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Q. 「ぐるなび」「食べログ」が大幅増収、グルメメディアは本当に回復したのか?

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A. 重要KPIである契約店舗数・ARPUがまだ下げ止まっていない
両社の今後の成長戦略は次の3つ
・●●グループとの連携強化(ぐるなび)
・●●によるクロスセルの拡大(ぐるなび・食べログ)
・●●事業の拡大(食べログ)

この記事はカネコシンジさんとの共同制作です。

首都圏では、再び緊急事態宣言が延長されるなど、未だコロナ禍での飲食店への影響が大きく出ています。

そこで、今回はグルメメディア大手の「食べログ」と「ぐるなび」の2022年3月期1Q(2021年4月-6月)の四半期決算を取り上げてみたいと思います。

記事の前半では、昨年最初の緊急事態宣言から1年以上が経った今、両社の売上や各種KPIがどこまで回復したのかを確認します。

そして、記事の後半では、飲食店向け業務支援サービスを提供する「インフォマート」や、グルメメディア「Retty」の戦略と比較しながら、両社の今後の3つの成長戦略について詳しく考察していきます。

ちなみに、今年4月に食べログとぐるなびの決算(2020年10-12月)を取り上げた際は、両社ともGo To Eatキャンペーンの影響を受け、前年同期比でプラス成長となっていました。

一見すると両社の業績は昨年同期比で大きく伸びていますが、売上や各種KPIはコロナ前の水準と比べてどの程度回復したのでしょうか?グルメメディアは果たして本当に回復したと言えるのでしょうか?


ぐるなびの決算

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まずは、ぐるなびから見ていきます。

ぐるなびの2022年3月期1Q(2021年4月-6月)の四半期売上は30.3億円(YoY+70.2%)と前年同期比で大幅にプラスとなっています。

一見好調かと思われましたが、決算発表と同時に、翌四半期と通期の業績の下方修正を発表しています。

・第2四半期売上
修正前 80億円
修正後 62億円(▲18億円)

・通期売上
修正前 194億円
修正後 非開示

下方修正の理由は、緊急事態宣言の延長などにより、当初の想定よりも飲食店への営業自粛措置が長引いたためです。


食べログ(カカクコム)の決算

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次に食べログを運営するカカクコムの2022年3月期1Q(2021年4月-6月)の四半期決算を見ていきましょう。

食べログの今Qの四半期売上は、37.5億円(YoY+116.4%)と大きく回復しています。内訳を見ると、「飲食店販促」セグメントの売上が29.3億円とYoY+182.7%と大きく増加しています。

一方で、ユーザーからの月額課金モデルである「ユーザー会員」セグメントの売上はYoY-10.5%と落ち込んでいます。

これは度重なる緊急事態宣言などで外出を自粛しているため、ユーザーがお金を払って飲食店の情報を得る動機が薄れたことが、理由として考えられます。


食べログ(カカクコム)とぐるなびの売上推移

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では両社の売上の推移を比較してみましょう。

ぐるなびは会社全体の売上、食べログについてはカカクコム社の食べログ事業の売上を抜粋してグラフを作成しています。

まず、前年同期(2020年4-6月)に両社の売上が大幅に減少しているのが目に付きます。これは、2020年4月に発令された1回目の緊急事態宣言時に、休業する飲食店にサービスの休会対応を行った影響です。

その後の売上推移を見ると、Go To Eatキャンペーン等で2020年7-9月と10-12月は売上が戻りつつありましたが、再度の緊急事態宣言により、キャンペーン効果がなくなると売上は再び減少に転じています。

以上を踏まえたうえで今Q(2021年4-6月)を見てみると、YoYでは大きく成長しているものの、一昨年、2019年4月-6月の四半期売上の半分程度までしか回復していないことが分かります。

ここからは、両社の売上をKPIに分解して詳しく比較していきます。


ぐるなびと食べログの有料店舗数比較

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ぐるなび・食べログの売上の約7割を占めるのは、飲食店の販促を支援する月額課金モデルのサービスのため、売上の大部分は、以下のように分解できます。

月間売上 = 有料加盟店数 × ARPU(有料加盟店1店舗あたりの平均月間売上)

