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Q. Alibabaの香港上場から見る、3つの狙いと次の主戦場は?

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A.
1) 政治的リスクの分散
2) Alibabaのビジネスにより理解がある投資家の獲得
3) 東南アジアへの本格的な進出
の3つが香港市場への上場の狙いです。
今後、Alibabaの「eWTP構想」の実現に向けて、東南アジアでの活動がより盛んになってくると考えられます。

この記事はKimmyさんとの共同制作です。Kimmyさんは中国語に堪能なので、中国語で書かれた記事やリサーチデータから、まだあまり日本で知られていないワクワクするビジネスや中国で話題のテーマをご紹介くださいます。

Alibabaは、2014年にニューヨーク証券取引所に上場していますが、2019年11月26日に改めて香港証券取引所にも上場を果たしました(改めて、と記載した理由は後述します。)

2つの市場に上場する場合、決算情報の適時開示や株主対応などの費用・手間がダブルでかかってくることになります。今回は以下の香港上場時の目論見書や直近の決算情報から、「Alibabaはなぜ今、香港に上場する必要があったのか」、その背景と今後の展望について深掘りしてみます。

*Alibaba Group Holding Limited Global Offering(2019/11/15)

*Alibaba 2019年9月期 決算説明資料(2019/11/1)


香港証券取引所へ上場リベンジ

Alibabaは今回の香港上場で129億ドル(約1.4兆円)を調達し、なんとAlibaba1社だけで2019年の香港証券取引所の調達額全体の3分の1を占めました。グローバルで見ても、国有石油会社であるサウジアラムコが調達した256億ドル(約2.8兆円)に次ぐ世界2位のIPO規模となっています。

元々2007年11月にB2B事業の「Alibaba.com」を香港市場に上場しており、当時は大変人気の株式銘柄でした。しかし2011年に発覚した不正取引事件を機に、成長から質の向上に経営軸を転換することを目的に、AlibabaグループによるTOB(株式公開買付)という形で自主的に香港市場での上場廃止を行いました。

その後、Alibabaは2013年に香港市場での再上場を計画していましたが、同社のガバナンス体制(取締役の過半数を指名する独占権を持ったパートナーシップによって統治する制度)が認められず、代わりの上場先としてニューヨーク証券取引所を選んだ経緯がありました。この度は香港証券取引所のルール改正により、Alibabaは念願の香港市場への再上場を果たすこととなりました。


AlibabaのIPOを支える驚異的な成長

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まず、世界2位規模のIPOを果たしたAlibabaがどんな会社なのかおさらいしてみましょう。
Alibabaは世界最大級のECサイトとして名高い「Taobao.com」をはじめ、生活サービス(出前や口コミサイト)やデジタルコンテンツ(動画サイトや音楽ストリーミングサービス等)、基盤としての決済やクラウド、物流サービスなどを運営しています。ここまでの概要をなんとなくご存知の方は多いと思います。

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上場目論見書によると、売上は約4,110億元(約6.4兆円)、直近の2019年7月−9月期の四半期の売上では前年同期比+40%の1,190億元(約1.9兆円)と大幅に伸びています。流通総額を示すGMVは、約5.7兆元(約89兆円)、グローバルのアクティブユーザーは8.6億人、フリーキャッシュフローは1,045兆元(約1.6兆円)と、とても規模の大きい企業グループであることがわかります。

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*Alibaba Investor Day 2019 Financial and Investment Perspectives (2019/9/23-9/24)

今回Alibabaを深掘りするにあたって驚いたのが、同社がFacebookやAmazon等のグローバル企業と比較しても、群を抜いて売上成長率が高いということです。まず過去12カ月の売上の成長率を見ると、Alibabaは+46%、一部事業の買収・連結化の影響を除いても+37%となっています。同じECサイトを主軸としているAmazonの売上成長率は+21%でした。さらに2014年の売上から7.1倍の成長(Amazonは3.1倍)を果たしており、従業員数10万人という巨大な企業規模でありながらも、驚異的なスピードで成長しているのが分かります。

前述の通り、2019年6月時点でのフリーキャッシュフローは1,045億元(約1.6兆円)でした。今回の香港上場による調達額は約1.4兆円と多額ですが、フリーキャッシュフローが潤沢にあるのを見る限り、EC以外の事業への投資などで資金需要はあるものの、特別資金に困っているわけでもないという印象を受けました。

一般的に、上場をすることによって知名度の向上や多額の資金調達を実現できるメリットがある分、冒頭でお話した通り、決算情報の適時開示や株主対応などの費用・手間がかかるというデメリットもあります。Alibabaは既に十分な知名度があり、複数市場への上場は一見してメリットよりもデメリットの方が大きいと感じられます。しかし深掘りしていくと、このタイミングで香港市場に再上場する合理性が明らかになってきました。

ではこれから、香港とニューヨークでの株主対応という二重の負担を抱えてでもIPOを果たした、「Alibabaの主要な3つの狙いと、次の主戦場である東南アジアでの3つの打ち手」について話していきたいと思います。

この記事は、米中貿易戦争に興味のある方、ECに興味のある/担当されている方、急成長を続けるAlibabaの次の一手に興味がある方、アジア・東南アジアの今後の市場拡大に興味がある方に最適な内容になっています。


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・狙いその1:米中貿易戦争で高まる政治的リスクの分散
・狙いその2:よりAlibabaのビジネスに理解ある投資家の獲得
・狙いその3:東南アジアへの本格進出の足掛かり
・東南アジアへの打ち手 その1: ●●や●●企業との共同サービス開発
・東南アジアへの打ち手 その2: ●●と中小企業や人材支援において協力関係を締結
・東南アジアへの打ち手 その3: ●●の設立
・まとめ

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