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Q. 40%ルールを下回るSaaS企業が増加、大幅下落のラクスの決算が実は悪くない理由とは?

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ヒント:積極的な投資を行うと、40%ルールの数値が悪化したように見えることがあります。

この記事はカネコシンジさんとの共同制作です。

8月に入り、国内SaaS企業の2021年前半の決算が一通り出揃いました。

注目すべきは、SaaS企業の健全性を示す「40%ルール」を下回る企業が増加したことです。40%ルールとはSaaS企業の成長の健全性を示す指標で、数式で表すと以下のようになります。

売上成長率 + 営業利益率 ≧ 40%

この式の意味を大まかに言うと、「SaaS企業は高い売上成長率があれば営業利益率が多少低くても事業として健全である。しかし、売上成長率が停滞した場合は高い営業利益率を求められる」です。

今回の記事では、2021年5月に本マガジンで取り上げた「Q. 【国内SaaS決算】事業の健全性を示す3つの主要KPIが急回復した企業はどこ?」に続いて、日本のSaaS企業の40%ルールに着目し、各社の成長速度を比較・考察します。

まず記事の前半では、国内SaaS企業14社の40%ルールの数値を横で比較し、要素ごとに詳しく見ていきます。

そして記事の後半では、今四半期の40%ルールの数値に大きな変化があったラクスに注目して、その原因やその背景にある戦略を探っていきます。


国内SaaS企業の40%ルール

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それでは、各社の40%ルールの数値から見ていきましょう。

ここからは2021年8月17日に時点で各社が公開している最新の決算書をもとに、数値を比較していきます。

直近四半期の決算で40%ルールを満たしていたのは、スマレジ・ラクス・マネーフォワードの3社でした。

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では、40%ルールを売上成長率と営業利益率に分解してみましょう。

スマレジは売上成長率が39.99%、営業利益率が25.17%といずれも高水準のため、40%ルールの数値は65.16%と他社から頭一つ抜けています。

また、ラクス、マネーフォワード、プレイドの数値がスマレジと比べて低いのは、営業利益率が低いことが原因であるとわかります。

他にも、フリーとヤプリは売上が大きく成長しているものの、営業利益率が大きくマイナスとなり、40%ルールを満たしていません。

フリーの営業利益率がマイナスとなった原因は、中長期的なユーザ基盤の拡大のために、ブランディング施策を多数行ったためです。

ヤプリの営業利益率がマイナスとなった原因は、TVCMの投資を実施したためです。

このように、両社は現在、セールス&マーケティング費用を大きくかけることで、利益計上よりも売上拡大を優先していることが伺えます。


40%ルールの四半期比較

次に QoQでの40%ルールの変化を比較してみましょう。

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ここでは、40%ルールがQoQで減少した企業の中から、特に注目の企業としてラクスとヤプリの数字を詳しく見てみます。

ラクスの40%ルールはFY21Q1は61.24%、FY21Q2は44.59%となり、QoQ-16.65%と大幅に減少しています。これは、営業利益率の減少が原因です。

ラクス営業利益率
・2021年1-3月 25.64%
・2021年4-6月 11.25%(QoQ -14.39%)

ヤプリの40%ルールの数値もFY21Q1は17.09%、FY21Q2は-1.61%となり、QoQ-18.70%と大幅に減っています。こちらもラクス同様、営業利益率の減少が原因です。

ヤプリ営業利益率
・2021年1-3月 -14.58%
・2021年4-6月 -43.89%(QoQ -29.31%)

なぜ両社の営業利益率が大きく減少したのでしょうか?決算資料から読み解いていきたいと思います。


ラクスの決算

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まずはラクスの直近の損益計算書を見てみましょう。

ラクスの営業利益が減少した理由は、過去最大の広告宣伝費を投下したためです。

広告宣伝費
・2021年3月期Q1 1.98億円
・2022年3月期Q1 8.07億円(YoY +407.5%)

具体的な広告宣伝費の内訳は公開されていませんが、現在も全国で放送されているテレビCMが大きな割合を占めると予想できます。


ヤプリの決算

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次にヤプリについて見てみましょう。

2022年3月期Q1の営業利益は-3.4億円で、YoYで-2.3億円です。

営業利益率のマイナス幅が拡大しているのは、TVCMを含めた広告宣伝費を大きく投下したためです。営業利益率の低下は計画通りであると決算資料に記載されています。


セールス&マーケティング費用の四半期推移

これまで見てきたように、40%ルールの数値はセールス&マーケティング費用に大きく左右されます。

前半の最後に、今四半期40%ルールの数値が10%以上下落してる4社の広告宣伝費に注目してみます。

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QoQで比較すると、4社とも広告宣伝費が増加しているため、利益確保よりも顧客獲得のためのマーケティング投資に積極的であることが伺えます。となると、これらの積極的な投資が顧客獲得にしっかりつ結びついているのかがポイントとなります。

ここまでは、国内SaaS企業14社の40%ルールの数値を比較しながら、QoQで40%ルールが大きく下落した企業の原因を探ってきました。

後半では、今四半期の40%ルールの数値に大きな変化があったラクスに注目して、その下落の原因と事業の健全性を分析していきます。果たして、積極的なマーケティング投資は、顧客獲得に結びついているのでしょうか?

この記事は、SaaSビジネスに携わっている方、SaaS企業のビジネスモデルに興味がある方、決算情報からKPIを読み解く分析に関心がある方に最適な内容になっています。


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・Q. 40%ルールがQoQで大幅下落のラクスの決算が実は悪くない理由とは?の答え
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・Q2以降の戦略は、さらなる広告投資を実行
・まとめ

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