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米中「食テック最前線」人工肉やロボットシェフが示す未来〜テクノロジーの地政学・全文公開#6

今、政治や経済で中国企業が話題に上る機会が増えています。背景にあるのは、中国のテクノロジー産業が急速に発展し、米国や日本の脅威になりつつあるという事実です。一方で、中国企業はシリコンバレーおよび米西海岸の企業群と密接に絡みながら(影響を受けて)進化を遂げてきたという側面もあります。

私シバタナオキと吉川欣也さんが出版した書籍『テクノロジーの地政学 シリコンバレーvs中国、新時代の覇者たち』は、このシリコンバレーと中国のテクノロジー動向を深掘りしてまとめた一冊です。全6章を毎週1章ずつ、小分けにしてお届けする「全文公開」をご覧いただき、役に立ちそうと感じたら、ぜひ書籍をお買い求めください。

今回は、最後の章となるChapter06:農業・食テックの内容を全文公開します。

この記事の目次

・書籍『テクノロジーの地政学』とは?
・全文公開Chapter06:農業・食テックの概要
・農業・食テックのマーケットトレンド
  シリコンバレー編/食料不足や価値観の変化。テック企業が挑む世界的課題の解消
  中国編/「農と食の課題大国」をテクノロジーが救う
・農業・食テックの主要プレーヤー
  シリコンバレー編/AI、ロボット、バイオ関連のスタートアップが躍進
  中国編/企業も投資側も「安全・高品質・便利」を追求する
・農業・食テック分野の注目スタートアップ
・未来展望
  中国編/アレスカライフの取り組みに学ぶ、農業テックの可能性

書籍『テクノロジーの地政学』とは?

本書は、2018年6月~9月に我々が主催したオンライン講座「テクノロジーの地政学」を書籍化したものです。講座では、以下に記す6分野を中心に、シリコンバレーと中国それぞれのマーケットトレンドや主要プレーヤーを解説しました。

 Chapter01:人工知能(全文
 Chapter02:次世代モビリティ(全文
 Chapter03:フィンテック・仮想通貨(全文
 Chapter04:小売り(全文
 Chapter05:ロボティクス(全文
 Chapter06:農業・食テック

なぜ「シリコンバレーvs中国」の比較形式にしたかというと、この2地域の企業動向が、今後の世界経済を確実に左右すると見ているからです。私たちがそう考える理由は2つあり、詳しくは以下のエントリで説明しています。

話を戻して、本書は上記した6分野ごとにシリコンバレーと中国の現地情報に精通した「ゲスト解説」をお招きして、

 ・マーケットトレンド解説(シリコンバレー編/中国編)
 ・主要プレーヤー解説(シリコンバレー編/中国編)
 ・各分野の注目スタートアップ
 ・未来展望(ゲスト解説と我々による議論)

の4つをまとめています。

今回取り上げるChapter06:農業・食テックの全文も、この構成に則って紹介しています。ここでは文章だけを抜粋していますが、書籍では「シリコンバレーvs中国で各分野の動向を見開き比較」している他、「市場調査会社が出している最新データ」「主要プレーヤーが開発する製品の説明画像」もふんだんに盛り込んでいます(サンプルページは以下です)。ぜひお手に取ってみてください。

全文公開Chapter06:農業・食テックの概要

ここからは書籍『テクノロジーの地政学』のChapter06:農業・食テックの章を紹介していきます。

テクノロジーによる既存産業の変革は、いまや食品製造、農業分野にまで及んでいます。ここでは、アグテック(AgTech=AgricultureとTechnologyを掛け合わせた造語)や フードテック(FoodTech=FoodとTechnologyの造語)と呼ばれる新産業の動向を紹介しましょう。

《この章のポイント》
■ シリコンバレー

将来の人口増加に向けて食料生産力の向上に動く
植物由来の「人工肉」生産などに大物経営者が出資

■ 中国
食品偽装が頻発し、「安全」「高品質」が人気に
「食×テクノロジー」領域の特化型VCも登場

《この章のゲスト解説》
■ シリコンバレー編
ITOCHU International Inc.(伊藤忠インターナショナル)
ICT & Financial Business Division
土川哲平氏

慶應義塾大学商学部を卒業。米の通信機器メーカーなどを経て、2004年、伊藤忠商事株式会社に入社。2007年~2009年まで米国ITOCHU Technology Inc.(現ITOCHU Techno-Solutions America)に駐在。以後一貫してVCへの投資およびスタートアップへの戦略投資に関する業務に従事。帰任後の伊藤忠商事株式会社本社勤務に続き、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社への出向を経て、2017年12月より現職。

■ 中国編
Alesca Life Technologies Limited(アレスカライフ・テクノロジーズ)
Founder & CEO
小田 剛氏

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校 国際関係・ビジネス経済学部を卒業後、メリルリンチ日本証券株式会社に入社。投資銀行部門にて企業経営戦略、格付アドバイザリー、資金調達およびM&Aに携わった後、2011年にDell Chinaへ転職して新興国経営戦略や事業展開業 務に従事。2013年には農業のデータ化・効率化・現地化を目標としたAgTechスタートアップのAlesca Life Technologiesを起業。中国・中東・アフリカでの事業展開、プロダクト開発、資金調達および業務提携を担当しつつ、エンジェル投資家としてBindez(ミャンマー)、Level Skies(米国)、Tradove(米国)の株式・ICO資金調達にも携わる。

農業・食テックのマーケットトレンド

■ シリコンバレー
シリコンバレーと農業・食品製造は一見無縁に思えるが、人間の生活の根幹を成す分野だけに参入企業が増えている。背景にあるのは世界的な課題だ。

【資金調達】
世界の農業テック、2017年の調達総額は約437億円


米CB Insights調べ(2017年)。農業テックへの投資額は年々増えており、2017年は過去最高額を記録。投資案件数も2017年だけで62件に上った。

【成長要因】
2050年までに98億人を支える食料生産力が必要に


「世界人口予測2017改訂版」によると、世界の人口は2050年に98億人まで増加すると予測される。そこでテクノロジーを使った食料生産力の向上が求められるように。

【成長要因】
「AI・ロボット×農業」の実現に大企業が動く


従来型の農業にイノベーションを起こすべく、主に農業機器メーカーや化学メーカーがAI・ ロボット分野に強いスタートアップを買収する動きが加速している。

【注目分野】
ビル・ゲイツ氏ら著名人がクリーンミート開発に出資


上記の人口問題に加えて、ヴィーガン(絶対菜食主義者)など食生活で主義・嗜好を表現す る人も増える中、植物由来のクリーンミート=人工肉の開発が脚光を浴びる。

■ 中国
中国でもこの分野に参入する企業が増えているものの、理由はシリコンバレーとは異なる。度重なる食品偽装問題を受けて、人々の意識が変わっているのだ。

【資金調達】
2017年、100億円以上得た農業・食テック企業は4社


米AgFunder調べ。2017年、米国以外の農業・食テック企業で100億円(1億ドル)以上の資金調達案件となったのは11件。そのうち最多の4社が中国企業だった。

