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Q. SBI証券・楽天証券等、オンライン証券各社の成長が止まらない理由とは?

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ヒント:若い世代を中心として、これから資産形成する投資家に関連する理由です。

この記事はゆべしさんとの共同制作です。

コロナ禍で、投資を始める・または投資資金を増やす動きが広まっています。マネーフォワードの調査によると、約8割の人がコロナの影響で生活防衛の意識が高まり、そのうち約5割の人が投資を始めた・投資資金を増やしたと回答しています。

また、2021年2月には、30年6ヶ月ぶりに日経平均株価が3万円を突破するなど、国内外の株式市場は活況を呈しています。

このような社会的変化やマーケット動向による好影響もあり、証券口座の新規開設数は好調に推移し、オンライン証券会社の業績は大きく成長しました。また、時間や手間をかけずに資産運用ができるロボアドバイザーにも注目が集まっており、業界大手のウェルスナビの業績は非常に好調に推移しています。

今回の記事では、オンライン証券大手であるSBI証券・楽天証券・マネックス証券に加えて、ウェルスナビの4社に注目して、今後も各社の成長が継続していくと考えられる理由について考察していきます。


各社の売上・利益の比較

SBIホールディングス株式会社 2021年3月期決算説明会資料(2021年4月28日)

楽天グループ株式会社 2021年12月期第1四半期ビデオプレゼンテーション資料(2021年5月13日)

マネックスグループ株式会社 2021年3月期決算説明会資料(2021年4月27日)

ウェルスナビ株式会社 2021年12月期第1四半期(2021年5月14日)

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各社の成長要因を考察する前に、各社の業績や成長背景を整理します。上図はSBI証券・楽天証券・マネックス証券・ウェルスナビの2021年1-3月の業績を抜粋したもので、営業収益、営業利益、利益率、預かり資産と、すべての項目でSBI証券が圧倒的に高いことが分かります。

以下では、各社の業績や成長率に関してもう少し詳しく見ていきます。


SBIの決算

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まずはSBI証券です。2021年3月期通期の営業収益は1,604億円(YoY+28.8%)で、過去最高業績を達成しました。2021年3月期4Q単体では、営業収益は441億円(YoY+20.1%)で、直近四半期で見てもオンライン証券最大手でありながら高い成長率を誇っています。

この成長の背景には、「国内外株式の取引量の増加に伴う委託手数料の増加」や、「FX、暗号資産取引や外債販売に係るトレーディング収益の増加」の影響が大きく、営業利益や当期純利益も大きく成長させました。


楽天の決算

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次に楽天証券の業績を見ていきます。2021年度第1四半期の営業収益は237.5億円(YoY+33.2%)で、右肩上がりに成長しています。

この成長の背景は、SBI証券と同じく「国内外株式の取引量の増加」です。特に米国の株式市場は、過去数十年に渡って長期的に上がり続けていることから投資先として人気です。

参考:多くの人が米国株を買っている5つの理由

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また、2021年1-3月の新規口座開設数は、SBI証券の32万口座の2倍以上となる65万口座であり、急速に口座数を伸ばしています。その結果、2021年3月には楽天証券が野村證券を抜いて業界2位となり、1位のSBI証券に迫る勢いを見せています。

※補足:SBI証券が決算資料内で発表している口座数は、SBI証券、SBIネオモバイル証券、SBIネオトレード証券の合計で681.3万口座なので、上図はSBI証券単体での証券口座数と思われます。


マネックスの決算

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次に、マネックス証券を見ていきます。2021年3月期4Qにおける日本セグメントの営業収益は85.4億円(YoY+25.3%)で、SBI証券や楽天証券と同様に「株式の取引量の増加」により、大きく成長しました。

また、DeFi(分散型金融)プロジェクトへの投資実現益11億円も加わり、日本セグメントの税引前利益は41億円(YoY+182.6%)と大きく成長しています。


ウェルスナビの決算

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最後に、ウェルスナビは、2021年12月期1Q時点の営業収益は8.97億円(YoY+78.0%)と、急成長していることが分かります。

これまで見てきた各社の営業収益と成長率をまとめると、次のようになります。

■各社の四半期営業収益と成長率
SBI証券:44.1億円(YoY+20.1%)
楽天証券:237.5億円(YoY+33.2%)
マネックス証券:85.4億円(YoY+25.3%)
ウェルスナビ:8.97億円(YoY+78.0%)
※各社とも2021年1-3月の業績

ウェルスナビの営業収益は他3社と比較して約10〜50分の1と、かなり小さい規模ですが、成長率は圧倒的に高いことが分かります。


ウェルスナビは各種KPIも好調

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ウェルスナビの最大の特徴は、ロボアドバイザーによる自動資産運用です。一般的な証券口座では、投資先を自分で選択して資産運用を行うのに対し、ウェルスナビはロボアドバイザーが自動で投資先を選択して資産運用を行うため、時間と手間を削減できます。

そのため、ウェルスナビは一般的な証券会社のように取引量に応じた手数料収益ではなく、預り資産に対して手数料が発生する積み上げ型のビジネスモデルであり、SaaS企業のようにARRや解約率などを開示しています。

KPIを見ると、平均月次解約率が1%未満ということに加え、NRRのような「新規運用者の預り資産が年間何%で増加したのかを表すNet AuM retention」が120%超で、非常に好調に推移していることが分かります。


40%ルールの比較

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●40%ルールとは
「売上の前年同期比成長率」+「営業利益率」 = 40%以上 ≒ 理想的なSaaS企業

ここで、SaaS企業で用いられる「40%ルール」を各社に適用してみます。40%ルールとは、「売上成長率と営業利益率の和が40%超の場合、理想的なSaaSビジネスである」と言われ、”成長率”と”利益率”の双方が重要ということを示唆しています。

証券ビジネスはSaaSではもちろんありませんが、預かり資産に対して一定の手数料を徴収するストック型ビジネスの形態も持っているため、SaaSに近い部分もあります。特に、ウェルスナビは、決算説明資料内でARR等のSaaS指標を公開しているように、ストック型ビジネスのみを行っているため、よりSaaSに近い形態と言えます。

SBI証券・楽天証券・マネックス証券は高い売上成長率に加えて利益率も高く、ウェルスナビは赤字であるものの圧倒的に高い売上成長率のため、各社40%ルールを大きくクリアした60%前後の水準です。

これまで各社の業績と成長要因を整理しましたが、成長要因の大部分は「国内外の株式市況の好調に伴う取引量の増加」でした。東証によると、コロナ禍で1日平均個人株式委託売買代金はYoY+52.2%と大きく増加しています。

しかしながら、こうした株式市場の好調は永続的に続くものではありません。そこで、今後オンライン証券各社はどのように成長をしていくのか。記事の後半では、各社が今後も成長を続ける理由について考察していきます。

この記事は、証券業界に従事する方や投資に関心がある方はもちろん、企業の成長戦略に興味がある方に最適な内容となっています。


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