社をしています。その前、僕はいわゆるスタートアップにいることが多かったのですが、スタートアップというのは無いものを存在させるべく頑張っていく会社たちですので問題だらけでした。その問題をどうやって解決しようかというふうに考えていった結果、僕は、1つはベンチャー企業、日本の大手通信キャリアのKDDIの子会社に売却することができて、そこからそのまま経営を続行して売上を伸ばしていったという経験と、もう1つはそのあとにスマートニュースという会社に行って、2年で売上を伸ばしていったという経験を得ました。その2つの経験をもとに、今、Moonshotという会社で多くの企業にスタートアップ的なアドバイスをする仕事をしています。

二十歳から働き始めて、最初はエンジニアでしたが、その経験でずっと問題続きでしたので、この問題をどうやったら解決できるのかというのを型にできるなと思ったので、今回本を出すことになりました。仕事がうまくいかない人とか、報われない人とか、仕事の結果をもっと出したいと思っている人とか、多くの人たちにこの本を読んでもらえたらいいなと思っています。よろしくお願いします。

シバタ: ありがとうございます。私との関係性で言うと、以前Twitterにもポストしましたが、私は何か新しいことを思いついたときに壁打ちをしてくれる貴重な友人、先輩というのがおりまして、実は菅原さんはそのうちのお1人です。普段から結構定期的に「こんなのどうですか」というのをかなり密にお話させていただいている、大変ありがたい存在の1人です。

今回、菅原さんが新しい本を出されるということで、私も原稿を拝見したりしていますが、なんと予約の時点でAmazonの書籍総合で1位になっているそうです。皆さんよくカテゴリーで1位になったと喜ぶ人がいるのですが、総合ですでに1位になっているという、本当に爆発的に売れることが間違いないのではないかと思います。

ちなみに、私が数年前に出した本は総合2位まで行きましたが、当時、某アイドルの写真集に負けまして1位になれなかったということがありましたが、菅原さんの新しい本はすでに総合1位になっているということで、私の本よりも確実に売れるのではないかなと思っています。

菅原: いえいえ。

シバタ: タイトルは、なんと『小さく分けて考える』。コンサル業界にいる人からすると、因数分解するという言葉をよく使うかなと思いますが、この『小さく分けて考える』というタイトルも非常に素晴らしいと思います。目次だけを見てもわくわくするような目次になっていますし、中身も本当に勉強になることがたくさん書いてあります。

今日は、本の内容をチラ見せするというのもありますが、それはもしかしたらほかのメディアさんでも出るかもしれません。私のほうでは、私が本を拝読して特にビビッときた3カ所についてそれぞれ少し深堀りして、本には書いていないような、もう少し具体的なそのときの様子やストーリーを菅原さんにお話いただきたいなと思っています。
ということで、よろしいでしょうか。

菅原: もちろんです。よろしくお願いします! ドキドキする…。(笑)


その1: 「小さく分けて考える」の原点は菅原さんご自身がエンジニアとして悪戦苦闘した日々...

シバタ: 私が尋問するみたいになっていますが…。(笑)1つ目は、先ほどもお話にあった通り、菅原さんはキャリアのスタートが実はエンジニアだったということです。エンジニア時代にいろいろなトラブルがあったということで、菅原さんご自身が分解思考をするようになったきっかけについて教えてください。本にももちろん書いてありますが、その辺の話をもう少し詳しく聞きたいなと思いますが、いかがでしょうか。

菅原: ありがとうございます。最初にエンジニアとして、二十歳の頃からキャリアを始めました。それが1997年かな。今では少ないですが、SI業界(システムインテグレーション業界)でいわゆるSE(システムエンジニア)という仕事、今で言うとみずほの銀行システムのような膨大なシステムを数百人でつくる、そういう仕事でした。

そんな中で、僕はその仕事を一番下っ端からしていかなければいけなかったのですが、なんとか先輩に文句も言われずに自分が一番得意な仕事をしたいなと思っていました。1999年から始まったiモードやJ-SkyWebやEZwebといったガラケーのコンテンツがつくられる中、私の当時の会社はそのうちの1社の課金システムをつくっていました。

それで、携帯会社さんから「コンテンツもつくったらどうですか」と言ってもらったのです。コンテンツは隣の部署の仕事でしたが、40歳のおじさんにはつくれないから、当時22~23歳だった僕がつくるほうがいいよなと思って「はいはいはい!」と立候補して、エンジニアとしてガラケーサイトをつくり始めることになったのです。

シバタ: 当時はエンジニアで、コードを書いていたのですか!