【成長要因】
食の安全問題で「野菜を洗う洗剤」がヒット


日本でもニュースになったように、かつての中国では食品加工・流通過程での不祥事が頻発 していた。それゆえ高品質な生鮮食品を提供する各種サービスが人気を博す。

【成長要因】
「食×テクノロジー」領域の特化型VCも登場


食料品の品質を高める、もしくは食を含めたライフスタイルを改善する事業を立ち上げたスタートアップを支援するベンチャーキャピタルやアクセラレーターが増える。

【注目分野】
生鮮食品ECやフードデリバリーが躍進


上に挙げたような背景もあり、食品のデリバリー・販売網に関する企業に投資が集中。中国 IT御三家のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)も積極的に出資している。

食料不足や価値観の変化。テック企業が挑む世界的課題の解消

~マーケットトレンドの詳細解説 シリコンバレー編 土川哲平氏に聞く~

農業・食テックは、米国でアグテック(AgTech=農業×テクノロジー)やフードテック(FoodTech=食×テクノロジー)と呼ばれており、産業としても成長を見せています。

その背景に技術革新があることは間違いありませんが、世界的な課題を解消するべく「農と食」にまつわるテクノロジー企業に多くの投資が行われるようになったという事情もあります。その最新動向を、伊藤忠インターナショナルのシリコンバレーオフィスでベンチャーキャピタル(以下、VC)への投資およびスタートアップへの戦略投資に従事している土川哲平氏に聞きました。

《2017年、農業テックへの投資は過去最高額に》

まずはアグテック分野への投資状況を数字で確認していきましょう。CB Insightsが2018年に出したレポート「Agtech And The Connected Farm」によると、アグテック関連企業へのグローバルな投資額は年々増加傾向にあり、2017年には年間4億3700万ドル(約437億円)に達したそうです。同社によると、これは過去最高額とのこと。順調に伸びています。

そもそもアグテックとは、テクノロジーを駆使して農業における

 (1)Understand Inputs
 (2)Boost Efficiency
 (3)Manage Operations

の3つを支援することだとCB Insightsは定義しています。

(1)は収穫量と過去の気候変動の関係性を数字で把握するように、各種のデータを正確に把握すること。(2)は、センサーや衛星画像などから取得したデータを分析して生産効率を上げること。最後の(3)はソフトウェアの力でオペレーションを上手に回しましょうということです。

通信やIT技術の革新は、農業に限らずさまざまな生産現場で「見える化」「効率化」「自動化」を進めてきました。アグテックも、この3つの文脈で進化してきたと言えるでしょう。

《アグテック進化の歴史》

歴史的な部分を詳しく振り返ると、実は2006年~2008年ごろの動きが、この産業に大きなインパクトを残していると思っています。

まず、2007年くらいを境に原油資源価格が高騰化し、エタノールなどのバイオ燃料が石油燃料の代替として注目されるようになります。そのため、トウモロコシや大豆といった原料となる植物の価格が一気に高騰しました。これと時を合わせるように、2008年には後の米大統領となるバラク・オバマ氏が大統領選の中で景気対策の一環として代替エネルギーへの投資を公約に打ち出し、その後のグリーン・ニューディール政策につながります。その流れで、「資源の問題」と「食料生産」が今まで以上に密接に絡むようになりました。

さらにこの頃、テクノロジー面の進化に大きく影響を与える出来事が続きます。2006年にはEC企業のアマゾンがAWS(Amazon Web Services)としてクラウドコンピューティングサービスを開始し、クラウド環境で膨大なデータを管理・分析するための礎が築かれました。その翌年の2007年にはiPhoneが誕生し、同時期に通信規格も3Gにアップグレードされます。

こうして通信や技術面の土台も整ってきたことで、広大な農地に各種センサー類を設置してリアルタイムにデータを収集するような「見える化」も、比較的低コストでできるようになりました。

また、スマートフォンが普及していく流れの中で、SNSのようなネットワーキングサービスも一気に広まり、情報の非対称性を解消するという観点からWebやネットワーク技術も大きく進化していきます。これが農業の現場にも持ち込まれるようになったのです。

《「世界98億人」の未来に必要な食料生産力の向上》

ただし、テクノロジーの進化はアグテックが盛り上がる必要条件でしかなく、「必要十分条件」を満たしたのは別の要因でした。その一つは、世界的な人口増加を受けて食料生産力の向上がいよいよ不可欠になってきたという課題です。

2017年6月に国連が発表した「世界人口予測2017年改定版」によると、調査時点で76億人だった世界人口が、2030年までに86億人、2050年には98億人まで増加すると予測されています。この未来予想を前提にすると、世界の食料生産力を今よりもっと向上させなければなりません。

にもかかわらず、最近は日本でも気候変動が問題になり始めており、食料生産の面では逆風が吹き続けています。台風が今までにない動き方をするようになり、ゲリラ豪雨も頻繁に降るなど、気象災害が増えています。米国でも、ハリケーンが未曾有の被害をもたらすようになり、シリコンバレーのあるカルフォルニア州では山火事が頻発するようになりました。

農業を営む人たちにとって、こうした状況の中でもちゃんと作物を育て、ビジネスとして収益を出していけるかどうかは死活問題です。そこで、IoT(モノのインターネット)や人工知能(以下、AI)、ロボティクスのような先端テクノロジーを駆使しながら新しい農業をやっていこうという人たちが増えているのです。

《大企業によるスタートアップ買収の意図》

中でも「AI・ロボット×農業」への期待は大きく、長年農業ビジネスを手掛けてきた大企業がシリコンバレーで生まれた農機・農業管理・アナリティクス関連のスタートアップを買収する動きも活発になっています。具体的な事例は後述しますが、特にアグテックの世界では

 ・Analyzing Satellite Images(衛星画像の解析)
 ・In-Field Monitoring(ドローンなどを用いた空からの監視)
 ・Assessing Crop / Soil Health(地上で作物や土壌の健康状態を評価)
 ・Predictive Analytics(生産量などの予測分析)
 ・Agricultural Robots(農業用ロボット)

という5つの活用ケースを想定した買収や出資が増えています。

例えば伊藤忠商事は2017年、衛星画像の解析を手掛ける米オービタル・インサイト(Orbital Insight )という会社に出資しています。これは大きな括りでいうとリモートセンシング分野で、私の整理では「Analyzing Satellite Images」「In-Field Monitoring」「Assessing Crop / Soil Health」の3つは同じ分野だと考えています。

特に近年は、人工衛星にせよドローンにせよ、飛行コストもハードウェアの製造コストも劇的に下がっています。それによって、宇宙と空、地上という3つのレイヤーでそれぞれ補足し合いながら情報を取得することが現実的になりました。これが、農業におけるデータ活用やAI活用を促進しているのです。

AIやロボティクスがあらゆる産業に与える影響が総じて大きくなっているのは間違いありません。アグテックに関しても、単に「食料生産そのものを変革する」というだけでなく、そこから先の「流通」に至るところまで改革していくことを見据えて動く企業が増えていくでしょう。

《若者の価値観変容を背景に「人工肉」メーカーが台頭》

次はフードテックを取り巻く状況を紹介していきます。この分野もアグテックと同じく、将来の食料不足を回避する手段として脚光を浴びていますが、もう一つ見逃せないのは若い世代の食に対する価値観が変わっていることです。

