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Q. アメリカの回転寿司店の売上は1店舗あたりいくら?


Q. アメリカの回転寿司店の売上は1店舗あたりいくら?

A. 1店舗あたり、年間約$3.5M(3.5億円)です。

今日の記事はいつものネット企業の分析とは少し違います。回転寿司チェーン店の「くら寿司」のアメリカの子会社がナスダックに8月1日に上場したので、「KURA SUSHI USA」の決算を読み込んでみたいと思います。

日本ではお馴染みの回転寿司のくら寿司は、アメリカで開店寿司チェーン店を展開しています。果たしてアメリカで回転寿司ビジネスはどの程度儲かるのでしょうか?

KURA SUSHI USA, INC. FORM S-1(2019/7/3 )

FORM S-1は日本の上場申請書に相当するものです。


アメリカのくら寿司とは?

初めに、KURA SUSHI USAの店舗を見てみたいと思います。

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シリコンバレーにも1店舗あるのですが、いつも行列ができている大人気店です。この図にある通り、店内のレイアウトは日本とほぼ変わりません。

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注文は全て各席に設置されたタブレットから行い、日本と同じように食べ終わったお皿をカウントして会計する仕組みになっています。


売上・営業利益

KURA SUSHI USAの売上と営業利益を見ていきましょう。

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四半期ベースで見ると、売上が約$17M(約17億円)、営業利益が約$0.8M(約8,000万円)となっています。

GoogleやFacebookなどのソフトウェア会社と比べると規模が小さく見えますが、しっかり黒字が出ているビジネスで売上も右肩上がりで増えているのがよくわかります。


アメリカでは珍しい「小粒」のIPO

KURA SUSHI USAはアメリカでナスダックに上場(IPO)しましたが、アメリカのIPOとしてはとても小粒なIPOです。

ちなみにくら寿司(日本本社)は、東証一部に上場しており、今期の売上は1,378億円、営業利益は71億円の業績予想を公表しています。

参考:2019年10月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

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本稿執筆時点での時価総額は約$152M(約152億円)なので、シリコンバレーのスタートアップで考えると、シリーズCぐらいの規模感で上場したことになります。

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株主名簿を見てみると、KURA SUSHI USAは日本のくら寿司(親会社)が、株式を100%保有しています。

最近ナスダックへの上場でよく見かけるようになった、デュアルクラスの普通株をKURA SUSHI USAでも採用しています。

くら寿司(日本本社)が10倍の議決権
くら寿司(日本本社)の持ち分が20%以下になった場合に議決権が1:1に戻る

KURA SUSHI USAの場合は、くら寿司(親会社)は持ち分が20%以上である限り、他の株主の10倍の議決権を有する株式を保有します。今回IPOで新たに株式を購入する親会社以外の株主は、くら寿司の持分が20%以上の場合は議決権が10分の1で、持ち分が20%を下回った場合に議決権が1:1になるという仕組みの株式を購入することになります。つまりIPOに際して議決権に差がある2種類(デュアルクラス)の株式を発行しています。

デュアルクラスの普通株は、どちらも1株の金銭的価値は同じです。しかし各株の持つ議決権に差をつけることができるので、この場合はくら寿司(親会社)の議決権がもう一方のクラスの議決権の10倍の議決権を保有するため、会社のコントロールをしやすくなるというメリットがあります。

アメリカの上場企業では、デュアルクラスやマルチクラス(3種類以上)の株式を発行する企業が増えており、グーグルやフェイスブックも議決権に差をつけた株式を発行しています。


店舗数

店舗数を見ていきましょう。

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このグラフにあるとおり、現在21店舗まで拡大しています。フランチャイズは一切無しで全て直営で運営されているとのことです。

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出店地域を見てみると、主にカリフォルニアとテキサスで店舗が増えていっていることが読み取れます。


ユニットエコノミクス: 1店舗あたりの売上は?

冒頭のクイズにもあった、1店舗当たりのユニットエコノミクスを見てみたいと思います。

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店舗あたりの売上(Average Unit Volumes) $3.5M(約3.5億円)/年
EBITDA Margin = 8.7%
Restaurant-level Contribution margin = 20.1%

*Contribution margin(貢献利益)は、事業に関わる各部門、この場合はレストランが管理できる原価や経費などの変動費を売上から差し引いた利益率を指します。

2018年度の1年間で見てみると、このような数字になります。ここで注目したいのは、店舗あたりの売上を表す「Average Unit Volumes」という数字です。この数字は18ヶ月以上オープンしているレストランの数字だけを対象にしているとのことです。
オープンから18ヶ月経過していない店舗を除外する理由としては、オープン直後は店舗が賑わいやすいので、その数字を除外して計算するためにこのようにしているということが書かれています。

とてもコンサバな考え方に見えますが、イケイケドンドンのWeWorkなどと比べると、逆に安心感が強くなるKPIの開示方法ではないかと思います。


費用の内訳

最後に、飲食店を経営されている方であれば、誰もが気になる費用の内訳を詳しく見てみたいと思います。

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売上: 100%
  食材など原価: 32.7%
  人件費: 31.4%
  家賃など: 7.2%
  減価償却: 3.2%
  その他: 11.2%
  販管費: 12.5%
営業利益: 1.5%

売上を100とすると、食材などの原価が約1/3、人件費がさらに1/3、その他がさらに1/3で、営業利益が1.5%と非常に薄利なビジネスに見えます。

一方で上述の通り、1店舗あたりのContribution margin(貢献利益)は20%もあるので、くら寿司のブランドが浸透してスケールメリットが出たり、マーケティングコストが下がったりすると、利益率が徐々に上がっていくモデルになるのではないかと思います。

今回の記事ではアメリカで回転寿司ビジネスを展開するKURA SUSHI USAの決算を見てみましたが、いかがでしたでしょうか?

日本の「回転寿司」という文化をアメリカでしっかり浸透させて、上場できるまで成長させたのはさすがの一言だと思います。

しっかりした黒字経営をしているのもとてもすごいことだと思いますし、一人の日本人として、今後もくら寿司がアメリカで普及することを祈っています。


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