菅原: 書いていました。初めてJavaで。

シバタ: 懐かしいですね。

菅原: そう。

シバタ: 若い人は知らないかもしれませんが、昔、iモードという仕組みがありまして、そのときは日本独自のいろいろなコンパクトHTMLとか、Webの仕様がありました。

菅原: 着メロとかですよね。

シバタ: そうですね。今は全部App Storeになってしまいました。今で言うとモバイルアプリのWeb版のようなものがあって、日本が当時一番世界で進んでいました。
菅原さん、コードを書いていたのですね。初めて知りました。

菅原: 書いていましたよ。一番最初に、だから、僕は高校生のときはBasicという言語を書いていました。大学は行かなかったので、二十歳で働き始めたとき、最初はたぶんC言語で、なぜかガラケーのサイトをつくるときはオブジェクト指向という考え方のプログラミング言語のJavaをいきなり新たに始めてつくり始めるという暴挙に出まして。(笑)

シバタ: すごいです!

菅原: そんなのをつくっていました。

シバタ: なるほど。当然、今で言うところのブルーオーシャンですよね。できたばかりのプラットフォームの上に新しいサービスをつくるわけですので、当然トラブルが起こりまくりますよね。

菅原: 起こりまくります。だって、仕様も明確でないし…。当然初めてのガラケーのサイトですので、仕様も日本が決めていますからね。仕様もころころ変わるし、アクセスも来る日と来ない日が全然違いますし、もうまったく未知の世界でしたね。

シバタ: 22~23歳の非常に若いときにチャレンジングな環境におられて、その中でどのようにして分解思考というか、小さく分けて考えるほうに思考が至ったのかというのをもう少し教えてください。当時の若いときの菅原さんの思考回路を再現していただくとどんな感じですか。

菅原: エンジニアとして動くプログラムをつくるわけですよね。でも、iモードのトップページに載ると、ある日いきなり、来る人の数がそこから10倍になるのですよね。当時、AWSはまだありません。AWSというのは、要はボタンをポチポチ押せばサーバーが自動で10倍にも100倍にもできる素晴らしいシステムだと思いますが、当時はありませんでした。当時はまだデータセンターという所にサーバーを入れて、セットアップをして初めて使えるという感じですので、マシンを買うところから考えると増強に半年ぐらいかかるのですよね。

そんな中、次の日にはトラフィックが10倍になるわけですよ。来る人が多過ぎて、サーバーが処理できなくなってタイムアウトでどんどん落ちてしまう、動かなくなってしまうのです。それで、結果的にある瞬間から突然、画面が表示されなくなるわけです。当然これをそのまま放っておいて半年待つわけにはいきませんし、1カ月かけて直しても駄目です。要は機会損失になってしまいますので、できれば24時間以内になんとかしなければいけないということが頻繁に起きるのです。

これを行うにはまず問題を切り分けないといけませんよね。だって、自分たちでそれでいいと思ってつくったものを、ある日突然、さらに10倍速く動く方法を考えなければいけませんので。1つ参考になる図をお出しします。

菅原: 上図の中で、僕の頭の中はこの左側ですよね。頭の中がもう常にこの状態になっていて、「サーバーが落ちました」と言うと、なぜそもそもサーバーは壊れてしまうのだろう、落ちるのだろうというところから始まって、原因はたぶん2つあるなと。ネットワークが重くて帯域がいっぱいになってしまう、インターネットはある通信網の中でデータが行き来するので、それが超えてしまったパターン、もしくはプログラムが重いせいで落ちてしまうパターン、一番大きいところはこの2つに分かれると思います。細かいところから問題を考える人が多いと思いますが、僕はそれで大失敗を何度もしてきました。