ライフスタイルが多様化したことで、肉を食べないベジタリアンやヴィーガンも増えています。その理由は、環境への配慮であったり、宗教に則した考え方、もしくはファッション的な感覚もあるでしょう。ただ、理由はともあれこの10年くらいで食に対する意識が大きく変わっているのは間違いありません。そこにシリコンバレーの会社が目を付け、フードテック関連のスタートアップが増えているのです。

中でも、近年のシリコンバレーではオルタナティブ・プロテイン(Alternative proteins)やクリーンミート(Clean meat)を製造・販売する企業が大きな注目を集めています。これらはプロテイン=タンパク質の代替になる食材で、オルタナティブ・プロテインの中でもAnimal-free Meatと呼ばれるジャンルには大きく「植物性由来たんぱく質」と「培養肉」があります。植物性由来たんぱく質はプラントで作っているもの、培養肉はラボ(研究所)で作っているもの。総称して「人工肉」と呼ばれたりもします。

植物由来のタンパク質の製造は、以前からビジネスとして存在していました。ただ、「クリーンミート」というネーミングしかり、普及のさせ方が実にシリコンバレーらしい。

例えば、最近のティーンや若者たちは、SNSや動画メディアを通じてものすごい量の情報を得ています。ユーチューブで動物を工業的に飼育して食肉を大量生産するような映像を観て、衝撃を受ける人もいるでしょう。そこで「あんなやり方で育てられた動物を食べ続けるなんて残酷だ!」と宣伝しつつ、「テクノロジーを使って倫理的にも『クリーンな肉』を製造するので食べてみて」「そういう生き方もクールだよ」と勧めているのです。

食料不足の問題もあるので、これだけがオルタナティブ・プロテインやクリーンミートの普及を促しているわけではありませんが、シリコンバレー的なやり方が新しいタンパク源への注目度を高めているという側面は少なからずあると思います。

《ビル・ゲイツ氏ら著名人の出資も》

現状は、生産コストが非常に高いという点が課題です。これが100グラムあたり100円以下まで落ちていったら、ビジネスとしても普及期に入っていくかもしれません。

そのためには研究開発の資金が欠かせませんが、オルタナティブ・プロテインとクリーンミートにはハリウッドの有名俳優やIT業界の著名経営者も注目しており、個人的に出資するケースも増えています。

一例を挙げると、クリーンミートを製造・販売しているスタートアップの米メンフィス・ミーツ(Memphis Meats)には、あのビル・ゲイツ氏や英ヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソン氏が他の投資家らと総額1700万ドル(約17億円)を出資しています。

同じくクリーンミートの製造・販売を行う2009年設立の米ビヨンド・ミート(Beyond Meat)も、ビル・ゲイツ氏の他、俳優のレオナルド・ディカプリオ氏らの出資を受けたことで注目を集めました。著名人たちはやはり、食料問題のような世界的な課題の解決に取り組むという大義にお金を投じているのでしょう。

こうした分かりやすいトピックスも後押しとなって、最近はシリコンバレーのクリーンミート企業が大手飲食店チェーンと連携して全米および世界に自社商品を広め始めています。その詳細は、この後の主要プレーヤーのコーナーで紹介しましょう。

「農と食の課題大国」をテクノロジーが救う

~マーケットトレンドの詳細解説 中国編 小田剛氏に聞く~

シリコンバレーでアグテック(農業×テクノロジー)やフードテック(食×テクノロジー)が盛り上がりを見せている背景に、未来の食料不足問題や食に対する価値観の変容があると説明しました。

中国でも似たような背景で伸びているようですが、もう一つ、「食の安全性」が大きなテーマとなっています。具体的にどんなトレンドなのか、北京を拠点にアグテック企業のアレスカライフ・テクノロジーズ(Alesca Life Technologies Limited)を経営する小田剛氏に聞きました。

《100億円以上の資金調達に成功する中国企業が続出》

アグテック・フードテック市場の専門調査会社である米AgFunderは、「Agrifood Tech Investing Report 2017」というレポートを発表しています。これによると、2017年、米国以外のアグテック・ フードテック関連スタートアップによる資金調達案件トップ20(図6‐4/グラフは書籍にて)のうち、1億ドル(約100億円)以上の大型案件は11件あったそうです。

この1億ドル以上を調達した企業の中に、中国企業は4社入っており、最多数を占めています。特にランキング1位になった中国のフードデリバリー企業ウーラマ(Ele.me/餓了麼)は、2017年だけで約10億ドル(約1000億円)もの資金調達をしたとあります。

2位の食品EC企業ミスフレッシュ・イーコマース(MissFresh E-Commerce/每日优鲜)でも、調達額は5億ドル(約500億円)。5位に入っている生鮮食品ECのユイゴー・ドットコム(Yiguo.com/易果生鲜)でも3億ドルです。これらの数字から、アグテック・フードテックにおける中国企業の存在感が読み取れます。

《食の安全問題が生んだ「野菜を洗う洗剤」》

この急成長の背景には、人口の多い中国市場の大きさはもちろん、中国が抱える食品・農業周りの課題が非常に大きいということが挙げられます。

例えば、農地や地下水の汚染問題。中国では、農地の5分の1が危険なレベルで汚染されており、農家が使用する地下水の80%が安全基準をクリアしていないことを政府も認めています。食品加工や保存の安全性についても、2008年の「中国粉ミルク異物混入事件」や2014年の「マクドナルド・ケンタッキーフライドチキンに出荷された期限切れ肉問題」に代表される不祥事が頻発しています。そのため、国内の消費者の間でも「可能な限り高品質で安全性の高い食品を購入したい」というニーズが高まっているのです。

これを象徴する面白い例として、今、中国では「野菜を洗う洗剤」がヒットしています。これは野菜の生産~流通過程で使われる化学薬品や残留農薬を洗い落とすための特別な洗剤で、私の周りでも購入する人が非常に増えています。

最近は北京のスーパーマーケットでもオーガニック野菜が増えているものの、海外の先進国産に比べるとまだクオリティが低い上に、過去の食品安全問題による信頼不足が解消されていないという印象があります。だからこのような洗剤がヒットしているのです。

《食テック特化のVCも登場》

シンクタンクの米Pew Research Centerによる調査でも、中国を含む西太平洋地域では一般消費者の「食品安全に対する問題意識」が非常に高まっているという結果が出ています。食品安全が「非常に大きな問題だ」と答えた人の割合は、2008年度はたった12%だったのに対して、2013年度には38%まで増えていたそうです。この地域では毎年1億3000万人が食品安全の問題で病気になっているという調査結果も出ており、中には働けなくなった人もいるでしょう。

中国政府もこうした問題が顕在化していることを危惧していて、大気汚染の問題も含めて解決に向けた施策を打ってきました。その成果は、徐々にですが出始めています。私が北京に来たのは2011年ですが、今は空もだいぶ青くなりました。そして、まだ価格が高いものの、前述のように以前よりはオーガニック野菜が購入しやすくなっています。それと歩調を合わせるように、消費者の高品質で安全な食料品を求める傾向も強まっているので、アグリ・フードテック企業への注目度が高まっているわけです。

