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Q. 新規上場の電力比較メディア「エネチェンジ」がARRを重要KPIとする理由とは?

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A. メディアビジネスの収益モデルを、●●●●型から●●●●型に切り替えたため。

この記事はゲストライターとの共同制作です。

本日は、12月23日に上場したエネチェンジの「新規上場申請のための有価証券報告書 (Ⅰの部)」を読み解いていきます。

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エネチェンジは、電気料金の切り替えを検討されたことのある方ならご存知かもしれませんが、国内最大級の電気料金比較メディア「エネチェンジ」を運営している会社です。

ただ、それだけではなく、メディアから始まり電力会社に対してSaaSを提供するなど、バーティカルに事業を展開しています。

本日は、そんなエネチェンジの事業展開やビジネスモデルを深掘って行きたいと思います。


エネチェンジの業績

まずは、エネチェンジの直近の業績を見ていきましょう。

新規上場申請のための有価証券報告書 (Ⅰの部)

■2019年通期(第5期)
売上:12.7億円(YoY+11.2%)
営業利益:-3.2億円(前年同期は9,368万円)

■2020年第3四半期累計(第6期)
売上:12.5億円
営業利益:8,280万円

売上は、2019年通期で12.7億円、2020年第3四半期累計で12.5億円ということで、このままのペースでいくと、2020年通期ではYoY(前年同期比)+30%以上となる見込みです。

営業利益は、2019年通期では-3.2億円とマイナスでしたが、2020年第3四半期累計で8,280万円とプラスに戻しています。このままのペースでいくと、2020年通期には1億円は超えてくるでしょう。

売上成長率が2019年にやや鈍化し2020年には回復している理由、2019年通期で営業利益が赤字に転落している理由については、後述していきます。


エネチェンジのビジネスモデル(メディアとSaaSのハイブリッド型)

続いて、エネチェンジの2つの事業のビジネスモデルについて、それぞれ見ていきましょう。

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エネチェンジは、上図のように、「エネルギープラットフォーム事業」と「エネルギーデータ事業」の2つの事業を展開しています。

電力自由化という電力業界の業界構造の変化を機会と捉え、2014年より電力プランの比較メディアである「エネチェンジ」を開始したのが、エネチェンジの始まりです。

その後、法人向けの電力比較メディアである「エネチェンジBiz」をリリースしています。これが「エネルギープラットフォーム事業」です。

一方で、メディア運営を通じて得た電力会社との接点を活かして、SaaSの提供を開始しました。これが「エネルギーデータ事業」です。

このように、エネチェンジは、「メディア(エネルギープラットフォーム事業)」と「SaaS(エネルギーデータ事業)」の2本柱になっています。

メディア運営でまずは接点を作り、その後業界課題を把握した上でSaaSの提供へと進んでいったわけです。


エネルギープラットフォーム事業(メディア)の概要

それぞれの事業について、簡単に概要を解説していきます。
まずは、エネルギープラットフォーム事業です。

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エネルギープラットフォーム事業では、個人向けの電力プラン比較メディアの「エネチェンジ」と法人向けの電力プラン比較メディア「エネチェンジBiz」を展開しています。

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エネチェンジでは、上図のように、個人の世帯人数や郵便番号等の条件を入力すると、最適なプランを紹介してくれるサービスです。カカクコムにも近いですね。

また、ガスの自由化に伴い、電力料金プランだけでなく、ガスの料金プラン比較もできるようになっています。

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一方、エネチェンジBizは、上図のように、一括見積りの形態をとっています。引っ越しの見積もりサービスなどでよく使われていますが、おそらくウェブ上で金額を算出することが難しいため、このような形態を取っているのでしょう。

個人向け・法人向け共に、ビジネスモデルとしては、電力契約の切り替えに応じて、電力会社からフィーをもらうモデルになっています。

また、記事の後半でご紹介しますが、このフィーのもらい方の部分で、「ある工夫」をしているのがエネチェンジの面白いところです。通常のCPA(Cost Per Acqusition:CV獲得あたりの単価)でもらう形式ではない方法をとっています。


エネルギーデータ事業(SaaS)の概要

続いて、エネルギーデータ事業について、解説します。

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エネルギーデータ事業では、上図のように、「EMAP」「SMAP」「JEF」という3つのSaaSを電力会社や発電事業者に提供しています。

EMAP、SMAP、JEFについて簡単に説明すると、以下のようになります。

EMAP
申し込み受け付けフォーム、料金シミュレーション、請求額や電力使用量グラフ機能を備えたユーザーマイページなどを簡単に組み込むことができるマーケティング機能に加えて、顧客・営業管理ツールの機能を提供するSaaS。

例えば、東電の電気料金シミュレーションや申し込みフォームには、エネチェンジのEMAPが利用されています。

SMAP
エネルギー事業者向けのスマートメーターデータ解析SaaS。スマートメーターから取得できる各家庭の電力使用量を解析することで、電気使用量の予測や顧客の収益性改善に利用されています。

JEF
再生可能エネルギーの発電実績・設備稼働状況等のデータ解析により、再生可能エネルギー発電所の運営効率化を行うためのSaaS。

エネチェンジのエネルギーデータ事業では、これら3つのSaaSを提供することで電力会社・発電事業者からストック型の収益を上げています。

ここまでは、エネチェンジの業績、メディアとSaaSという2つの事業について解説してきました。

これ以降では、そんなエネチェンジが全社の経営指標として、SaaSビジネスのKPIとして用いられる「ARR」を採用している理由、そしてARRを伸ばすためのKPI、エネチェンジのビジネス展開からの学びについて解説していきます。

この記事は、メディアビジネスやSaaSに興味のある方、KPI設計やマネタイズ手法に関心の強い方、エネチェンジへの投資を検討されている方に最適な内容になっています。


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・ARRを伸ばすためのKPIは?
・メディア「エネチェンジ」をSaaSとして評価すると?
・エネチェンジのビジネス展開から学べること
・まとめ

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