シバタ: そうなのですね。全然そんな印象はありませんが、やはりそういう失敗があっての分解思考なのですね。

菅原: そうです。だって、例えばプログラムに問題があると思ったら、この図にあるように、あるときは本当にネットワークの問題でしたので、何時間プログラムを見直しても、何時間プログラムを改良しても、永遠に直らないということがあったのです。ネットワークの問題なんて10回に1回も起きませんが、どうせまたプログラムでしょうと直し始めてしまうと、実はネットワークの問題をまったく見過ごしてしまって、かけた24時間がまったく無意味になったりするのです。

シバタ: それはもうエンジニアだったらみんなが経験しているあるあるですね。

菅原: そう。思い込みです。

シバタ: 面白いですね。なるほど。

菅原: ですから、毎回必ず何か問題が起きたときは、一番上から考えるという教訓が出来上がりました。

シバタ: なるほど。それはでも、緊急の問題が起こるときは、例えばサーバーが落ちているというのは緊急度が非常に高いわけですよね。

菅原: もう心臓もバクバクします。

シバタ: そうですよね。やはり人間は、そういうときにどうしてもミクロなところに目が行きやすくなりますよね。それを一歩下がって上から見るというのは、ものすごく訓練が必要で、なかなかできるようにならないと思います。菅原さんは何年ぐらい経ったときにできるようになったのですか。

菅原: いや、それは何年というより、ほぼ毎月、ほぼ毎日問題が発生していましたので。

シバタ: (笑)

菅原: しかも、23歳の僕的な言い訳をすると、だって僕らの問題ではほぼないのですよ。当時のインターネットは非常に弱かったので、頻繁にサーバーが壊れたり、ネットワークが動かなくなったりしていましたし、今だったらほとんどあり得ないようなことがすぐに起きていました。一方で、ドコモさんやauさんが少し編集してメニューの上に上げてくれたら、言われもせずにいきなり来るわけですよ。ですから、ほぼ自分たちの問題でないことが突発的に毎日のように起こるという状況でした。

それでもやはりこの達観したというか、冷静なまま問題を上からしっかり切り分けるというのには半年ぐらい時間がかかったと思います。

シバタ: なるほど。でも、逆に菅原さんでさえもやはり半年ぐらいは苦しんだわけですね。

菅原: いやいや、もう痛い目を見ながら、徹夜をしながら。(笑)

シバタ: 分かります。(笑)でも、これはすごく大事だなと思います。私自身の反省も兼ねてですが、どうしてもやはり日々オペレーションに近いことをしていると、目の前のことにどうしても目が行ってしまうのですよね。そうではなくて、一歩引いてこういうかたちで上から見るというか、一歩引いて、自分が今、直そうとしている箇所が本当に直すべき箇所なのかを確認するというのはやはりすごく大事だなと、あらためてこの本を拝見して思った次第です。


その2: 「自分への負荷は悲観的に考えたほうがよい」の本当の意味は?

シバタ: 1つ目の話がすごく面白かったのですが、実はあと2つあります! 2つ目に気になったところが、本の中で「自分への負荷を悲観的に考えたほうがいい」と書かれていて、個人的にものすごく残った言葉でした。

メッセージとしては、自分はこれぐらできるだろうと思って計画を立てると、だいたい自分が思っていたように進まないので、自分が例えばこの仕事は3時間で終わると思っていたのに実際は5時間かかるみたいなことはたくさんあるという話だと思います。この辺りも「小さく分けて考える」でいくと、いろいろな細かい小さなタスクのブロックができていくわけですよね。それぞれの時間の見積もりを見誤ると大変なことになるという話だと思います。この辺についても、個人的に菅原さんの具体的なストーリーをお聞きしたいなと思いました。「自分への負荷は悲観的に考えたほうがいい」という話をもう少し詳しく教えていただけますか。