まず、ぐるなびの今Q末の有料加盟店数を見てみると、54,342店でYoY+5.2%と微増しています。

2019年6月末 59,007店
2020年6月末 51,640店
2021年6月末 54,342店(YoY+5.2%)

ぐるなびの有料加盟店数がYoYで増加した理由は、「その他有料加盟店」が数値に含まれているためです。

「その他有料加盟店」とは、ぐるなびの通常の店舗販促プランではなく、Go To Eatキャンペーン時等にスポットで登録した加盟店で、有料加盟店数の約22%を占めています(11,915店舗)

このことから、通常のプランで契約する店舗数は伸びていないと読み取れます。

次に食べログの有料加盟店数についても見ていきましょう。

2019年6月末 56,300店
2020年6月末 49,900店
2021年6月末 55,800店(YoY+11.8%)

食べログの有料契約店数も昨年と比べて成長しています。ぐるなびと同様に、Go To Eatキャンペーン時に獲得した「ネット予約キャンペーンプラン(従量課金のみ)」の加盟店数が、全加盟店数の19%(10,900店舗)含まれています。

そのため食べログも、毎月利用料が発生する通常プランの契約店舗数は伸びていないことが分かります。


ぐるなびと食べログのARPU比較

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次に、ARPU(有料加盟店1店舗あたりの平均月間売上)を見ていきます。

まずはぐるなびの今QのARPUは、15,628円でYoY+76.0%です。

2019年4-6月 39,227円
2020年4-6月 8,878円
2021年4-6月 15,628円(YoY+76.0%)

続いて食べログのARPUは、17,400円でYoY+152.2%です。

2019年4-6月 29,900円
2020年4-6月 6,900円
2021年4-6月 17,400円(YoY+152.2%)

一見すると今Qの数値が両社共に大きく回復していますが、これは比較対象の2020年4-6月の数値が非常に低かったためです。

その理由は、前述の通り、昨年(2020年)の第1回緊急事態宣言時に、加盟店の離脱を防ぐためにサービスの休会や利用料の減免をしていたことが理由と考えられます。


ぐるなびのその他の主要KPI(有料加盟店数の内訳)

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売上に関連するその他の重要なKPIについても触れておきます。まず、ぐるなびのスポット契約を除いた、通常の「月額課金の有料プラン契約店数」を見ていきます。

2021年1-3月 44,352店
2021年4-6月 42,427店(QoQ-4.3%)

新規加盟店数・退会店舗数は公開されていませんが、従来の有料加盟店数は2021年12月から一貫して減少傾向にあることがグラフからも読み取れます。


食べログのその他の主要KPI(有料加盟店数の内訳とネット予約数)

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次に、食べログの主要KPIとして、同様にスポット契約を除いた「月額課金の有料プラン契約店数」を見ていきます。

2021年1-3月 46,700店(新プラン40,800+旧プラン5,900)
2021年4-6月 44,800店(新プラン39,100+旧プラン5,700)(QoQ-4.1%)

食べログには大きく3つの契約プランがあります。
(1)月額固定料金のみで利用できる旧プランと、(2)固定料金に加えて店舗に送客した人数に応じた従量料金が発生する新プラン、そして(3)送客に応じた従量料金のみが発生するネット予約キャンペーンプランです。

これら3つの有料プランを合計した契約数も、2021年3月期3Qの5.9万店舗から今Qは5.5万店舗と減少傾向にあります。

また、従量料金の売上を左右するネット予約人数は、今Qは419万人と前Qの553万人から24%ほど減少しています。


ここまでぐるなびと食べログの決算やKPIを俯瞰して見てきました。前年同期の初回の緊急事態宣言の時と比較すると回復はしていますが、一昨年のコロナ以前の水準には遠く及ばず、まだ業績が回復したとは言えないことが分かりました。

記事の後半では、両社の売上を回復するための戦略を、飲食店向け業務支援サービスを提供するインフォマートや、グルメメディアRettyと比較しながら、解説していきます。

この記事は飲食店向けのビジネスに興味がある方、コロナを乗り切るための各社の経営戦略に興味がある方に最適な内容になっています。


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