投資の世界もこの動きを敏感に察知しており、食の安全性、廃棄物の減少、農業の持続可能性などについてさまざまなアプローチで問題解決に取り組む起業家を支援する動きが加速しています。近年は「食×テクノロジー」領域の特化型VCもいくつか登場しており、中でもビッツ・アンド・バイツ(Bits x Bites)などが知名度を挙げています。

同社の取り組みについては、この後の主要プレーヤー解説で詳しく説明しましょう。

《生鮮食品ECやフードデリバリー市場は成熟の一途》

ここまで説明してきた動向を踏まえて、アグテック・フードテック分野で具体的に伸びている業種を挙げるなら、生鮮食品ECやフードデリバリーになるでしょう。

冒頭で紹介したウーラマやミスフレッシュ・イーコマース、ユイゴー・ドットコムもこの業種であり、サービスの普及度という面でも北京や上海といった大都市でこの3社を知らないという人はあまりいない。あくまで私見ですが、そのくらい広まっています。

加えて、食品ECではベンライ・ライフ(Benlai Life/本来生活)という企業も非常に注目されるようになっています。同社は他の食品ECとの差別化要素として、よりクオリティの高い商品を提供しており、小さなお子さまがいる家庭や妊娠中の女性などに好評を博しています。こうして食料品のECプラットフォームが細分化してきたという点からも、市場が成熟してきたと言えます。

なお、ウーラマは2018年にアリババが買収、ミスフレッシュ・イーコマース、ユイゴー・ドット コムにはバイドゥやテンセント、国内EC第2位のJD(京東商城)が出資しています。ここでも、他の産業と同様に中国IT御三家のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が大きな影響力を発揮しているのです。

農業・食テックの主要プレーヤー

■ シリコンバレー
ソフトウェアの力は旧態依然とした農業・食料品分野にも革新を起こしつつある。その代表例が、ビッグデータによる気候予測やロボット活用だ。

・化学メーカーMomsanto(モンサント)がスタートアップ買収の転機を作る

同社が2013年、気候予測を行う米The Climate Corporation(クライメート・コーポレーション)を買収した一件から、シリコンバレーに関連企業の買収ブームが起きる。

・農業AIロボットで注目Blue River Technology(ブルーリバー・テクノロジー)

Blue River Technologyが開発するAIロボットは、食料生産力を高める上で重要な「農作 業の自動化」や「作業効率の向上」を促すものとして脚光を浴びている。

・自動料理マシンの「ロボットシェフ」が飲食店にも普及

日本のファミリーレストランにあるドリンクバーのように、ボタン一つでサラダを料理して提供する米Chowbotics(チョウボティクス)のようなスタートアップが増加中。

・人工肉のImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)対Beyond Meat(ビヨンド・ミート)

Impossible FoodsやBeyond Meatが提供する「人工肉バーガー」が話題になるなど、クリーンミート関連が盛り上がる。

■ 中国
特に都市部において高品質な食料品を求める声が高まる中、ニーズに応えるべく食料生産~流通を改善する多様な取り組みが行われるようになっている。

・2018年、約1兆円で買収されたフードデリバリーのEle.me(ウーラマ)

「2017年、米国以外の農業・食テック企業で100億円以上の資金調達に成功した企業ラン キング」で1位だったEle.me。約1兆円という買収額が勢いを物語る。

・Alibabaが「食用豚の健康管理システム」を開発中

EC企業のAlibabaが、食用豚の生産業者や飼料メーカーと提携してこのような取り組みを 始めた背景には、やはり人々の食品安全問題への関心の高まりがある。

・中国初の農業・食テック特化型VC、Bits x Bites(ビッツ・アンド・バイツ)

Bits x Bitesのような特化型VCが登場したことで、類似のスタートアップ支援企業やプラットフォームも盛り上がりを見せるようになった。

・国内の“IT・メーカー連合”でスマート冷蔵庫が進化

IT御三家のBATや国内EC第2位のJDは、家電大手のMidea Group(ミデア・グループ)や Haier(ハイアール)と連携してスマート冷蔵庫の開発・普及に尽力。その理由は?

AI、ロボット、バイオ関連のスタートアップが躍進

~主要プレーヤーの詳細解説 シリコンバレー編 土川哲平氏に聞く~

他の産業と同じように、アグテック(農業×テクノロジー)やフードテック(食×テクノロジー)の分野でも、既存の大企業は進化して生き残るため、スタートアップはさらなる飛躍のため、互いに連携しながらエコシステム全体を活性化させています。ここでは、近年のシリコンバレーで特に注目しておきたい企業の動きを紹介します。

《モンサントが生んだスタートアップ買収の機運》

アグテックにおける大企業とスタートアップの連携で、近年の大きなうねりを最初に生み出したのは米の大手化学メーカー・モンサント(Momsanto。2018年6月に独の総合化学企業バイエルに買収された)です。

日本でも有名な除草剤「ラウンドアップ」などを生んだ同社は、2013年、ビッグデータによる気候予測のスタートアップである米クライメート・コーポレーション(The Climate Corporation)を約11億ドル(約1100億円)で買収しました。これが契機となって、我々VCの間でも「アグテック関連のスタートアップでもイグジットを実現できるんだ」という空気感が生まれたように感じています。

事実、この買収劇の後に、スイスの農薬・種子メーカーのシンジェンタ(Syngenta)や農業機械メーカーの米ディア・アンド・カンパニー(Deere & Company)、化学メーカーの米デュポン(Du Pont)といったグローバルな農業企業が続々とシリコンバレーのスタートアップを買収するようになります。

例えば2017年、デュポンが農園マネジメント用ソフトウェアを開発する米グラニュラー(Granular)を買収した際は、3億ドル(約300億円)を投じています。しかも、2018年にはグラニュラーが衛星スタートアップの米プラネット(Planet)と提携。同社の人工衛星から送られる農園の監視画像を使って分析機能を強化しています。デジタル農業を形にしていくプロセスが、こうしたエコシステムから生まれていくという好例です。

《畑の雑草駆除をAIロボットが行うように》

大企業によるアグテック関連のスタートアップ買収で、もう一つ、大きな注目を集めたのが、2017年にディア・アンド・カンパニーが米ブルーリバー・テクノロジー(Blue River Technology)を買収した件です。

理由は3億500万ドル(約305億円)という買収額もさることながら、ブルーリバー・テクノロジーが近年のアグテックで最注目分野と言える「AI・ロボット×農業」を体現する企業だったからです。

2011年設立のスタートアップであるブルーリバー・テクノロジーは、畑の雑草駆除ロボットを開発しています。AIによる画像認識で雑草と野菜を瞬時に区別し、雑草だけに農薬を噴霧していく仕組みで、開発の経緯が非常にユニークなものとなっています。

同社は創業初期の頃、レタス畑で「間引き」をするためのロボットを開発していました。その際、どれがレタスで、どれが雑草かを判別する機能が必要ということでAIの研究開発に本腰を入れるようになり、結果的に雑草駆除のほうがニーズも多いということで方針転換したそうです。