菅原: ありがとうございます。すごく大きいところから話をすると、僕たちの仕事の価値は、お給料をもらっているサラリーマンの人でもあまり変わらないと思いますが、働く時間×時給だと思うのですよね。もちろん月給の方は働く時間で割ってもらったら時給が出ますので、ほぼ同じになると思います。みんな収入を増やしたいはずですよね。サラリーマンの方だと頑張っていけばいつか出世をして給料が上がるというふうに、給料という1つの数字で見ていると思います。でも、収入を増やす方法は、実は僕たちは、これも小さく分けて考えると、働く時間×時給で表せるわけですよ。

僕も若いときはそうでしたが、だいたいの人は働く時間でなんとかカバーしたいですよね。これがうまくいかなかったら、あと2倍働けばいいと考えがちです。徹夜すればいいと考えがちですけれども、給料は決まっているのでやればやるほど時給が下がっていってしまいます。

今の時代、シバタさんはシリコンバレーにいますし、僕もシリコンバレーの友人や日本での優秀な経営者やエンジニアを見ていると、明らかに1人で普通の人の10倍の仕事のアウトプットができている人がいますよね。なんなら100倍もいますよね。この人たちは僕らの100倍働いているかと言うと、絶対にそんなことはないわけです。なぜならば、僕らが働いている時間は生きている時間の1日の24時間の8時間ももう捧げているので、彼らが僕らの100倍働けるわけがないですよね。そうすると、必ず時給を高くしていかないと、僕たちのアウトプットは価値がないよなとなるのです。

シバタ: まったくその通りだと思います。若い頃は、まだ体力も無限にありましたし、家族もいないので、人の2倍ぐらい働いても平気だったと思います。

菅原: ね!(笑)

シバタ: でも、さすがに歳を取ってきたり、家族ができたり、ましてや人によっては子どもができたりすると、そこまでフレキシビリティがなくなってきますよね。ですから、おっしゃる通りだと思います。そこはもう間違いなく、自分の単位時間あたりのアウトプットというか、価値を上げなければいけないところだと思います。

菅原: ですから、逆にスケジュールを取るときに、皆さんあとで頑張ればいいからと結構楽観的な見積もりをしがちですが、そもそも始めるときにずれがないぐらい悲観的な時間分を取っておかないと、逆に言うと予期せぬ仕事がどんどん増えていってしまいます。

だって、カレンダーに実はバチバチに作業時間や資料作成やミーティングで埋まっているのに、その作業やミーティングが全部伸びていって、例えば2倍ずつ伸びていって時間が足りなくなる人はたくさんいますよね。だったら、きちんと3時間ではなくて5時間かかるという作業時間を入れて、それで残りのミーティングの時間を調整しなければいけません。

そもそも小さく分けて考えてみて、作業が10個あるなら、8個はたぶん怒られないぞとこれはやめて、褒められるような、驚かれるような良い仕事はこの2個しかないから、ここだけちゃんとやろうというように、悲観的な見積もりをした上で、残りのどうせはみ出てできない仕事はやらずにやめてしまうというのも1つ大事だと思います。

シバタ: なるほど。僕は20代の頃、当時サラリーマンでしたが、結構めちゃくちゃな働き方をしていたなと今でも思います。忙しいときは、だいたい朝から夕方の5時か6時ぐらいまでずっとミーティングなのですよ。それ以外の作業は6時以降にやるような、完全に今の例でいくと駄目なパターンだと思います。

菅原: いえいえ。

シバタ: 今はリモートになってZoomのミーティングなどたくさんありますよね。最近はやはり学習して、ミーティングは1日にできれば3時間以内、多くても4時間以内になるようにカレンダーをうまく調整しながら行っています。そうしないと、ずっと1日ミーティングで終わってしまいますよね。

