見出し画像

なぜアマゾンは「キャリア決済」に対応するのか?

今年4月に開催されたヤフーの通期決算発表で、ソフトバンクのスマホユーザーはヤフーショッピングにおけるポイント還元が継続的に10倍のままになるという発表がなされました。

遡ること6年前、ヤフーショッピングは購入代金の支払いをソフトバンクのキャリア決済で行えるようにするという発表もありました。
*Yahoo!ショッピングでソフトバンク携帯電話の決済サービスが利用可能に!(2011/12/13)

ヤフーが今回発表した一連のヤフーショッピングに関する発表は、ECと携帯キャリア決済の相性の良さを物語っていると思います。

それに続いて、ドコモとauのユーザーはアマゾンでの買い物を携帯のキャリア決済で行うことができるようになるという発表がありました。

*Amazon.co.jp、5月中にドコモのキャリア決済対応へ(ケータイWatch 2017/5/24)

*auのキャリア決済も「Amazon.co.jp」で利用可能にケータイWatch 2017/5/24)


今回のnoteでは、「なぜアマゾンと携帯キャリアが手を組むことになったのか?」という背景を少し掘り下げてみたいと思います。 


依然として低い日本のEC化率

先日KPCBが発表した「Internet Trends 2017」(全部英語です)にこんなスライドがありました。

各国のEC化率を表したグラフです。これを見るとアメリカは10%を超えており、中国に至っては15%に到達する勢いですが、日本に関しては約7%程度と未だに低い水準であると言わざるを得ません。

これだけスマホが普及していて、物流は大きく改善され、特に日本の都市部においては当日配送も可能になっているにも関わらず、インターネット後進国であった中国にも及ばないEC化率であるというのは一体なぜなのでしょうか?

商品の品揃えも十分に増えてきており、物流も十分に発達してきているわけですから、考えられる理由は決済が面倒であると考えるのが非常に合理的な発想なのではないでしょうか?

ECサイト側から見ると、これらの提携をしたい理由は二つあるような気がします。


理由1: 非クレジットカードユーザーが狙いか

一つ目はクレジットカードを所有していない、あるいは所有できないユーザーとクレジットカードでの支払いが嫌いなユーザーを取り込みたいという発想です。

日本ではクレジットカードの利用率が14%と、アメリカの54%、韓国の58%と比較すると段違いで低いままであり、またスマホでの決済もまだあまり普及していないとも言えますので、決済方法がボトルネックになっている可能性が非常に高いわけです。
*参考:カード利用率 三井住友カード調べ


例えばクレジットカードが作れない。あるいは限度額が低い大学生がECサイトで買い物をしようとすると、必然的に銀行かコンビニの振込か代引きを選ぶ必要があります。

振込には手数料がかかりますし、代引きの場合は代引き手数料に加えて商品を受け取る際に自宅にいなければならないという物理的な制約があります。

これらの理由はECを利用しない十分な理由になってしまうと考えられますので、そういったユーザーを取り込むために携帯キャリア決済を導入するというのは自然な考え方だと思います。

この点に関してはZOZOTOWNが「ツケ払い」を導入した理由と合致する気がしています。
*参考:以前のnote「ZOZOTOWNの「ツケ払い」が凄い件(推計月間●億円も利用)」(2017/02/16)


理由2: 決済+配送情報の(自動)入力か?

非クレジットカードユーザーを取り込む以外に、もう一つ理由があるかもしれません。

スマホ上でECの買い物をしようとすると、決済方法と配送先の入力が非常に手間と感じることが皆さんも多いのではないでしょうか?

これから可能性として考えられるのは、個別のECサイトにユーザー情報を登録しなくても、携帯キャリアに登録してある住所をECサイトに渡すことを許可すれば配送先が自動的に入力される。という連携は十分考えられると思います。

携帯キャリアは決済方法だけでなくユーザーの住所をかなり正確に把握しているため、この二つの情報をECサイトに連携させるだけでユーザビリティーが大きく向上するのではないかという話です。

逆に言えば、これまでアマゾンを使ったことがないユーザーも携帯キャリア決済を利用することで面倒なユーザー登録が不要になるのであれば、スマホでの購入プロセスが非常に簡単になり、利用者が増えるのではないか?と言うことです。


携帯キャリアとしては「サービス売上」向上へ

一方で携帯キャリアとしても大きなメリットがあります。

携帯キャリアの提供するサービスのうち、音声とデータ通信に関しては主要3社であまり大きな差別化をしにくくなっているのは事実でしょう。

また音声とデータ通信に関してはMVNO(=Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者。大手キャリアから通信回線を借りることで格安に回線を提供している事業者。いわゆる格安SIM。)による価格競争が非常に激化しているのも事実です。

そこで、各キャリアとも重視しているのが「サービス売上」になります。これは昔で言うところのドコモのiモードなどの決済手数料に該当します。

携帯キャリアとしては、このサービス売上の部分もアップルのApple PayやグーグルのAndroid Payに奪われてきているわけですが、ここに来て少しでも昔のiモード時代のような状態に戻したいと考えるのは合理的だと思います。

今回の連携の場合、キャリア決済で支払いがなされたアマゾンの売上のうちXパーセントを携帯キャリアに決済手数料として支払うという契約になっているかと考えます。

アマゾンの取扱高は非常に大きいため、携帯キャリアとしては利幅が小さくても売上増が見込めるのではないかという点と、アマゾンと連携をしたという事実が他のECサイトなどと交渉する際に非常に大きなメリットになると考えられます。


App Storeも遂に日本で携帯キャリア決済対応へ

参考までにドコモとauは、Google PlayだけではなくApp Soreもキャリア決済に対応するという発表をしています。

日本の携帯キャリアマーケットは、プリペイドはほとんど存在せず、ほぼ全てがポストペイドであり、かつユーザーの未払率が非常に低いというかなり特殊なマーケットです。携帯キャリアは、その強みをこれからどんどん活かしてサービス売上を上げていく努力を強化しているとも言えるでしょう。

アメリカの場合は、携帯キャリアが日本ほど強くないため、こういった形でサービスやECでキャリア決済が利用されるというのはまだまだ遠い先のような気がします。


----------------------------


1ヶ月あたり4〜8本の有料ノートが追加される予定の「有料マガジン」もあります。是非ご覧ください。

気に入ってくださった方は、↓から「スキ」「フォロー」してください!

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

ツイッターで決算に関する情報を発信しています。ぜひフォローしてください!