今、米国は移民政策の変更で人手不足が危惧されているので、AIロボットが農業を支援する流れは確実に広まっていくでしょう。さらに、2016年設立の米ファームワイズ (FarmWise)というスタートアップは、オーガニック志向の広まりを受けて農薬を噴霧せず雑草だけ認識してカットするロボットを開発しています。こうした進化が今後もっと加速していくと思われます。

《「ロボットシェフ」は飲食業の救世主?》

ロボットの活用は、農業だけでなく飲食業にも広まっています。中でも注目されているのは、「ロボットシェフ」と呼ばれる自動調理マシンを開発するフードテック企業です。

例えば2014年設立の米チョウボティクス(Chowbotics)は、サラダ製造マシン「Sally」を開発して本書発刊時点で計1700万ドル(約17億円)の資金調達に成功しています。同社のマシンはいわば「自動のサラダバー」で、タッチパネルで好きなドレッシングと食べたい野菜を注文すると、野菜をカットして調理してくれます。

この手軽さと斬新さが評判を呼び、すでにカリフォルニアに本拠を置くイタリアンレストランの「Mama Mia」や、サンフランシスコのコワーキングスペース「Galvanize」、テキサスの食料品スーパー「H-E-B Grocery」の社内カフェテリアなどに導入され始めています。

もう一つ、日本人が驚きそうなロボットシェフの例を挙げると、2016年の設立で「ラーメン自動販売機」を開発している米ヨーカイ・エクスプレス(YO-KAI EXPRESS)があります。台湾出身のCEOが立ち上げた同社は、本格的なラーメンを冷凍保存し、自販機で加熱して提供するという事業を展開しています。2018年9月には、電気自動車開発で知られるテスラの工場にこのラーメン自動販売機が導入されて話題になりました。

美味しいラーメンを振る舞うお店が多い日本では、自販機でラーメンを提供することに疑問を持つ方もいるかもしれません。「カップラーメンの自販機と何が違うのか?」と感じる方もいるでしょう。しかし、例えば米国の田舎にある工場や病院、エアポートなどでは、そもそも夜間に飲食できるお店自体がないのです。そこで、こうした「ロボットシェフ」が24時間体制で料理を振る舞うことが、課題解決につながります。

加えて、米国では日本の飲食店チェーンと違ってスタッフの教育が行き届いておらず、仕事の質も店舗によってバラバラなので、「同じ料理を同じ質で作る」のが難しいという課題もある。これらの背景もあって、チョウボティクスやヨーカイ・エクスプレスだけでなく、ロボットシェフを開発するスタートアップには多くの投資が集まるようになっています。

日本企業はオペレーションを自動化する類いの仕事が得意ですから、ぜひこの分野で海外進出するスタートアップが出てきてほしい。そう思っています。

《全米に広まる「人工肉」バーガー》

マーケットトレンドの解説で、シリコンバレーでは今オルタナティブ・プロテインやクリーンミート≒人工肉を製造・販売するスタートアップが脚光を浴びていると述べました。

いくつかある関連企業の中で現在最も勢いがあるのは、人工肉メーカーである米インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)と、ビル・ゲイツも出資している米ビヨンド・ミート(Beyond Meat)でしょう。この2社は、自社が開発した植物由来の人工肉を使っていくつかの商品を形にしており、米国内で徐々に知名度を上げているからです。

特にインポッシブル・フーズの「インポッシブルバーガー」は、有名ハンバーガー・チェーンやレストランと積極的にタイアップしながら販路を広げています。本書発刊時点で、全米3600店舗、全世界だと3700店舗以上の飲食チェーン店で発売されているそうです。

ハンバーガー・ショップで出すくらいなので、基本的には「肉好き」な人たちも食べるわけで、ベジタリアンやヴィーガンの方々以外にもアピールできる。この辺に、うまくタイアップしながら市場に入り込んでいくというマーケティングのうまさを感じます。

インポッシブル・フーズは2011年にスタンフォード大学の生化学教授で元・小児科医のパトリック・オライリー・ブラウン博士により設立され、2018年時点の資金調達総額は5億600万ドル(約506億円)に上ります。この調達額の多くが研究開発に回っているという認識ですが、シリコンバレー流で商品を開発・改良し続けるための人材採用にも多額のコストを割いていると思われます。

今後は日本を含めた海外展開をどう進めていくかも注目です。カリフォルニアは全米でも比較的エコ志向や健康志向が強いと言われているように、少し特殊な市場です。さらに日本とも消費者のニーズが異なるので、ネーミングやユーザー体験を含めたマーケティング戦略に工夫が必要でしょう。

もう一つ、世界展開 ≒大量生産をする時に、品質はもちろん一般消費者が求めるコストに見合うのか見合わないのか。今はまだ特殊な市場で多少のプレミアムを払ってくれる消費者向けにギリギリのところでやっているはずなので、今後の進化を見守りたいところです。

《シリコンバレーの企業が強い理由》

インポッシブル・フーズの戦略について少し補足すると、シリコンバレーの企業は、生産~流通~消費というサプライチェーンの中で、きっちりブランドを構築していくのが非常にうまい。スマートフォンの世界を例に見ても、部品の加工や仲卸しをしている企業は世界中にたくさんありますが、ブランドとして世界に知られているのはiPhoneを提供するアップルなど限られたメーカーです。

これと似たようなことを「インポッシブルバーガー」や「ビヨンドバーガー」もやろうとしていて、今後これらの商品を提供する外食産業そのものを変えていく可能性があります。「マクドナルドのようなファストフードがスタンダードになっている状況は、健康面を考えるとよろしくない」「米国では医療費を負担できない」とPRしていくことも想定されます。

だからこそ、シリコンバレーの企業はブランド力を軸に「外食産業を変えていく!」と謳うことで、より多くの注目と投資を集めているのではないかと思います。

企業も投資側も「安全・高品質・便利」を追求する

~主要プレーヤーの詳細解説 中国編 小田剛氏に聞く~

食の安全に対する国民の問題意識を受けて、中国のアグテック(農業×テクノロジー)、フードテック(食×テクノロジー)関連企業の取り組みは「より安全に」「より高品質」を提供する方向に進化しています。そして、ここに「より便利に」も入ってくるのが中国らしさ。この3つを軸にして動く各社の取り組みを紹介していきます。

《ウーラマ「1兆円買収」に見えるアリババの深謀》

最初に取り上げるのは、マーケットトレンド解説で取り上げた「2017年、米国以外の農業・食テック企業で100億円以上の資金調達に成功した企業ランキング」で1位に輝いたフードデリバリー企業ウーラマ(Ele.me/餓了麼)です。

同社は翌年の2018年4月、中国EC大手のアリババに買収されています。その額は、日本円で約1兆円。桁違いの額です。しかも、ウーラマはアリババに買収される前の2017年、バイドゥのデリバリーサービス「バイドゥ・ワイマイ」(Baidu Waimai)を買収しています。そのため現在のフードデリバリー業界は、テンセントが出資している「メイトアン・ワイマイ」(Meituan Waimai)とウーラマの2強が争う状況となっています。

中国の都市部では、ウーラマとメイトアン・ワイマイの制服を着てバイクで走っている配達員を至るところで見かけます。非常に競争が激しいこともあり、最近は「デリバリーの送料はほぼ無料」というのが当たり前になりつつある。6~8元(約100~130円)ほどの送料を取るのですら、高いハードルになっているのです。