菅原: そうなのです。

シバタ: それはそれでいいのですが、あまりアウトプットしている感じがしないですよね。

菅原: そうです。だから、やはり仕事は選んでいいんだと、だんだん思えるようになってきますよね。どうせ全部できないから。

シバタ: なるほど。でも、これは1つ反面教師的な面もあると思っています。例えば、今の菅原さんやもしかしたら私ぐらいの年齢でそういうことをするのはすごくいいと思いますが、例えば新卒で入ったばかりの人が効率的にやろうと思い過ぎていると、たぶん自分のキャリアの意味で、やはり量が質に転嫁するポイントがどこかでありますよね。

菅原: それは本当に絶対お勧めしないですね。だって、働く時間をどんなにセーブしても、処理できる能力が変わっていないので、その人自身の時給の価値が上がっていないから、それはやはり良くないですよね。

シバタ: なるほど。やはりキャリアのあるタイミングでは、特に新しいことを学習するフェーズのときは、時間を惜しまずに投資するというフェーズも必要ということですね。

菅原: もちろんです。自分の能力は、時給を上げるというのがやはり最大の考え方だと思います。1つ図を出します。

菅原: 上図のように小さく分けて考えていきます。一番上から考えると、これを達成したいという大きな目標があって、そのためには3つぐらいの小さい目標があって、その下にタスクがそれぞれくっ付くような、Googleで言うOKR的なものでもありますが、小さいタスクが中くらいの目標、中くらいの目標が大きな目標に全部つながっている、これが大事だと思います。

でも、きちんとこのように分けて考えていないと下のようになってしまって、がむしゃらに働くのですが、それらは何の目標にも、なんなら大きな目標にもつながっていないことってやはり往々にして起きますよね。

シバタ: 起きますね。

菅原: 先ほどのエンジニアの例のように、プログラムをどんなに見直しても、今回の問題はネットワークの耐久を増やさなければいけなかったのだから、それは直してもまったく意味がなかったとなったりしますので、がむしゃらに働くというのは、上のケースのときにがむしゃらに働かなければいけなくて、下のケースのようにまったく何にも結び付いていないタスクをひたすらやっても大きい目標は達成できないのです。

シバタ: それはおっしゃる通りですね。

菅原: とはいえ、若いときにそんなことばかり言っていて、がむしゃらに仕事をしなさ過ぎて、そもそも社会人の基礎能力や仕事力が何も身に付かずに大人になってしまうというのもすごく危険だなと思うのですよね。

だから、究極的に言うと、若い人は下の状態でもがむしゃらにやって実力をつけつつ、それこそこの本を読んでいただいて、どうすれば仕事が報われるのかなということを上のように考えられるようになるというのが理想な気がします。

シバタ: 本当におっしゃる通りだなと思います。理想は上のようにきれいに分解されている状態で、物事が整理できるようになると、より少ない時間でより価値の高いアウトプットが出せるという状態になると思います。ですから、常にそれは意識しつつも、やはりいきなり上のようなきれいな世界にはそんなにいきませんので、そこに到達するまでは下のような世界であっても、やはりきちんと1つ1つタスクを、上のような世界になることを意識しながら実行するという感じですよね。

菅原: そうですね。

シバタ: 非常に分かりやすいです。ありがとうございます。


その3: 解くべき問題が見つけられない、あるいは問題がないと自分では思っている人へ

シバタ: では最後。これは僕自身も非常にあるあるですが、解くべき問題が見つけられない、あるいは問題がないと自分では思っているケースが多々あります。プロから見ると、ここに問題があるということは分かっているのですが、当の本人は何が問題なのか分からない、あるいはそもそも問題がないと思っているという、その話がこの本の中にも出ていて、すごく面白いなと感じました。

問題が見つけられないとき、あるいは自分は問題がないと思ってしまっているときにどうすべきかという話をしていただきたいと思います。

菅原: 毎日をわりと満足して生きていると、問題なんてないですよね。

シバタ: ないですね。(笑)

