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Q.【オンライン旅行会社4社比較】コロナ禍で減収を抑制できた勝ち組はどこ?

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ヒント:事業の多角化によるリスク低減が出来ている企業や、GoToトラベルの需要取り込みに成功している企業です。

この記事は新規上場企業の"目論見書分析note"を書いているWatanabeさんとの共同制作です。

新型コロナウイルスの感染拡大は、旅行業界に大きな打撃を与え、今もなお旅行業界各社の事業に大きな影響を与えています。

最近ワクチンの摂取が開始され、旅行業界全体の回復に期待が高まりつつあります。しかし現時点では、海外旅行には大きな制限があったり、国内旅行は感染拡大状況によっては手控えムードが広がるなど、旅行業界にとってはしばらく厳しい状況が続くことが予想されます。

今回の記事では、主要なオンライン旅行会社(OTA=Online Travel Agency)4社(ベルトラ、アドベンチャー(skyticket)、オープンドア(トラベルコ)、エアトリ)の業績を俯瞰し、記事の後半では、減収の抑制に成功している企業の打開策について、深堀して分析していきたいと思います。

どの企業も減収にはなっているものの、その中でも「勝ち組」と呼べる比較的業績の良い企業もありました。果たして、その企業は、なぜ勝ち組となりえたのでしょうか?

それでは、まずは、旅行業界全体への影響から見ていきましょう。


コロナ禍で旅行業界はどこまで影響を受けているのか?

海外旅行は引き続き大きな影響を受けているものの、国内旅行はGoToトラベルの効果もあり、一時的に回復傾向が見られていました。

オープンドアの決算説明資料から、業界全体を俯瞰してみます。

株式会社オープンドア 2021年3月期 第3四半期 決算補足説明資料(2021年2月5日)

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観光庁が公表した「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」によると、海外旅行は前年比で−97%〜−98%と壊滅的なダメージを受けています。この傾向は2021年に入っても続いており、まだ回復の兆しが見えていません。

国内旅行は、1回目の緊急事態宣言解除後、2020年5月を底に回復傾向となっています。7月に開始したGoToトラベルが需要を下支えしたことが主な要因です。海外旅行の回復が見込めない中、国内旅行消費の動向が、旅行業界に与える影響は大きいと思われます。

次に、日本人の海外渡航者数と外国人の訪日旅行者数を見てみましょう。

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海外渡航者数(日本から海外への出国者数)と訪日旅行者数(海外から日本への入国社数)は、共に97〜98%減と大きく減少しており、国をまたいだ移動はほぼ無い状況です。

2021年に入ってもその傾向は続いており、日本政府観光局が発表した2021年1月の訪日外国人数は前年同月比▲98.3%※となり、16ヶ月連続で前年同月を下回っています。

インバウンド訪日外国人動向

このような状況の中、オンライン旅行会社各社の業績はどうなっているのでしょうか?
以下では主要な4社の業績を見ていきましょう。

1: ベルトラの業績動向

ベルトラの売上は2020年4月6月の底から徐々に積み上がっているものの、まだ厳しい状況が続いています。

ベルトラ株式会社 2020年12月期 決算説明資料(2021年2月15日)

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2020年12月期4Q(2020年10月-12月)の売上は5,000万円で前年同期比(YoY)▲95.3%となっています。2020年12月期2Q(2020年4月-6月)の売上1,000万円を底に、新サービスの投入などで徐々に売上が積み上がっているものの、売上の水準が低いままとなっています。広告宣伝費などコストを大幅に抑制しても、2020年度は毎四半期赤字となっており、4Qだけで約3.7億円の営業赤字と厳しい状況です。

コロナ以前は、海外旅行向けサービスによる収益が売上の9割と、かなり高い比率でしたが、コロナ禍では当該収益がほぼゼロに近い状態となりました。新サービスとして、国内旅行者向け体験アクティビティなどを強化しているものの、依然として従来の売上からは程遠い状態となっています。

このように、オンライン旅行会社の中でも、体験ツアー系の企業は業績が厳しい状況であることがわかります。

次に、アドベンチャーの業績動向を解説していきます。


2:アドベンチャーの業績動向

skyticketを運営するアドベンチャーの業績は、海外航空券は壊滅的状態となっているものの、国内航空券の収益は半分程度に止まり、ツアーが収益に貢献し始めています。

株式会社アドベンチャー 2021年6月期第2四半期 決算説明資料 (2021年2月12日)

