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ECビジネスの決算の読み方〜Shopifyを例に

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先日、YouTubeチャンネルで「Googleの決算の読み方」という動画を撮影したところ、思いのほか好評だったので、これから数回に分けてビジネスの種類ごとに「決算の読み方」を書いていきたいと思います。

Googleの決算でYouTubeともう1つ成長率が高い事業は?(2020年2月5日)

今回のシリーズでは、アメリカの会社の英語の決算資料を取り上げていきますが、ニーズがあれば日本の会社を取り上げてることも検討します。「この会社の決算の読み方」、あるいは「この業界の決算の読み方」を解説して欲しい!というご要望のある方はぜひコメント欄にご記入ください。

英語であるがゆえに苦手意識をお持ちの方も多いかと思いますが、ポイントさえ押さえれば全文を読まなくても概要を掴むことができます。

今回のシリーズでは、それぞれのビジネスにおいて注目すべきKPIを明確にした上で、それぞれのKPIをどのように選んでいけば良いのかということを詳しく書いてみたいと思います。

分かっている方にとっては当たり前かもしれませんが、「どのKPIを探せば良いのか?」ということを事前に分かっているだけで、決算資料を読むのがとても速くなりますし、全く苦痛でなくなりますので、是非皆さんもこの記事を読んだ後で決算資料を再度ご自身で見返してみることをオススメします。

よく、一つの決算資料を何分ぐらいで読んでいるのですか?という質問を受けるのですが、私の場合だいたい5分から長くても15分程度で一つの決算資料を読みます。慣れないうちは15分では読めないかもしれませんが、ポイントを押さえておくことで資料の全体をざっと眺めて、どこを詳しく読めばいいかというのは分かるようになるので、大きな時間の節約になると思っています。


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第1回目は、Eコマースビジネスを取り上げます。その中でも特に成長率が高い「Shopify」を取り上げていきたいと思います。

Shopify Investor Deck Q3 2019 (2019/10/29)

Shopify Finalcial Results Q3 2019 (2019/10/29)

Shopifyというのは、BtoBtoCのマーケットプレイス型のモデルになります。日本の「BASE」や「Stores.jp」に近いモデルです。

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Shopifyは日本ではあまり馴染みのない方が多いと思いますが、現在のアメリカでの市場シェアは4.7%で、Amazon、eBayに次いで3番目に大きいEコマースのプレーヤーになっています。WalmartやAppleよりも市場シェアが大きい点に注目してください。

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こちらはShopifyの売上成長率を表したグラフです。年間売上は2015年の$205M(約205億円)から2018年は$1,073(約1,073億円)と3年間で約5倍の規模に拡大。直近で発表されている2019年7月-9月の四半期の売上は$391M(約391億円)、前年同期比+45%という驚異的なスピードで成長しています。

後半で少し述べたいと思いますが、Shopifyのビジネスモデルは「サブスクリプション」と「手数料収入」の二つから成り立っているため、Eコマースのマーケットプレイス型ビジネスでありながら、SaaSビジネスの要素も含まれています。


ECビジネスのKPI #1: 取扱高(GMV=Gross Merchandise Value)

Eコマースビジネスにおいて一番最初に見るべき指標は「取扱高=GMV」になります。

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Shopifyの取扱高は四半期当たり$14.8B(約1,480億円)、前年同期比+48%と取扱高が増えています。

取扱高とは、プラットフォームを通じて売買される金額の合計です。Eコマースビジネスにおいては、いかにそのサイト上で物が売買される金額が大きいかがそのサービスの動向を最も表す大事な指標なので、取扱高というKPIをまず最初にチェックする必要があります。


ECビジネスのKPI #2: ネット売上・テイクレート

2番目に抑えるべきKPIは、「ネット売上」と「テイクレート」です。

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Shopifyの場合、ネット売上が四半期当たり$391M(約391億円)、前年同期比+45%で成長しています。

ネット売上というのは、Eコマースプラットフォームにおいて物が取引される際に、プラットフォームを運営している会社に売上として入る金額を表します。
ECプラットフォームを運営している会社にとっては、取扱高=ネット売上ではありません。

取扱高とネット売上がわかると、テイクレート(取扱高のうち何%が売上になるか)が計算できます。

テイクレート = ネット売上 / 取扱高

Shopifyの直近の取扱高とネット売上から、テイクレートは2.6%と計算できます。

この2.6%というテイクレートは、AmazonやeBayと比べるとまだまだ低く、逆に言えば成長余地が大きいとも言えます。


ECビジネスのKPI #3: コホート

三つ目に抑えるべきKPIは「コホート」です。コホートは会社によっては公開していない場合もありますが、もし公開されている場合は是非注目すべきKPIだと思います。

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このグラフがShopifyの取扱高のコホートのグラフです。コホートとは、プラットフォームに店舗をオープンした後にその店舗の取扱高や売上高が年々どのように推移しているかを表しています。例えばグラフの緑の部分は2016年に獲得した店舗からの取扱高になります。

このグラフの見方としては、それぞれの色毎に右側に行く、年を追うにつれてグラフが大きくなっていってるかどうかに注目する必要があります。

右側に行くにつれて各層が大きくなっていれば、一度獲得した店舗からの取扱高が年々大きくなっているということで、ビジネスとしては年々大きく積み上がっていくビジネスということが読み取れます。


ECビジネスのKPI #4: 費用構成

注目すべきKPIの四つ目は「費用構成」です。

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このグラフは費用構成を表したグラフです。黒が営業マーケティング費用、緑がエンジニアリング、紫が一般管理費を表しています。

一つ目のチェックポイントとしては、右側にいくにつれて売上に占める営業費用がどんどん小さくなっていっているか?です。

二つ目のチェックポイントとしては、右側に2019年の重点投資分野が四角で囲まれて記載されていますが、今後の重点投資分野に注目することです。

2019年は国際化に向けたローカライゼーション、Shopifyのブランド認知向上、そしてプロダクト拡充に投資をしていくという宣言がなされています。


SaaSビジネスのKPI #1: MRR

冒頭で書いたとおり、Shopifyは出店店舗から取扱高の一定割合を手数料として受け取るだけでなく、出店料として毎月月額課金しているSaaSビジネスとしての一面もあります。SaaSビジネスで1番最初に見るべきKPIは「MRR」と呼ばれる月間の継続課金売上です。

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このグラフは、ShopifyのMRRの成長を表しています。年平均で50%成長していることが分かります。
SaaSビジネスに関してはまた別の記事で詳しく取り上げたいと思いますので、今日はこの辺りにしておきます。


まとめ

ECビジネスにおいて大事なKPIは、
#1: 取扱高(GMV=Gross Merchandise Value)
#2: ネット売上・テイクレート
#3: コホート
#4: 費用構成

SaaSビジネスにおいて一番大事なKPIは、
#1: MRR

今回の記事ではShopifyの例を通じて、ECビジネスの決算の読み方を詳しく見てみましたが、いかがでしたでしょうか?もし興味がある方はぜひこの決算資料を上記のKPIと照らし合わせて詳しく見てみてください。

Shopify Investor Deck Q3 2019 (2019/10/29)


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