菅原: 僕は今、アドバイザーとしていろいろな会社の経営者とお話させていただくのですが、やはり一緒に頑張って仕事をしよう、プロジェクトを進めようと始まる経営者の方の特徴は、やはり問題がある経営者さんです。だからこそ、その問題を解決して、より成長に結び付けられるということだと思います。

問題とは何かと言うと、理想と現実のギャップです。こうなりたいのだけど、今、うちの会社はここまでしかいけなくて、ここがうまくできないということが問題なわけです。ですから、問題がないと言っている人は、ある種理想がないと言っているのと近いと思います。だって、今で満足なわけですから。

シバタ: それは面白いですね。でも、今に満足している人は、理想がなくてもある意味ハッピーなわけですよね。

菅原: そうですね。

シバタ: そういうときはどうしたらいいのですか。どのようなアドバイスをされるのですか。

菅原: そうですね。個人の働く人で、もし問題がなければ、別にあえて頑張らなくてもいいとは思います。とはいえ、何かもやもやしていて、やはりこの本を読みたいとか何か変わりたいと思うから、この対談記事も見ているし、この本も手に取ろうか迷っているということだとしたら、ちょっと考え方のヒントとしてはこういうのがあります。

菅原: 理想や目標というのは視点の差だと思っているのですよね。下からいくと、やはり個人の視点、事業の視点、会社の視点、業界の視点、社会の視点というように大きく5つぐらいに分かれると思います。

個人の視点は、これは問題に書いたのですが、「今日疲れたな、もっと楽になりたいな」といった個人的な問題だったり、もしくは毎日目標も達成しているし、もしくは会社に怒られないし、もしくは毎日楽しいから何の問題もないと思っている、そういう状態が個人視点だと思っています。

もう1つ視点を上げると、やはり皆さんが置かれている立場の事業の視点で、「この事業の売上はどうすればもっと増えるのだろうか」と考えることですよね。もしくはこの事業が会社の役に立つにはどうしたらいいのだろうかということだと思います。

次に会社の視点というのがあって、会社の視点はさらにもう1つ上を見ていますので、この会社で業界No.1になりたいとか、この会社の売上を増やしたいとか、目標が出てきたときに初めて、現状はまだ会社は業界の2位だから問題があるとか、売上があと2倍にならないから問題があるとか、そのように考えられると思います。

さらに業界の視点に立つと、この業界が社会に役立つ業界になるにはどうしたらいいか。もう1つ上の社会視点は、もっと多くの人の役に立つにはどうしたらいいか。このように考えていくと、上に行けば行くほど、やはり視点が高く、当然目標は高くなりますので、ギャップがどんどん出てきて問題が生まれるということですよね。

シバタ: なるほど。これはすごく面白いですね。やはり問題が見つけられないのは理想が分からないからだという話だったと思いますが、「理想はどのように見つけたらいいですか」「ゴールはどのように決めたらいいですか」というのは、たぶんいろいろな人が思いますよね。

この図2-6のフレームワークはすごく面白くて、やはり個人視点で見えていると満足しているときでも、事業視点で見るとまだやることがあるとか、事業視点では満足できているけれども、会社視点で見るとまだやることがあるとか、そのように視座を上げていくと、自分の理想やゴールがだんだん見えやすくなるという、すごく分かりやすいフレームワークだなと思いました。

ゴルフでも同じですよね。僕は、最近よくゴルフをしますが、僕はすごく性格的にもコンペティティブですので、なるべく短い時間でスコアを良くしたいと思うわけですよ。自分のスキルを上げたいと思って練習もしますし、コースにも行きます。でも、周りを見ていると、「いやもうコースでゴルフしていて気持ちいいから別にスコアはいいや」という人も当然いるわけですよね。その人たちに「ゴルフうまくなろうよ」と言っても、「いや、俺は別に楽しいからいいや」という感じなのです。そういうことなのかなと思って、今お話をお聞きしていました。

