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フィットネス業界に見るサブスクリプションとシェアリングエコノミーの補完関係(後編)

今日は都度課金フィットネスアプリNupp1 Fit を立ち上げた柿花さんとの対談第2回目です。
第1回をご覧になってない方はこちらからご覧いただけます。

フィットネス業界に見るサブスクリプションとシェアリングエコノミーの補完関係(前編)

・サブスクリプションが常識のフィットネス業界で従量課金型のアプリを開始
・なぜ無かった?月額固定費無料、従量課金のフィットネスジム
・フィットネスジムにおけるユーザーペインの解消: サブスクリプションとシェアリングエコノミーの境目

15円からジムに通える Nupp1


ジム側がシェアリングエコノミーに参加するメリット1: ミスマッチによる退会を減らせる

柿花: 一つ目は「お試しが気軽に出来るのでミスマッチによる退会が減らせる」という事でジム側には喜んで頂いていますね。

普通のジムではビジターとかお試し体験入店とかが入口になりますが、費用は安いんですけど、試すだけのために手続きが非常に手間なんです。住所や緊急連絡先など結構な量を書かされ、30分~1時間くらい説明を受ける。やっと1時間くらいトレーニングしたと思いきや、その後、実際に入会するかの交渉をされたり、より高いプランに引き上げるための面談をされたりする。

シバタ: 全てが月額プランをサブスクリプションで売るために設計されているわけですね。

柿花: はい、そうなんですよね。これが日本のビジターの入り口。大体それで入ってしまう人と入会しない人に分かれると思うんですね。従量課金制ならまずここで入会を辞めてしまう人を拾える。そして、お試しの手続きの手間も減らせるので、いろんなジムを試しやすいということになり、ミスマッチによる退会も減らせるんです。


ジム側がシェアリングエコノミーに参加するメリット2: 月額会員にはインセンティブ

シバタ: 僕がジムの人だったら、月額会員減ったらほんと困るのでごめんなさいって言いたくなりそうな気もするんですけど。

柿花: 収益ポイントでもある幽霊会員が減っちゃうという問題で言うと、従量課金ユーザーの単価は、分単位でみるとビジターよりも月額会員よりも、少し高く設定するんです。そうすると月額会員制のユーザーが逃げない、というので、ジム側には納得頂いていますね。月額会員ユーザーにはインセンティブがあるので、減らない。少し割高でも来てくれるユーザーに関しては、新しいユーザーになるだろうと。

シバタ: なるほど。この人たちはどうせ月額会員にはならないけれどもちゃんとお金を払って来てくれるユーザーだから、今まで取れていなかったユーザーが取れると。そういう考え方、お客さんとのタッチポイントが増えると。それは面白いですね。


ジム側がシェアリングエコノミーに参加するメリット3: 退会後も通いやすく

柿花: もう一つ、大体ユーザーは5割くらいが5ヶ月とか半年くらいで退会するというデータがあります。

シバタ: 5ヶ月。ジムのライフタイムって5ヶ月しかないの?それめっちゃ短いですね。出会い系サイトみたいな感じだ。

柿花: そんな感じですね。結構コストかけてユーザーもとってるんですよ。でも5ヶ月くらいでやめていく。

シバタ: 面白い話だからちょっと言っておくと、出会い系サイトはベンチャーキャピタルがあまり好きじゃないモデルなんですよ。なんでかっていうと、ライフタイムが短いんですよ。出会っちゃったら逃げちゃうので。あんまり長い期間、出会えなさすぎても逃げるじゃないですか。解約が織り込まれているユーザーモデルなので、サブスクリプションとしてはすごく儲かるんだけどVCがあまり好きじゃないっていう話。

話を戻しますが、ジムって半年しかライフタイムはないんですか?