ただ、ユーザーからすると、これらフードデリバリーの料金はChapter03:フィンテック・仮想通貨の章で取り上げたアリペイ(Alipay)とウィーチャット・ペイ(WeChat Pay)で支払えるので非常に便利です。お金を下ろしにコンビニや銀行に行く必要もなければ、食べ物を買いに家やオフィスから出る必要もない。しかも、高級なレストランや百貨店でしか売っていないようなメニューもデリバリーしてくれます。少なくとも自動運転技術が本格的に普及するまでは、引き続き人気が続くでしょう。

一方で、フードデリバリーを運営していくための戦略には、近い将来変化が求められると考えています。ウーラマに買われたバイドゥ・ワイマイは、2016年に資金調達をした時2500億円くらいのバリューだったのに、買収時の価格は800~1000億円程度に値下がりしていたという話があります。これは、デリバリーサービスの高い営業費用や設備投資などを理由に「サービス単体の価値」で競争するのが難しくなっていることの表れです。

これからは、デリバリーを通じて得るユーザーデータや、築いた販売網を生かしながら競争していく戦略が必要になってくると思われます。この販売網について、ウーラマは2018年の夏時点で中国2000都市でオペレーションを行っており、130万軒のレストラン、2億6000万ユーザーが登録しているそうです。ここからさまざまなデータを集めた上で、将来はアリババ・グループの他のサービスと連携させるようなこともあるかもしれません。

《アリババは食肉の品質改善にも乗り出す》

こうして「食の流通」工程を押さえたアリババは、さらに一歩踏み込んで「食料生産」にも参入しようとしています。同社は食用豚を生産するデコン・グループ(DEKON Group)や、飼料メーカーのテク・グループ(Tequ Group)と提携して、「豚の頭数」や「健康状態」を管理するシステムを作っているそうです。食肉の品質向上にも関与していくことで、自分たちできちんと管理できる食品を売っていこうという考えなのでしょう。

今までの養豚場ではRFIDを搭載した非接触型のタグを使って頭数を管理するのが主流だったのを、農場に設置したカメラで豚の背中に記された番号を読み取って簡単に頭数確認ができるようにしているそうです。これでコスト削減ができるほか、赤外線センサーや音声認識技術も組み合わせることで、体温や泣き声から各個体の健康状態まで解析できます。かかわる産業では全方位的な取り組みを行うアリババらしい事業です。

《「食」に特化したVCビッツ・アンド・バイツ》

次に紹介するのは、マーケットトレンド解説で「食×テクノロジー」領域の特化型VCとして名前を挙げたビッツ・アンド・バイツ(Bits x Bites)です。

同社は中国で初めてアグテック・フードテックに特化したVC兼アクセラレーターであり、2016年の創業初期は海外の優れたアグテック・フードテック企業を中国に持ってきて現地化するのを得意としていました。

しかし、その後は中国国内で生まれた関連企業のアクセラレーターとしても名を上げています。具体的には、同社の投資先が持つ販売網を利用して支援企業の成長を促しながら、生まれたばかりのフードテック・スタートアップとのアイディエーション(製品・サービスの開発コンセプトを企画・設計すること)なども行っています。

例えば、中国ではサプリメントなどの健康食品が敬遠されており、サラダをメイン料理として食べる習慣もありません。そこで野菜をジュースにして1日に必要とされる栄養素を摂取できるような製品を開発するスタートアップが出てくるのですが、ビッツ・アンド・バイツはこの製品企画段階から携わり、より良い食料品づくりを支援しているのです。

同社の投資責任者であるJoseph Zhou氏が、Webメディア『TechNode』のインタビューを受けた際の記事(How better tasting food can solve China’s food problems)を読むと、「食品で最も重要なのは美味しく仕上げること」「新しいアイデアを持ってアプローチして来る人には、最初に『それは美味しいですか? 味見させてもらえますか?』と質問します。それから、生産、調達、安全性の話をします」と話していました。

この発言からも、開発で妥協することなく「美味しさ」と「安全」を両立させようという考えが読み取れます。

ビッツ・アンド・バイツのこうした取り組みは、中国のVC業界やスタートアップ支援の世界に少しずつ変化を起こしています。実際、ビッツ・アンド・バイツの出身者らが上海で立ち上げたインキュベーターのイースト(YEAST.)のような企業が生まれており、食を含めたライフスタイルの改善を目的に起業・商品開発する人たちを支援する次世代研究開発ラボを始めています。彼ら自身が「キッチンテック」と呼ぶ分野にフォーカスして、一般家庭やレストランのキッチンにイノベーションをもたらすアイデアを育成しています。

さらにもう一つ、ニュージーランドの乳業会社フォンテラ(Fonterra)出身のメンバーが立ち上げたインキュベーターのハッチェリー(Hatchery)は、ミレニアル世代の若者や独身の人向けに新しい飲食コンセプトを提案するスタートアップをサポートするプラットフォームを運営しています。

《スマート冷蔵庫開発にIT大手がかかわる理由》

続いて、フードテックの分野で起きているもう一つのめぼしい変化を紹介しましょう。IT企業と大手家電メーカーとの連携も進んでいるという点です。

BATやJD、検索エンジン国内2位のSogou(捜狗)などは、家電大手のミデア・グループ(Midea Group/美的集団)やハイアール(Haier/海尔)と提携してスマート冷蔵庫を開発しています。冷蔵庫自体の値段は非常に安く、2017年にはハイアールが無料で提供するキャンペーンも検討していました。

これが何を示しているかというと、家電メーカーのビジネスモデルが変わり始めているということです。例えばスマート冷蔵庫を家庭内の「IoTハブ」として設置し、家庭のデータを取得する。または冷蔵庫から直接ECプラットフォームに注文できるようにして生鮮食品を送る。ハードウェアを売る商売から、サービスを提供するビジネスモデルに軸足を移そうとしているのです。

こういった「スマートホーム」構想は、願わくばパナソニックやシャープのような日本の家電メーカーに先取りしてほしいところでしたが、その前に中国の“IT・メーカー連合”が普及させそうな勢いです。中国のテクノロジー企業はとにかく提携のペースが非常に早く、経営の意思決定と戦略実行にもスピード感があるので、いざ本格的に動き始めたら一気に事が進むかもしれません。

農業・食テック分野の注目スタートアップ

この分野を分類すると、農業テックは大きく【農業系ソフトウェア】(ITサービスやビッグデータ分析など)と【農業系ハードウェア】(農機/ロボット/ドローンなど)の2つに分かれ、ここに【食テック】を加えた3分野があります。我々が注目する企業を紹介しましょう。

《シリコンバレー/農業系ソフトウェア》

■ Plenty(プレンティ)
ビッグデータと機械学習を駆使して効率的な水耕栽培を行う「インドア農業」で知られるシリコンバレーのスタートアップで、2017年に孫正義氏のソフトバンク・ビジョン・ファンドやAmazon創業者のジェフ・ベゾス氏など複数の投資家から2億ドル(約200億円)を調達して話題になりました。