菅原: そう思います。これが世界中で一番上手なのがイーロン・マスクだと思います。

シバタ: そうですね。(笑)

菅原: CO2がこのまま増え続けたら地球はどうなるんだと考えてaテスラをつくり、それでも駄目なら火星に逃げなくてはいけないからスペースXをつくりというように、壮大な妄想をもとにした社会視点の問題解決をし続けているわけですよね。

シバタ: Twitterの買収も、一応、言論の自由という社会視点が一番上にあるわけです。言論の自由に関しては、CO2の問題ほど科学的な問題ではないので、賛否両論出て、今、Appleともめているようですが…。

菅原: もめましたね、最近ね。

シバタ: いろいろあるとは思うのですが、そういうことですね。おっしゃる通りです。すごく面白いですね。

菅原: もう少しだけいいですか。広告業界では、ものすごくこの問題が起きたのです。みんな事業や会社視点で変な広告でもいいから、例えばアプリでたくさんプッシュ通知を消費者に送りつける、なんとなくタップしてもらって2秒画面が開けば広告費を稼げるから、どんどん変な記事をたくさんつくって見せようとか。結構まともな上場会社もそんな考え方で広告をしていました。

でも、社会から見たら、もしくは社会と個人というのは一番離れていますけれども、社会の構成要員は個人ですので、個人が嫌になったり、社会が嫌になったりして、「もうあんな広告見たくない」というふうになりました。すると、業界は初め全然そちら側を無視していたのですが、その瞬間に業界団体が規制をし始めました。

方向で言うと、例えばこちら側で「もういいよ。悪いことしていれば」と個人や事業や会社がずっとこちらを見ていたのですが、あるとき社会が「いや、それは駄目じゃない?」と言いだして対立し始めたので、業界は上で見過ごしていたのですが、「やはり駄目だから、規制かけます」と言った途端に一気に変わりました。

やはりそういう会社は売上をものすごく落とすわけですよね。個人視点や社会視点がなく、売上だけを追い求めるような一過性の事業でやっていると、あるとき社会視点や業界視点でそういう事業はできなくなってしまいます。

やはり個人で見ても、会社の言いなりになるだけではなくて、きちんと社会の一要素として一要員として悪いことはやめていかないと、ある日転職さえできないようなキャリアやスキルのまま、会社の売上が下がるということもありますので、こういうのはぜひ気を付けて、この図をもとに考えてもらえたらいいのではないかと思います。

シバタ: なるほど。この図は本当にいいフレームワークだなと僕も思います。日々自分の目の前のことばかり見てしまうと、個人や事業、せいぜい会社ぐらいまでしか見えていなくて、その上の業界や社会の話がどうしても見えにくくなってしまうと思います。ですから、こういうのは定期的に見て、上からきちんと広く見る癖をつけなければいけないとあらためて思いました。


『小さく分けて考える』ぜひ実践してみてください!

シバタ: 今日は、この『小さく分けて考える』という素晴らしい本の中から、私が気になった3カ所について深堀りさせていただきました。どれも本には書いていないようなちょっとした裏話的な内容もあったりして、個人的にはとても楽しくお話をいただけたと思っています。
この記事は本の発売日当日(12月8日)に出ますが、もしかしたらAmazon、楽天ブックスでは在庫がなくなってしまっているかもしれません。でも、その場合も早めにご注文いただくほうがいいのかなと思っています。

先ほども申し上げました通り、予約の段階でAmazonの総合1位、カテゴリーではなくて総合の1位になっている本です。内容もすごく面白いですし、売れる本だと思いますので、ぜひ皆さん、年末の振り返りと来年の目標などを語る前にご一読いただくと、とても役に立つのかなと思いました。

今日は、菅原さんにお越しいただいて、『小さく分けて考える』という新しい本の中を深堀りしてお話をさせていただきました。菅原さん、あらためてありがとうございました。

菅原: こちらこそ、ありがとうございます。ぜひ記事を見た皆さんは、読んで実践をしてみてください。誰でもすぐにできると思います!

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