柿花: ジム側に聞くと、大体そのくらいが平均と言っていましたね。そして、やめたあとに接点がなくなるんですよ。

シバタ: うん、まあそうですね。

柿花: なので、最近だったら店舗側にこんな使い方やってみて面白いんじゃないかって言われているのが、退会者が退会するときにこのNupp1 Fitを紹介して、「またうちのジムをちょっとでもいいから使ってください」みたいに退会後の接点を増やせるんじゃないかと。

シバタ: 確かに。月額会員のフルコミット。時間もお金もフルにコミットをするのはもう無理だけど、別にあなたのこと嫌いなわけじゃないので。だから、男女関係でいうと、付き合っていて別れちゃったけどまだお友達ではいてね的な感じですよね。必ずしも一切連絡取りませんってならなくてもいいっていうことですよね? 元カレ、元カノがたまにちょっとメッセージを交換する的な。そういう関係になれるのがこのNupp1 Fit?

柿花: 恋愛関係に置き換えると本当にその通りなんです(笑)

シバタ: なるほど。でも逆の場合もあって、まだ付き合ってないんだけど男女関係になる前だけど別に普通に友達のメッセージを交換するっていう間柄がないとですね。

柿花: はい。だから恋愛関係でいくといっぱい相手と話してみて、やっぱりこの人がいいからそこの月額になってもいいよっていう。

シバタ: でも月額の会員になっちゃったらNupp1 Fitのビジネスはなくなっちゃうわけですよね。それはいいんですか?

柿花: 今はまだリリースはしていないんですけど、何回か通ったら”そこのジムの月額会員になったほうがお得ですよ”っていう表示をさせる予定です。。そしてウェブ入会をしてもらって、実際に利用する際は、都度利用の時と同じように、チェックイン/チェックアウトをNupp1 Fitの端末からやってもらいます。収益モデルは、会員の間、月額会費から一定の手数料をジム側からいただく予定です。


ジム側がシェアリングエコノミーに参加するメリット4: 本人確認認証を一括で

柿花: ちょっと忘れていたんですけど、僕たちのモデルってまず本人確認認証を取らないといけないんですよ。

シバタ: 会員になるのにですか?

柿花: ジムって各ジムごとに個人情報を書きますよね。いろいろと。でも、僕たちはアプリの中で個人情報をNupp1として取得します。そうすることで、各ジムが何か事故があったときや盗難などあった場合に提供出来ます。

シバタ: ジムは、ジムに来てフィットネスする人が誰かわかっていないと困るんですか?それはなんでなんで?何かあったときに困る?

柿花: そうです。事故があったときとかに絶対に必要な要素。なので、僕らはそれの確認を一括で取らせていただいて、各ジムにはどの方が今入っている。何かもし緊急になった場合には、その情報をご提供できるように。

シバタ: それ結構重たそうですね。本人確認をちゃんとやるっていう話は。

柿花: そうですね。なので、そこに関しては重たいんですけど、そこを一挙に引き受けることによって、ユーザーさんの利便性が高くなると思っています。あとは、各ジムごとに利用規約が違うんですよ。なので、ジムにORコード端末を置いているんですけど、QRコード端末を初回かざしてもらうと、各ジムの利用規約というのが出てきますので、それを同意してからスタートになります。

シバタ: なるほど。その辺のバックオフィスがシェアリングエコノミーならではの結構重たい話があるんですね。面白いですね。でも、さっきの話でサブスクリプションという非常に高いハードルがあるフィットネス業界の場合、サービスを発表してリリースしただけでユーザーからちゃんとフィードバックが来るというのは面白いですね。従量課金型がほしい人が結構いるということですよね。

柿花: そうですね。私たちも、たくさんお声をいただいて、サービスにニーズがあるということが確信できてきました。

シバタ: 面白い。ありがとうございます。まとめると、サブスクリプションってすごくハードルが高くて、一部のヘビーユーザーで本当に時間もお金もコミットする人にはいいんだけど、そうじゃなくてもうちょっとライトに使いたい人が使えないというケースがあって、そこが実は大きいんじゃないかっていう話ですよね。なので、従量課金かつシェアリングエコノミーみたいな市場がある。と。