同社の「インドア農業」は、センサーやLEDを使いつつ、データ解析に基づいた最適な農法を採用。農薬や遺伝子組み換え作物を使わず、水の使用量も極限まで削減しています。インドア農業は過去に「コスト面の高さが割に合わない」と下火になった時期もありましたが、ここ数年でコストが下がり、再び脚光を集めるようになりました。同社の場合、従来の農法に比べて350倍の効率で生産しているそうで、今後のインドア農業を引っ張っていく存在と見られています(吉川)。

■ Farmers Business Network(ファーマーズ・ビジネス・ネットワーク)
社名の通り、農家同士のネットワークを構築することでデータ経営を促進するシリコンバレーのスタートアップで、2015年にはGoogle Venturesなど複数のVCから総額2800万ドル(約28億円)の資金調達に成功しています。加盟農家に向けて各種の農業データを収集・データベース化・分析するサ ービスを提供しており、さらに種や肥料などの仕入れ元となって購買までサポートしています。

共同創業者の1人は、穀物商社として知られる米Cargill(カーギル)のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)出身で、リーマン・ショックが起こった2008年にシリコンバレーのVCに転身、2014年にこの会社を設立しています。こうした経歴を見ると、農業に対する世間の関心が高まり始めた時期にVC業界に入ってテクノロジーを学び、その後も非常に良いタイミン グで起業していると感じます。農業ビジネスへの確かな問題認識を持った人 物が、適したステップを踏んでうまく事業を大きくしている印象です(土川氏)。

《シリコンバレー/農業系ハードウェア》

■ AGROBOT(アグロボット)、Abundant Robotics(アバンダント・ロボティクス)
この2社は「収穫用の自動ロボット」を開発しており、AGROBOTはいちご摘みを、Abundant Roboticsはりんご摘みを行うロボットの研究を進めています。両社とも、人の手でなければ摘み採れなかった果実の収穫を行うもので、かつ画像処理技術によって熟した果実か未熟な果実かを自動で見分けることも志向しています。

こうしたロボットの普及は、農場経営の人件費を下げる意味でとても重要と言えますが、まだまだエンジニアが足りないという課題もあります。近年は、産業用ロボットのみならず自動運転や医療用などを含めてさまざまな用途のロボット開発が進んでおり、エンジニアの獲得競争も非常に激しい。その中でどう優秀な人材を確保していくかが進化のスピードを左右すると思われます(吉川)。

《シリコンバレー/食テック》

■ Lavva(ラヴァ)
乳製品フリー(Dairy-free)のヨーグルトを製造・販売しているスタートアップで、2018年2月に米の高級スーパーマーケットチェーンであるWhole Foods Marketなど500店舗で発売を開始して話題を集めています。日本でも、不二製油という食品素材加工会社が動物性由来原料を一切使用しない豆乳クリームを開発していて、これはチーズの代替品として発売されています。こうした代替食品は、食に対する意識の多様化を受けて今後さらに増えていくでしょう(吉川)。

■ Aspire Food Group(アスパイア・フード・グループ)
2012年に米テキサス州で設立されたスタートアップで、オルタナティブ・プロテインとしてコオロギを原料とした食品を製造しています。この会社にはコンピューターネットワーク機器最大手の米Cisco Systemsで会長を務めていたジョン・チェンバース氏が投資しており、IT業界の大御所が出資するフードテック企業として脚光を集めました。2018年3月には、同業のプロテインバーメーカー「Exo」を買収し、さらなる成長が見込まれます(吉川)。

■ Apeel Sciences(アピール・サイエンス)
カリフォルニア州サンタバーバラで青果の「劣化抑制剤」を開発しているスタートアップです。植物由来で液体状の劣化抑制剤を外皮に直接吹き付けることにより、乾燥・酸化・腐敗のスピードを遅らせ、(青果の種類にもよりますが)常温保存で食べられる期間を通常の何倍にも延ばすことができます。

業務用を考えると、流通~消費の間で無駄にしてしまう青果の量は半端ない量になります。それを解消できれば、コスト削減はもちろん、食料問題の解消にもつながる。そのため、あのビル・ゲイツ氏も出資しています(土川氏)。

■ Cafe X(カフェ・エックス)
ロボットシェフメーカーの一つで、独の有名なキッチン製品メーカーWMF製のエスプレッソマシン2台と、ロボットアーム1台を駆使して自動でコーヒーを提供する店舗を運営しています。共同創業者が中国系ということもあってか、最初に中国・香港で最新技術が集まる「サイエンスパーク」の中にオープンし、2017年1月にサンフランシスコのショッピングセンター「メトレオン」にもオープンしました。本書の発刊時点ではサンフランシスコ市内に3店舗を展開中です。

利用者はスマートフォンの専用アプリであらかじめ飲みたいコーヒーをオーダーしておくと、ロボットがコーヒーを作って提供してくれます(もちろん、装置の前に取り付けてあるタブレットの画面から直接注文することもできます)。単なる「自動のコーヒーショップ」という側面だけでなく、オーダーの仕方、商品ピックアップのやり方を変えるかもしれないという点でも、今後に注目しています(吉川)。

■ Blue Apron(ブルーエプロン)
2012年に創業したミールキットサービスの先駆け的存在で、2017年6月に米株式市場でIPOしてフードテック関連の代表的な企業に成長しています。

サービス内容は、家族構成について「2名」「4名」など人数を選び、1週間に何度料理をするかを選択すると、その分のミールキット(料理用の食材をまとめて加工・梱包してあるキット)が届くというもの。1回の食事で、1人あたり10ドル(約1000円)程度の価格帯になっています。米国では、共働きの家庭で家政婦を雇っていない場合、毎日のように冷凍食品を温めて食べているというステレオタイプがあるくらい、料理の優先順位が低くなっている家庭が多いと言われます。それでミールキットサービスが人気を博しているのです。

今後、有機野菜を栽培する農場や有名なワイナリ ーと契約するといった進化を遂げれば、単なるフードデリバリーとは一線を画したビジネスになっていくかもしれません。資源の節約という観点からも、料理に必要な分量の食材が、ある程度加工された状態で届くというのは非常に効率的。さまざまな進化形が考えられ るサービス領域です(シバタ)。

《中国/農業系ソフトウェア》

■ Meicai(メイツァイ/美菜)

2014年6月に北京で創設されたMeicaiは、中国国内の農家と中小規模の飲食店をつなぐ、中国最大級のBtoB型フードオンラインマーケットプレイスです。本書の発刊時点で中国約50都市を対象エリアに運営されており、2018年にはユニコーン入りを果たすなど、着々と成長しています。 サービスの特徴は、飲食店がMeicaiのスマートフォンアプリから調達したい食材を探してオンラインで注文すると、18時間以内に注文した商品が指定した場所に届くという点。中間業者を介さないことで、飲食店は市場価格に比べて食材の調達コストを平均で約36%節約することができます。

ちなみに、一般消費者向けの類似サービスとして冷凍食品を6時間以内に送る企業も出てきており、この分野は飲食店向け、消費者向け共に引き続き注目されるでしょう(吉川)。

《中国/農業系ハードウェア》

■ Alesca Life Technologies(アレスカライフ・テクノロジーズ)