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2021年6月期2Q(2020年10月-12月)累計の取扱高は130億円でYoY▲68%、収益はYoY▲50%となっています。取扱高の主な減少要因は、国内航空券と海外航空券であり、海外航空券に関しては壊滅的な状況です。海外旅行そのものが難しいため、申込よりもキャンセルが多いため、上図の取扱高はマイナスで表示されています。

国内航空券は、取扱高こそYoY▲65%と大幅減少していますが、、収益はYoY▲50%と半数くらいの状況まで戻しています。

コロナ前は、収益よりも取扱高を重要KPIとして、2030年に取扱高1兆円を目指す中長期イメージを打ち出していました。コロナ禍では、一転、取扱高の大幅な減少を受け、収益重視の経営方針に切り替えています。

次に、アドベンチャーの四半期毎(QoQ)の売上変化についても解説していきます。

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2021年6月期2Q(2020年10-12月)の売上は16.1億円でYoY▲41%となりました(2Q売上=2Q累計売上30.1億円−1Q売上14.0億円)。1Q(2020年7-9月)の売上14億円に対して、QoQで114.5%となり、徐々に増加傾向となっています。

QoQで増加した要因は、ツアーの取扱高および収益が急増していることが背景にあります。ツアーはGoToトラベルの割引対象となるため、国内旅行をお得に安く行きたい旅行者のニーズを捉えたものと思われます。

次に、オープンドアの業績動向を解説していきます。


3: オープンドアの業績動向

トラベルコを運営するオープンドアの業績は、先行きが見えない状況が続いています。

株式会社オープンドア 2021年3月期 第3四半期 決算補足説明資料(2021年2月5日)

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2021年3月期3Q(2020年10月-12月)の売上は4.3億円でYoY▲62.8%となっています。GoToトラベルの影響もあり、1Q(2020年3月-5月)の売上1.2億円を底に一時的に回復傾向となっていますが、感染拡大により再び売上が減少する可能性があり、厳しい状況が続くものと思われます。

オープンドアの売上は、旅行比較サイト「トラベルコ」を通じた航空券やツアーの販売による従量課金が主な収益源となっており、コロナ前は国内旅行と海外旅行の取り扱い比率がおおよそ半々となっていました。しかしながら現在は、海外旅行の取扱がほぼ無いことで売上が半減、国内旅行の需要もまだ低迷していることがさらなる減収の要因となっています。

本格的な収益の回復には、ワクチンの普及拡により安心して旅行が自由にできる状況になり、航空券やツアーの需要が再び高まることが必要だと思われます。

次にエアトリの業績動向を解説していきます。


4: エアトリの業績動向

エアトリの業績は、コロナ禍でも売上が回復傾向を見せています。

株式会社エアトリ 2021年9月期 第1四半期 決算説明資料(2021年2月12日)

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エアトリの会社全体の2021年9月期1Q(2020年10月-12月)の四半期売上は65.6億円で、YoY▲17.8%となっています。エアトリの売上には、ITオフショア事業、投資事業も含むため、それらを除いた「オンライン旅行事業」に限定すると、1Qの四半期売上は58.4億円となりYoY▲21.1%です。

四半期ごと(QoQ)の連結売上収益増加額も、2021年9月期1Qは大幅回復しています。

2020年9月期3Q 38億円
2020年9月期4Q 40億円
2021年9月期1Q 65億円

オンライン旅行事業単体でも、他のオンライン旅行会社と比較してコロナの影響を軽減できている理由は、「エアトリ」キーワードによるサイトへの流入施策が功を奏して、国内旅行需要の増加を取り込めているからです。

ここまでは、オンライン旅行会社の業績動向を俯瞰して見てきました。記事の後半では、各社の打開策と、減収を食い止めている勝ち組企業の勝因について詳しく解説しています。

この記事は、オンライン旅行ビジネスに携わっている方、オンライン旅行会社に興味がある方、コロナ禍の旅行業界に関心がある方に最適な内容になっています。


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・Q.【オンライン旅行会社4社比較】コロナ禍で減収を抑制できた勝ち組はどこ?の答え
・ベルトラの打開策:国内体験型ツアー拡充、コストの圧縮
・アドベンチャーの打開策:ツアー販売、アプリによる獲得コスト抑制
・オープンドアの打開策:オンライン体験ツアーの比較
・エアトリの打開策:多角的な事業展開、PCR検査とのクロスセルなど

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