フィットネス市場の市場サイズ

柿花: マーケットサイズの話をちょっとだけすると、大体日本のフィットネスの参加率って3.3%なんですよ。

シバタ: めっちゃ低いですね。

柿花: 5年連続3%台なんです。でも業界ではこの3.3%をどうにかしないといけないっていう傍ら、幽霊会員で儲かっている仕組みじゃないですか。でやると、結構せめぎ合いなんですよね。アメリカは17.6%です。

シバタ: アメリカ人、体が大きい人多いのにフィットネスしようとしていますよね。

柿花: これって、体鍛えておかないと、シバタさんもアメリカですけど医療費高いですよね。

シバタ: 高いですね。

柿花: 保険料とか医療費が高いのがあると思っていて。イギリスは日本より人口が低いと思うんですけど参加率は14%とかなんですね。会員数においても日本の2倍くらいなんですよ。マーケットサイズもそんなに小さくなくて、日本は2016年で4,500億円くらいあります。今は24時間ジムの進出などで6,000億のマーケットまで拡大しています。

アメリカは6倍くらい規模があるので、2.7兆円くらいあるんですけど。日本の参加率が本当にアメリカサイズくらいまで行けば、2兆円マーケットくらいになる予定なんですよ。ただ、アメリカは大体、月5,600円くらいが平均で、日本は1万1,200円が平均って言われているんですけど、これが半減するので、僕たちのサービスみたいなのが出てきて、アメリカくらいの通いやすい5,600円くらいまでの単価になると1兆円くらいまでのマーケットに広がるんじゃないかなと。

シバタ: この話も面白いですね。なんで日本はこんなに参加率は低いんでしょうか?

柿花: まず大きくは、入会金・月額費・継続縛りの問題は大きくあるとおもいますが、さらに深掘ると、日本の参加率が低いのって健康に対しての、必要性がまだわかっていない。なんで健康でないといけないのかっていうのは多分ないと思うんですよね。アメリカは保険の問題があると思うんですけど。日本は、保険料も医療費も安いから、必要に迫られていなくて、よりフィットネスとかワークアウトが身近ではない。気軽さがない。

まだ日本って「ワークアウト」ってなんなのかとか「鍛える」とはなんなのかっていうのが、ファッションほどは身近じゃないと思うんですよね。アメリカはそれができている。ファッションのように身近なものみたいなのがあるんです。


日本のユーザーニーズの変化: 特定のものにコミットするのではなく、少しずつ様々なことを試したい

柿花: 結構、シバタさんはアメリカでいろいろやられているじゃないですか。ジャンルって結構多様化しています?

シバタ: していると思いますけど、でも普通のフィットネスがメインなんじゃないですか。それ以外のアクティビティはいろいろあると思うんですけど。

柿花: 日本ってサービス重視をやってしっかりとジャンルを多様化させていると思っていて。総合フィットネスだったりとか、パーソナルがあったりとか暗闇系が流行っていたりとか、24時間型が出てきたりとか。結構いろんなジャンル多様化していると思うんですね。あと、フィットネスジムさんに聞いた話ですが、結構若い子ってすぐやめるらしいんですよ。特に、これは暗闇系においてなんですけど、やってみたけど別にずっと行くものでもない。「流行っているからちょっとやってみたい」みたいなニーズがあります。

シバタ: 確かに、若い子のほうが1つのジムにずっと毎日通ってというよりはいろんなことをちょっとずつつまみ食いしたいっていうのはあるかもしれないですね。

柿花: ユーザーのニーズでいろいろいきたいなっていうのはあると思うし、で、例えばなんですけど、パーソナルジムがプールとかなかなか導入できないじゃないですか。

シバタ: いきなり入れないですね。プールの分の土地買わなきゃいけないですもんね。

柿花: そうですよね。じゃあパーソナルジムが暗闇系やりたいといってもそのプログラム取り入れるのも一苦労じゃないですか。箱も必要だし。でも、そういうのを含めると、いろんなものを試したいというニーズも出てきているんじゃないかなと。このサービスがそれを満たしてくれると思っています。

シバタ: 確かに。面白いですね。今日はありがとうございました。


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Disclaimer: シバタはLlotheo株式会社の株主で利害関係者です。

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