中国編のゲスト解説をしてくれた小田剛氏が2013年に立ち上げた、農業のデータ化、効率化、現地化を目標としたスタートアップです。ユニークなのは、海運などに使われるコンテナを活用してインドア農業を展開している点。現在は北京を拠点に「コンテナ式植物工場」を展開しており、どこでも農作物を育てられるコンテナ・室内システムを提供することでインドア農業の普及を目指しています。

今後は中国で培ったノウハウを活用しながら新興国に展開していきたいと考えているそうで、直近ではUAE(アラブ首長国連邦)と南アフリカ共和国に進出し始めています(吉川)。

《中国/食テック》

■ Bugsolutely(バグソリュートリー)

上海にあるスタートアップで、カイコからスナックを、コオロギからパスタを作っているユニークな企業です。見た目を「昆虫」と分からなくすることで、不快感を軽減し、味も美味しく仕上げています。これにより、持続可能なタンパク質を提供することを目指しています。

パスタについては、世界で初めてコオロギの粉を20%使用。タンパク質だけでなく、カルシウム、鉄分、ビタミンB12、さらにオメガ脂肪酸を豊富に含む新しい栄養源としてマーケティングすることで注目を集めています。日本にも上陸し、販路拡大を目指すということです(小田氏)。

■ 321cooking (321クッキング/三刻)
中国で伸びているミールキットの会社で、20~40代の多忙な消費者をターゲットにしています。同業のBlue Apronを参考にしながらも、有名シェフとのコラボレーションによるメニュー開発と「美味しい」「便利」「新鮮」(「安全・健康」)を価値命題として短時間で調理可能な料理キットを販売しています。

ミールキットのサービスは、大きく「調理の手軽さ・スピード」「クオリティ 重視」「ラーメン専門のような特化型」「ヴィーガン向けなどの志向特化型」の4つに分類されます。その中で321cookingは、レストランクオリティの料理を家庭で作ることができるという「クオリティ重視」のアプローチを取っています。そうすることで、例えば客先とのディナーや残業による外食が多く、かつ食材・調味料を気にするというような消費者を取り込んでいます(吉川)。

アレスカライフの取り組みに学ぶ、農業テックの可能性

~未来展望 中国編 小田剛氏に聞く~

この章の最後は、中国編のゲスト解説をしてくれた小田氏がCEOを務めるアレスカライフ・テクノロジーズ(以下、アレスカ)の取り組みを通じて、アグテック企業が成長していく上での戦略やマーケット特性について伺ってみました。

シバタ アレスカは「コンテナ式植物工場」というユニークなインドア農業を展開していますが、なぜコンテナ活用に目を付けたのですか?

小田 実は海運用のコンテナは全世界で1200万台くらいが利用されていない状態で放置されています。中国の港にも膨大な数のコンテナが積み上がっており、安価で購入することができますし、場合によっては無料でもらえる。まずはこれを有効活用できないかと考えました。コンテナは動かしやすいという利点がありますし、事業コンセプトとして「コンテナ式植物工場」というのは分かりやすいので、スタンダードの一つにできるのではと考えました。

野菜の水耕栽培ができる我々のコンテナはどこにでも置くことができ、クラウドに接続して施設内の温度、湿度、照明などを制御することが可能になっています。栽培時に行う環境モニタリングのデバイスやオペレーション管理のデータ化ツールまで、すべてのプロダクトを自社開発しているのも特徴です。

最近はコンテナ以外に、地下駐車場のような地下施設に植物工場を作ることも始めています。これには北京のような都市部ならではの理由があって、ディディ(DiDi/滴滴出行)のようなライドシェアサービスが普及したことで、クルマを持たない人、持っているけど乗らない人が増えているからです。それで、北京ほどの大都市でも、駐車場に空きができ始めている。そうすると、当然「既存のインフラをどう有効活用するべきか?」という議論が出てくるので、私たちはそれを植物工場に変えたわけです。

ホテルのような場所でも同じ問題が顕在化しており、かつ、彼らは提供する食材のクオリティにも気を配っています。そこでアレスカが空きスペースを有効活用しながら高品質な野菜を提供すれば、新しい付加価値を提供できるようにもなります。そういう文脈で、「北京マリオットホテルノースイースト」や「ザ ウェスティン北京朝陽」のような高級ホテルも顧客となっています。

シバタ 面白いですね。

小田 ただ、おかげさまで一定の知名度を得たため、過去には偽のアレスカ野菜が出回ったり、アレスカを名乗って関連商品を売ろうとする企業も出てきました。そこも中国らしいというか。

シバタ 対応はどうされたのですか?

小田 当社は前述した通り、植物工場のオペレーションとサプライチェーンマネジメントに用いるデバイスやシステムを自社開発してきたので、そこで得たモニタリングデータなどをきちんと顧客に渡すようにして、偽の商品とすぐ区別できるようにしました。3カ月に1度、場合によっては1カ月に1度、アレスカ野菜の安全性について詳細なレポートを出すことで、「このレベルの情報開示ができるのはアレスカしかない」とご理解いただけるようになったのです。

シバタ 情報開示も価値の一つになるということですね。素晴らしい。今後の展開はどうお考えですか?

小田 食品安全性の問題、もしくは農作物の生産力に問題を抱えている地域は世界中にたくさんあるので、今後は中国で培ったノウハウを活用しながら新興国に展開していきたいと考えています。直近では中東とアフリカ、具体的にはUAE(アラブ首長国連邦)と南アフリカ共和国に進出し始めています。

UAEを構成する首長国の一つであるドバイ政府や、UAE総理大臣室がアレスカを採用してくれたのは、野菜の安全性を確保するためというよりも、農業の持続可能性を確保し、新鮮な農産物によって国民の健康を改善するためです。中東の場合、野菜の現地生産が最もバリューが高いのです。

一方で南アフリカ共和国の場合は、資源の問題があります。例えばケープタウンは今、とにかく水が足りない。そこで、現地生産できて水がほぼ必要ない状態の農業をどういうふうに実現するのかが大きな課題になっています。そこで我々が持っているノウハウを活かして、2019年頭に現地大手パートナーとともにプロジェクトを始めることになっています。

吉川 アレスカと同じインドア農業を展開する米プレンティ(Plenty)には、孫正義氏のソフトバンク・ビジョン・ファンドやアマゾンのジェフ・ベゾス氏といった投資家が2億ドル(約200億円)の投資をしています。国家や大手企業がアグテック分野に注目することで、大きな金額が動くようになっていますね。

小田 確かに、アレスカを創業した5年前と比べても、スポンサーからのお話やパートナーシップの締結オファーが国内外からたくさん来るようになりました。具体的に話が進むのもとても早くなっています。

吉川 日本の大企業やスタートアップにも、ぜひこの産業地図が変わり始めるタイミングでアグリテック・フードテックに新規参入してほしいですね。

この章で『テクノロジーの地政学』の全文公開は終わりとなりますが、本書の出版後も、Amazonが自社製宅配ロボットの実用化テストを開始するなど、テクノロジーを駆使した既存産業の刷新が続いています。今後、多くの産業にイノベーションをもたらすであろう米中のテクノロジー企業動向を、ぜひ本書で今のうちピックアップしてみてください!

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